教育ICTリサーチ ブログ

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富士見市教育委員会 ICT活用プロジェクトチーム授業研究会レポート(2024年3月7日)

 2024年3月7日に富士見市立針ケ谷小学校で開催された、富士見市教育委員会ICT活用プロジェクトチーム授業研究会に講師として参加させていただきました。この授業研究会は、11月29日に開催された富士見市立針ケ谷小学校の学校研究発表会で公開されたICTを活用した授業のスタイルを、富士見市内の小中学校に広げていきたいという富士見市教育委員会の指導主事の先生から針ケ谷小学校に依頼があり開催されたそうです。

 この日公開された塩田恵也 先生が担当する6年2組の国語の授業は、「海の命」をみんなで読んで考えた問いをオクリンクを活用してクラス全体で共有し、子どもたちが自分たちでどんどん考えていく授業でした。
 問いはコンピュータ上で共有されていますが、問いについて考えるときには教科書を読み合い、画用紙に話し合って考えたことをまとめていきます。塩田先生もどんどん教室を回って、子どもたちに「どうしてそう思うの?」と問いを投げかけたり、「あのグループではちょっと違う考え方していたから、聴きに行ってみたら?」と子どもたち同士を繋いでいく役割をしていました。
 画用紙にどんどん書いていくスタイルは12月に塩田先生の授業を参観させていただいたときにも思いましたが、考えがどんどん加速していく感じがあります。コンピュータを活用しているからと言って、すべてがコンピュータ上にあるのではなく、いままでどおり紙の教科書や画用紙なども併用して学んでいる様子が見られます。一方で、コンピュータを使いこなしている様子は、参加した先生方も驚いていました。

 授業終了後に研究会が行われて、塩田先生による授業者自評、研究主任の川畑那由昂 先生による針ケ谷小学校の研究概要紹介が行われました。塩田先生と川畑先生の話からは、オクリンクをはじめICTを活用する背景に、「授業でこういうことを成し遂げたい」という方針があることが語られました。そのためのツールとして、「針小カルテ」という授業実践の記録も蓄積されているそうです。

 この後で、研究協議へ入りました。今回、事前の打ち合わせで、研究協議のときに試験的にPadletを活用してみることを富士見市教育委員会に承認してもらっていました。研究協議では一人ひとりの考えを十分に聴くだけの時間をとるのは難しいので、できるだけたくさんのコメントを参加者全員で共有するために、Padletを活用させてもらいました。
 多くの先生方がPadletをはじめて使ったそうですが、受付時に配布したプリントに印刷してあるQRコードからアクセスして、すぐにコメントを書き込むことができていました。

 Padletでは、「柱1:ICTの効果的な活用について」→【レッド】、「柱2:深い学びに繋がる活用について」→【イエロー】、「授業者への質問」→【グリーン】、「針ケ谷小学校へのメッセージ」→【ブルー】というふうに、4つのテーマを4色のカードで分けて投稿してもらいました。
 研究協議を始める前の5分ほどを、参加者一人ひとりがPadletに書き込む時間としました。静かな教室で一人ひとりが書き込む様子は、オクリンクなどの授業支援ツールを使って子どもたちに考えたことを書いてもらって共有するのと同じことです。そうした体験を実際にしてもらって、この日参加してくれていた先生方に、自分たちの学校/授業で同じことをしたらどうなるか、自校の研修でこうしたツールを使ったらどうなるのか、ということを想像してもらいたいと思いました。

 いちばん多く書かれたのは、グリーンの「授業者への質問」でした。協議会の限られた時間のなかでは、質問希望者が全員授業者に質問することは難しいと思います。しかし、こうしてPadletに質問を書いてもらえば、全員の質問を短時間で共有することができます。たくさんの人が興味をもって質問したいと思っていることが可視化されるので、そうした質問を優先して協議会の時間内で回答することができます。手を挙げて質問するのが恥ずかしい参加者も助かりますし、口頭で質問するよりも書いた方がポイントをまとめやすいという参加者も助かります。
 また、Padletを残しておけば、授業研究会終了後にも、それぞれのカードのコメント欄でコミュニケーションを続けることができます。実際に、この日のPadletには授業研究会終了後にも、塩田先生や川畑先生が返信を書き込んでくれていました。また、それを参加した先生方も自校で見ることができていると思います。
 レッドの「柱1:ICTの効果的な活用について」も、イエローの「柱2:深い学びに繋がる活用について」も、たくさん書き込みがありました。この後で、近くにいる人とグループを作ってディスカッションをする時間があったのですが、そのときにも「ここにも書いたんですけど…」とか「ここに書いている人がいるように…」とかからディスカッションを始められることも、Padletを使った研究協議の良いところだと思っています。

 研究協議の後で、僕から講評ということで「ICTを活用した新しい形の授業」というタイトルで話をさせてもらいました。塩田先生の授業での子どもたちの様子や、ここ2年間関わらせていただいた針ケ谷小学校でのICT活用の様子、Padletで書かれていたこと、研究協議で出ていたコメントなどに触れながら、ICTの活用を「何のために(=Why)」と「どうやって(=How)」の2つの視点で捉えてほしいということを伝えさせていただきました。

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 この日参加してくれた先生方が、自分たちの学校でもできるかもしれないアイデアを思いつき、子どもたちと一緒にやってみよう、と思ってくれたならよかったと思います。また、そうした先生方を来年度も引き続きサポートさせていただければと思いました。

(為田)