11月26日に、近未来教育フォーラム2015に参加してきました。今回はサブタイトルが「Powered by AI ~人工知能がドライブする人間社会~」です。基調講演の後、「アクティブラーニングとeラーニングで授業をもっと面白くしよう!」に参加しました。講師は、デジタルハリウッド大学 栗谷幸助先生です。
最初に、セッションの目的とアジェンダについて、栗谷先生から説明がありました。明るく楽しく、ポジティブオーラが話を聴いてきて押し寄せてくるのって、講師としてとても大切なスキルだと思うのです。先生が楽しそうな授業は、楽しいことが多いですよね。
デジハリのオンラインスクール 満足度93.6%の理由
「アクティブラーニングとは何でしょう?」をベースにして、では、デジタルハリウッドでは、どのような学習スタイルが学習者に提供されているのか、ということが紹介されていきます。最初に、YouTubeで、「デジハリ・オンラインスクール 満足度93.6%の理由がここに!」を見ました。
www.youtube.com
この、顔が見えることがとても大事、というポリシーはとてもいいと思います。学校で反転授業などを考えている先生方も、「顔が見える方がいい」とおっしゃっている先生方は多いです。「知っている先生に習っている」ということって、モチベーションに大きな影響があるのではないかな、と思うのです。
eラーニングのメリット
次に、eラーニングのメリットを、学習者側と教師側とに分けて挙げていきます。
- 学習者側
- 同時間、同一場所に集まる必要がなく、自由な時間と場所で学習できる
- 個々人の習熟度に応じて学習を進めることができる
- 目的に応じた均一化(標準化)された授業を受けることができる
- 印刷教材のみの通信教育に比較して、印刷教材の量を減らすことができる
- 教師側
- 学習者と同時間、同一場所にいる必要がなく、効率的に業務が遂行できる
- クラスごとに同じ授業を繰り返し行う必要がない
- 印刷教材の量を減らすことができる
- 成績管理などの自動化が図れる
- 教材の更新、最新化が容易?
この他に、栗谷先生は、「先生の授業のクオリティが上がります。それは、“撮られる”という意識によるものです」と言っていました。なるほど。
これってとても大事なポイントだと思います。手を抜いているというわけではないでしょうが、“撮られる”“見られる”ということで、気合が入るということもあると思います。
ICTを先進的に導入している佐賀県の先生方も、武雄市の先生方も、学校見学が増えて、授業に対するレビューを職員室ですることが増えた、とおっしゃってもいました。こうした機会がどんどん増えて、先生方がどんどん高みに上っていけばいいと思っています。もちろん、民間も負けずに、上がっていくべきですね。
デジハリでの多様な学び方とその効果
デジハリはさまざまなスクールの形態をもっています。オンラインスクールも、通学も、デジハリ大学も、大学院もあります。それらがそれぞれ、どんなふうにアクティブラーニングとeラーニングを取り入れているか、またその効果などについて、紹介してくれました。
- デジハリ・オンラインスクール
- 専門スクール(通学)
- 専門スクール(STUDIO)
- 小規模(15人~20人くらい)のカフェ風のスペース
- カフェの方が勉強は進む?という雰囲気を意識。
- 通学スタイルだけど、ソフト操作などの基礎スキルは自分のペースで「動画学習」
- 質問や学習相談はトレーナーによる直接サポート
- 応用スキルなどの「クラス制授業」と卒業制作の「担任制」による実践力の向上。
- 全国で15拠点。
- 渋谷校もSTUDIO形式に変えて、修了率が80%→90%に。
- 大学
- 2013年より、動画教材の活用をスタート。
- 1つの授業内で「動画教材による自主学習」と「講師によるレクチャー型授業」を行う【ブレンデッド・ラーニング】の実施。
- 授業の中で、動画を見る時間を半分つくる。
- 推奨パートまでを見る。質問があれば、先生とコミュニケーション。
- 進みたい人にはどんどん進んでもらう。遅れる人には、次回までに推奨パートまでやってこい、という。
- 授業は、上が進まなくて消化不良になる。
- 効果としては…
- 動画学習をしている間は、自分たちのペースでやっているが、「応用学習をするよ」というところで、先を進んでいた学生は戻されてしまう、という課題もあり(ここ1~2年)
- 大学でのアクティブラーニング事例
- 意味は関係なく、Webコンテンツを作る、というのは入れている。
- 基礎ツール演習IIのなかで、「Webクリエイターインタビュー」を入れた。
- 旧カリキュラムは「講師によるレクチャー型授業」の際のレベル格差のある学生の協働学習をした。新カリキュラムでは、ゲーミフィケーションを導入。HTML5かるた!
- 個別にマークアップ実習をして、次週までに自分なりにやらせて、授業ではチームに分ける。LiveweaveでWeb上でマークアップを共有することができる。
- ブラウザで共有。オープン。カーソルの位置もわかる。
- そこにコメントを入れる。
- 先生の手本となるマークアップ、などはない。見せるけど、それは正解ではない。
- 4Q以降の科目についても、個人→グループワークでやっていこうと考えている。
- Prottとかも使う。
appear.inを使ってのWebクリエイターインタビューのきっかけになった、田園調布雙葉学園との協働学習のとき、田園調布雙葉学園側の教室で参加をしていました。たしかに、「微妙な距離感がいい」というのはあったように思います。微妙に遠いから、質問とかしやすい、という。でも、顔が見えることで、やりとりも活発になります。
僕も、あの授業をやってから、小学校のプレゼンテーションのコメントをSkypeを通じてやるようになりました。「できるかも?」とちょっと自信を持てたので。
blog.ict-in-education.jp
LiveweaveもProttも、まったく知らなかったので勉強になりました。僕はコーディングを専門にしているわけではないですが、協働で何かをするときに、どんなUI/UXが望ましいのかを考えるときに、非常に参考になります。じっくり見てみようと思います。
まとめ
そしてまとめです。アクティブラーニング、eラーニングはあくまで「手段」であることを強調してのエンディングでした。
- “Has learner-centered teaching stalled?”という風潮もある。
- 国が推進していることもあり、導入することが目的になってしまいがちのアクティブラーニング、eラーニングですが、あくまでも目的を達成するための手段であることを意識する必要があります。
- 目的・目標に合わせてどのようにアクティブラーニング、eラーニングを活用するのか。
- デジハリは、「教材屋」ではなく、教育現場を持つ「学校(スクール)」だから。
デジハリが、教室という現場を持ちつつ、新しいテクノロジーをどんどん取り入れて、学び方を変えていっている、という矜持が見えた感じがして、そのメッセージが素敵でした。
栗谷先生、とても勉強になりました。ありがとうございました。
(為田)