2021年6月28日、オンラインで開催された、まなびポケットEXPO~2021夏~に参加させていただきました。
2部構成のこのイベントの第1部では、東北大学大学院情報科学研究科教授 堀田龍也 先生とNTTコミュニケーションズ Smart Education推進室の稲田友 さんが登壇して、公教育現場の現状や学習データを活用した教育の未来像について講演とクロストークが行われました。
続く第2部では、1部で紹介されたさまざまな動きに対応する、まなびポケットのサービスが紹介されました。
今回は、第1部の最初に行われた、堀田先生の講演「データ駆動型の教育」のなかで語られた、3つのテーマ(「1. 学習指導要領2020」「2. GIGAスクール構想の現状」「3. デジタル教科書と教育データ利活用」)について関心があったところのメモを共有します。
- 学習指導要領2020
- 学習指導要領は10年に1回くらい改訂される。そのときの、我が国の子どもたちに必要な教育の基準を作る。
- 2020年に小学校、2021年に中学校、来年2022年に高校…と相次いで実施されている。
- 今回の学習指導要領が議論されたのは2015年。 そのときにいちばん議論になっていたのは、少子高齢化、労働人口の激減。
- そうした時代に生きる子どもたちに、いま学校で教えておかなければならないことは何か?
- 細かいことまで知らなくても、検索すれば出てくる時代なので、その「使い方」が大事。
- いろいろな仕組みに支えられて生きていく私たちは、ある程度仕組みの知識も必要だろう。
- 目に見えないデータを読み取ることも必要だろう。だから、「データの活用」という領域が、小学校から中学校まで一貫してできるようになった。今までも表を作ったり、読み取ったりしていたが、それをデータの活用という一本線で筋を通して再整理した。
- 小学校からプログラミング教育。算数で教わる正多角形の性質を使えば、プログラムで正多角形を描けるようになる。これができれば、正百角形でも、正1万角形だって描ける。これからの算数はこうしたものも含まれてくる。
- 民間のオンデマンド授業映像
- 子どもから見たらこちらの方がわかりやすい?安い価格で、家庭で見られるようになっている。高校生の多くが使っている。
- ならば、学校で教わることにはどんな意味があるのだろう?
- 動画を読み取ってわかる、ということもこれからは大事。生涯を通じて学び続けるときには、動画から学ぶのは極めて大事。それを義務教育段階でできるようになる。
- 一方で、友だちの意見を聴いて自分の考えを変えていくような学び、他者に影響を受けながら自分の考えを更新していくような学び=協働的な学びが、学校教育の大事なところになるのではないか。これも学習指導要領に入っている。
- クラウドでの共同編集
- こうした世の中の技術的な動きが、子どもたちの能力観を変えている。パソコンを上手く使いこなして、データを集めて、考えることができるということが、これからの資質・能力として重要なものになっている。
- 新しい学習指導要領では、情報活用能力が各教科の基盤として捉えられている。今までと同じ勉強ではない。そうしたことを学校現場が把握し、新しいテクノロジーを使うことが必要。
- ICTは学習インフラ。便利なときだけ使うものではない。ICTを「いつでも使う」というのが、これからの考え方になる。
- 中教審の1月の答申でも書いてある。これを各自治体がどう考えているかによって、教育環境の違いが、自治体ごとに出てしまう。指導要領を満足に実施するときに差し支えになる。
- GIGAスクール構想の現状
- 「自治体の格差を少しでも埋めようじゃないか」というのがGIGAスクール構想。 本来、PCを与えるかどうかは設置者の判断。交付金を使って整備した自治体もあれば、そうでもないところもある。
- 世界的に見たら遅れているので、このままではいけない、と国費が投入されたのが、GIGAスクール構想。
- どのOSでもだいたい大丈夫。これらは全部ツールの話。
- ツールの次はコンテンツ。 コンテンツは学校に、先生に任せていいのか?
- どのツールがどんな役に立つのかをしらなければいけない。
- ツールを使えることは大事だが、コンテンツの部分=授業、学習をどうするかを、子どもたちと一緒に先生たちは経験していかなければならない。
- これまで紙媒体で良い教材を作っていた会社は、デジタル教材を作ってくれるのか?
- 技術をもっているところが、新たに教材に参入してくるのか?
- デジタル教科書と教育データ利活用
- 学習者用デジタル教科書、の話は、まだ始まったばかり。
- 2018年度までは、これは教科書として認められていなかった(教科書は、教科用「図書」だったから。 それが、法改正をして紙の内容と同一の内容をデジタル化した学習者用コンピュータは使えるようになった。)
- 紙の教科書がデジタルになって、合理的な配慮という観点からは助かる人もたくさんいる。 拡大縮小表示や総ルビ、読み上げなども。
- まだ有料だが、いつか無料になるかもしれない。
- まずは多くの学校が使っていくようにならなければならない。 そのために、今年20億円の予算を投入した。
- 教科書会社は大変だったと思う。クラウドで配信、IDとPWの供給しなければならなくなった。
- 学習指導要領のコード化
- 学習指導要領をキーにして、デジタル教科書や教材ツール・学習ツールなどが関連付けできるようになる。
- 誰がこのリンクを貼るのか、というのはまだ決まっていない。
- 利用ログもとって、関係するところをつなげていく、レコメンドしていくということができるようになる。
- 公教育データは、どこに集めるの?という問題がまだある。
- 学習データを塾に持っていって…とか、健康データと比較して…とか、できることはいろいろある。いろいろなことが、公教育のデータから読み取れる可能性がある。
- うまく二次利用すれば、「算数のこの学年のこの単元が難しそうだ」ということも、還元されることとして出てくる可能性がある。
- 文部科学省によるオンライン学習システム「MEXCBT(メクビット、MEXT:文部科学省+CBT:Computer Based Testing)」(参考:文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について:文部科学省)
今回の講演では、3つめのポイント「デジタル教科書と教育データ利活用」がメインだ、と堀田先生はおっしゃっていました。学習者用デジタル教科書、デジタル教材などさまざまありますが、それを単独の教材として見るのではなく、学習者の学びを未来の学びの形=「データ駆動型」の学びへとアップデートしていくために、どんなことができるのか、を考えさせてくれる講演でした。
No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)