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鹿児島市立小山田小学校 授業レポート No.2(2024年10月7日)

 2024年10月7日に鹿児島市立小山田小学校を訪問し、山口小百合 教頭の担当する5年生の社会「米づくり農家の抱える課題」の授業を参観させていただきました。5年生の子どもたちは国語の時間に「令和の米騒動」について新聞やニュースサイトの記事や、テレビの報道を見比べて考えるメディアリテラシーの学習をしたそうです。そして、教科横断的に関連づけて、社会科で「これからの食料生産の在り方」について話し合い、「楽で」「低コストで」「儲かる」「環境にやさしい」米作りを新未来農業と名づけて学んできているそうです。

 この日は、それを実現しようと新しい米作りに取り組んでいる株式会社NORINAの小澤晶さんにZoomでインタビューしました。
 小澤さんはマイコスDDSRを用いた乾田直播栽培を行うことで、低コスト・低メタンガスの米作りを実現しています。田起こし・苗代づくり・代掻き・田植えが不要になり工数が削減できるし、水田ではないので水管理の工数も削減できるので、高齢化と労働力不足の問題を解決しようとしています。子どもたちの質問に小澤さんは「気候変動に対して、スマート農業や品種改良に頼るのではなく、根本から考え直して、米の自律を促す栽培方法を行っている」と答えていました。
 子どもたちが一人ひとり小澤さんにした質問とその回答を、山口先生は黒板に書いてまとめていきます。

 子どもたちはロイロノート・スクールで単元を通じて使うワークシート(単元カード)を作成し、この日のインタビューで小澤さんから聴いた話も書き込んでいました。授業中に書くだけでなく、各自が家庭で反転学習したことなどもポートフォリオとして記録しています。ワークシートの枠組みはみんな同じですが、お互いのカードを共有する設定にしてあるので、他者参照しながら、何を書くか、どうまとめるかは子どもたち一人ひとりが自分で工夫をしています。

 調べたいことがあれば、子どもたちは自分で検索していきます。子どもが「あった!動画!」と言うと、山口先生は「動画を見るときはヘッドホンしてね」とだけ言います。教室でみんなで学ぶときには、周りの迷惑にならないようにヘッドホンを使うようにする、という最低限のルールだけにして、動画を探して学ぶことも選択肢に入っているのがいいと思いました。何の動画から調べたかを共有するために、URLを紹介したり、NHK for Schoolで自分のプレイリストを作ってお互いに公開し、コメントし合ったりもしているそうです。

 Zoomで外部の人へのインタビューなどを授業の中に組み込むことで、教科書だけでは学べない最先端の事例を知ることができたり、現場で社会課題に取り組んでいる人たちの一人称の語りを聴くことができるのは、社会科の授業の可能性を広げてくれるものだと感じました。
 「専門家とつなぐと、距離や時間や費用の問題軽減にもつながります。離島や中山間部の小規模校において、少人数の学びを専門性、多様性、協働性を上げ、豊かにする可能性が広がります」と山口先生はおっしゃっていました。

 No.3に続きます。

(為田)