2022年11月17日に戸田市立戸田東小学校で、「一人1台情報端末×デジタル・シティズンシップ」というテーマで校内研修の講師をさせていただきました。
子どもたちが一人1台の情報端末を使いこなすようになればなるほど、いろいろと問題も出てきます。それをすべて禁止して縛っていくのではなく、子どもたちが一人1台の情報端末を学びや表現のツールとして使えるようになるために、どんなことを考えればいいのかをデジタル・シティズンシップ(と情報モラル)について紹介しながら先生方と考える研修にしたいと思っていました。
最初に、情報モラルとデジタル・シティズンシップがどのように違うのかについて、『デジタル・シティズンシップ』の内容を紹介していきました。
僕が小学校で授業を担当しているなかで出会ったいろいろなケースを紹介しました。実際に教室で子どもたちが起こす困ったことについて紹介をしていきます(どの学校でも多かれ少なかれ経験されていることだと思います)。
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僕は、日々、子どもたちが一人1台の端末を使っていく様子を見ていくにつれ、情報モラルも、デジタル・シティズンシップも、子どもたちが学校で過ごす日々のなかで現れてくるものであり、それについて先生方が対応をしていくのも、学校での日々のなかで、になります。だからこそ、それを見とる先生の「デジタルとはどういうものなのか」という価値観が大事だと思います。
そこでMentimeterを使って、先生方に「子どもたちにとって、デジタルとはどんなものだと思いますか?」という質問に答えてもらいました。
いろいろなコメントを書き込んでもらえたのですが、いろいろな価値観が言葉に現れてきます。
例えば、「何かをつくりあげる、学ぶために効率よく活動するための道具」「視野・思考を広げる」「これからの社会で生きていくために必要な素養、技術」「可能性を広げるもの」「自分や友達と向き合うためのツール」などのように、積極的に学校での子どもたちの学びに取り入れていこうとする意見が多く出ていました。
一方で、「便利」「生活必需品」「日々進歩しているもの。便利なもの」「暮らしを良くしてくれるもの」「可視化できるツール導入(慣れるまで)には時間がかかるもの」「疲れたくない時、急ぎたい時に使うもの。」「人間が上手に使うことで生活を豊かにするもの」「作業を効率的にしてくれるもの」「自分が楽に生活をするために便利に使いたい道具」のような意見も見られました。
デジタルのいろいろな側面を言葉として表現してもらっているのですが、デジタルに対してこうした多様な価値観があることを知ることは大切だと思っています。
デジタルに可能性を大きく感じている先生は、多少のトラブルがあっても、デジタルを使っていろいろなことを表現する機会を作ったり、思考する機会を作ったり、いろいろなことにチャレンジさせようと思えると思います。
一方で、そこまでデジタルの可能性を大きく感じておらず、「便利なもの」程度であれば、想定されるトラブルを前に、「多少面倒でも使わないのでいいのではないか」と思う先生もいると思います。
こうした、「デジタル」についての価値観を学校で合わせていかないと、学校内で子どもたちがする良い使い方と、良くない使い方への対応がバラバラになってしまうと思います。
それぞれに違う価値観があるのはいいと思いますが、学校内である程度方向性を統一していかなければ、保護者様に伝えることができません。例えば、「家で学校の端末でYouTubeばかり見ている」や「宿題はデジタルでやらせたくない」のような言葉を保護者様から面談などで言われたときに、学校として子どもたちにどのように「デジタル」を使って学べるようになってほしいと思っているのかを、同じ答え方ができる方がいいと思います。
後日、読ませていただいた先生方のふりかえりで、この「デジタル」についての価値観をみんなで書き出したワークについて書かれている先生がいらっしゃいました。
- これまでは、情報モラル教育中心だったなと自身を見つめ直すことができました。これからはデジタルシティズンシップが大切であると学びました。「デジタル」について、一人一人少しずつ違った考えをもっていることも共有できてよかったです。家庭にも広めていけるようまずは、教員間で連携を取っていく必要があると感じました。
- 今まで、情報モラル教育とデジタルシティズンシップ教育は対立概念だと思っていた。情報モラルからデジタルシティズンシップへと単純に考えていたが、両方必要だということを知ることができた。戸東小のみんなで、戸東版のDCを作り上げられればいいなあと感じている。
- なぜ、一人1台端末が今必要なのか、保護者の方にも伝え知ってもらうことが必要だと気が付きました。子供たちには、発達段階に応じてモラルを教え、レベルアップできるようにどんどん使わせ、自分も一緒に勉強していこうと思いました。
学校がある地域の環境によって、デジタルについての価値観は違うと思います。だからこそ、どういった伝え方をするのかは、学校単位で考える必要があると思います。
子どもたちが一人1台の端末を使って学ぶことで、デジタルを使ってどう社会に関わっていくかを子どもたちが学んでいける学校づくりを、戸田東小学校の先生方がしていく助けに、この研修がなれていればいいなと思います。
(為田)