教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

ICT CONNECT 21 水曜サロン:“「GIGA端末、使ってはいるけど…」を越えるために” レポート(2024年5月22日)

 2024年5月22日にオンラインで開催されたICT CONNECT 21の水曜サロンに、“「GIGA端末、使ってはいるけど…」を越えるために”というテーマで登壇させていただきました。前半30分で行ったプレゼンテーションの内容をダイジェストで公開したいと思います。

 水曜サロンには、現役の先生、専門家の方、最先端の教育を追求している方など、多彩なゲストの方がいらっしゃいます。そのなかで、自分のユニークなところは何かを考えたときに、「いろいろな学校現場を見ていること」ではないかと思いました。Googleカレンダーに入っている予定を数えてみたら、2023年度にのべ155の学校・教育委員会へ伺って、授業を参観させていただいたり、授業をしたり、研修講師をさせていただいたりしていました*1

 問題意識として、いろんな学校へ行って授業を見てときどき出会う「これはGIGA端末を使いこなせている」と言えるのだろうか?、という場面を紹介しました。例えば、授業支援ツールを使ってプリントを配布して、授業の最後に提出させて終わる、という授業。これだと、GIGA端末は使っているけれど、やっていることは紙のプリントを配布して集めているのとあまり変わらないと僕は思うのです。せっかくデジタルなのだから、授業のはじめの段階で一度提出してもらって、クラス内でお互いに読み合って、そこでいいなと思ったことを取り入れて書き直して、もう一度提出をしてもいいようにすれば、何を書いていいかわからない子が、クラスメイトから学ぶこともできる、新しい授業ができると思うのです。そして、これはGIGA端末を使っていないとできない学びの形式だと思います。
 そうした、「ツールは使えているのだから、授業を変えればGIGA端末を使って新しい学び方ができるのに!」という状況を変えていきたいと僕は思っています。

 文部科学省や教育委員会、現場の先生方ががんばって、GIGA端末の活用を進めてきているのはひとつ大きな成果だと思っています。コロナ禍の間、「学びをとめない」という目的を共有して先生方はがんばってきました。
 でも、いまはGIGA端末を使ってこうした新しい学び方を実現している先生方もたくさんいます。一方で、とりあえずGIGA端末を使っているだけに思える先生方もいるのが現状だと思います。
 文部科学省のGIGAスクール構想が目指すのは、「学びをとめない」というところにとどまるのではなく、デジタルを学びの道具として使って、新しい学び方を子どもたちができるようになることだと思うのです。

 文部科学省のメッセージがきちんと届いている先生は、GIGA端末を学びの道具として使っています。でも、このメッセージが届いていない層があるのだと思います。
 メッセージが届いていない層には、いまやっている方法、例えばさまざまな情報発信や研修などでは届いていないのです。だから、GIGA端末の使い方も変わらないし、授業も変わらないし、学びも変わらない。このままではいけないと思うのです。

 文部科学省と教育委員会のメッセージの発信、研修の実施など、正攻法が意味がないわけではありません。きちんと機能していると思います。たくさんの先生方が、GIGA端末を使って学びを授業を変えているのですから。
 まだ届いていないところに届けるならば、ここから先に必要なのは正攻法ではないゲリラ戦であり、局地戦だと思います。
 そのために、「GIGA端末を使いましょう」「パソコンを使いましょう」「iPadを使いましょう」などのふんわりした言葉遣いではなくて、目的を明確にしたGIGA端末の活用をすることが必要なのではないかと思います。

 2022年3月に出した著書『学校のデジタル化は何のため? 教育ICT利活用の目的9類型』のなかでも書いたことですが、「何を目的としてGIGA端末を使うのか」を明確にして授業で使うことが必要だと思います。

 目的を明確にすれば、「その目的が達成されたか」を評価することができます。そうして、子どもたちがGIGA端末をツールとして新しい学び方ができる授業ができる先生を増やしていきたいと思っています。
 個人的には、「GIGA端末を何を目的にして、どう使うか」という観点で学校をサポートさせていただくためには、指導案検討からご一緒するのがいちばん効果があるのではないかと思っています。このブログでも何度かレポートをしている、逗子市立逗子小学校や、富士見市立針ケ谷小学校は、継続的にサポートさせていただいているからこその成果だったように思います(がんばったのは先生方なのはもちろんのことです)。

 今回、話を聴いていただいた方々の中から、「何かご一緒したい」という人が出てきてくれたらな、と思っています。「GIGA端末、使ってはいるけど…」を越えていくために一緒にゲリラ戦・局地戦をしていく仲間ができたらいいな、と思っています。

◆ ◆ ◆

 水曜サロンは後半はICT CONNECT 21の赤堀侃司 会長とやりとりをして、その後オーディエンスの皆さんとお話ができる場です。事前質問もいただいていたし、リアルタイムにチャットで質問を寄せてくださった先生方もいらっしゃいました。
 質問をいただいて、それに答えていく過程で、自分が思っていることが言語化されていったような体験がこの日はありました。自分にとっても本当に学びが多い時間になりました。本当にありがとうございました。

 ICT CONNECT 21のサイトで「水曜サロン with 赤堀会長」まとめページが公開されています。僕の回だけでなく、第2期からずっと読むことができますので、ぜひこちらのページも見てみてください。

(為田)

*1:ちなみに、弊社フューチャーインスティテュートでの僕の相棒である教育コンサルタントの佐藤靖泰は、2023年度 のべ202件でした。2人あわせて会社としては合計357件です。たくさんの学校の先生方、教育委員会の皆さまとのやりとりから、学べていることは本当に多いと思っています。いつもありがとうございます。