教育ICTリサーチ ブログ

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授業で使えるかも:『アフターソーシャルメディア 多すぎる情報といかに付き合うか』

 法政大学大学院 メディア環境設計研究所『アフターソーシャルメディア 多すぎる情報といかに付き合うか』を読みました。さまざまな調査を組み合わせて、スマートフォンソーシャルメディアなど新しいテクノロジーによって、「情報が多すぎる」状態について考えさせられました。関心があるところをメモしましたので公開します。

 まず、NHK放送文化研究所が行った 2018年「情報とメディア利用」世論調査から、「今の社会は情報が多すぎると思いますか?」という質問です。

「今の社会は情報が多すぎると思う」との質問に対して、16~69歳の全体で84%が「あてはまる」「まああてはまる」と回答し、すべての年層で8割以上でした(p.17)

 みんな「情報が多すぎる」と思っているのですね。NHK放送文化研究所のサイトで、この調査報告のPDFを見てみましたが、高校生世代である16歳から19歳でも80%は「情報を多すぎる」と思っていました。どんな情報を見て「多すぎる」と思うのだろう、流れてくるタイムラインとかだろうか…と考えてしまいました。

 多すぎる情報を全部見ているわけでも当然なく、逆に多すぎる情報から自分にとっていい情報しか得なくなる、という問題も指摘されています。これは、テクノロジーによって履歴からレコメンドされる情報は自分の価値観にあう情報になるし、自分と近い考え方のニュースやユーザーばかりフォローしていく、ということからも、ソーシャルメディアではしかたないかと思いますが、それをどのくらい意識的に使うか、は大きな問題だと思います。

取材した都内の大学3年生(男性)は、「タイムラインの中が自分にとっての“世間”」「タイムラインに載らないものは自分にとっては存在しないのと同じ」だと語っていました。その学生は、ネット上の情報やアプリの通知があまりに多すぎて、自分が信頼できる、または同じような趣味嗜好を持っていると判断した人やブランドのアカウントだけをフォローすることで、あらかじめ情報を選別しているのだそうです。(p.60-61)

 情報接触スタイルについては、意識的であることが求められると思います。こうした情報への接し方なども、どうやって教えていくか考えなければならないな、と思います。

「ニュースは能動的な接触から受動的接触へ」という新たな情報接触スタイルがみられました。また、関心の幅が狭く、政治・経済・社会の動きを伝える情報への関心度が低く、配信元を確認しない、などの態度から、「メディア・リテラシーが乏しいのではないか」と感じてしまう人もいるでしょう。しかしながら、今はテレビや新聞でなければ情報が得られない時代ではなく、24時間365日肌身離さず持っているスマートフォンから絶え間なく情報が届けられるメディア環境にいます。そうした環境では、能動的接触は非常に困難です。メディア環境が変われば、消費やマーケティングの方法も変わるように、メディア・リテラシーも変わっていくでしょう。すでにその片鱗は見えてきています。ここでは、受動・能動は、良い・悪いといった問題ではないとしておきます。大切なのは「ズレ」の存在です。(p.68)

 いろいろな観点からソーシャルメディアスマートフォンと情報について考えられる本でした。ここからさまざまな調査などにあたっていくのもいいな、と思いました。授業で高校生たちと一緒にトピックとして「多すぎる情報といかに付き合うか」を取り上げて、ディスカッションしてみたいと思いました。

(為田)