日本教育工学会 論文誌 Vol.40 No.4に掲載されていた、長濱澄(早稲田大学大学院人間科学研究科)・森田裕介(早稲田大学人間科学学術院)の書かれた論文「映像コンテンツの高速提示による学習効果の分析」を読みました。授業動画や解説動画などは、この論文が受理された2016年から5年がたち、さらに普及しているように思います。授業動画や解説動画は、再生速度を上げて視聴している生徒・学生もいると聞きます。再生速度を上げることで、時間あたりに得られる情報は増えますが、それによって学習効果はどう変わるのか、ということについて書かれた論文です。
大学生を対象にした実験では、早送りや巻き戻し、一時停止を使わずに、10分足らずの映像を1倍・1.5倍・2倍の速度で見て、知識をどれくらい得られるかという点で学習効果を計測しています。
論文のまとめのところでは、「理解度テストの分析結果から,提示速度の相違は学習効果に影響を与えないということが明らかになった」と書かれていました。
情報がまとめられてスライドに提示されて、それを高速提示してもほぼ学習効果は変わらないようです。補助的にスライドを通じて視覚的に情報を得ることができれば、ある程度は高速になっても大丈夫なのかもしれません。
高校生も動画教材で授業を受けている生徒は多くなってきていると思いますので、こうした研究がさらに進められるといいな、と思います。同じ観点で「授業コンテンツの高速進行による学習効果の分析」などの研究があればいいな、と思いました。
ここまで読んでいて、「学習効果がどう上がるのか?」ということについて、いろいろな観点から可視化されている、ジョン・ハッティ『教育の効果』を思い出して、本棚から出して探してみましたが、「映像コンテンツの高速提示」というのに近い研究は見つけられませんでした。CAIとかコンピュータを使った学習、などはあるのですが、これはやはりテクノロジーの進歩、コンテンツの充実によって出てきた動きなので、これから研究が進んでいくのではないかと思いました。
(為田)