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未来を創る教育セミナー 2025 in 仙台 レポート No.2 特別対談:自立した学習者と「ふりかえり」(2025年10月18日)

特別対談:自立した学習者と「ふりかえり」〈中編〉

 2025年10月18日に東北学院大学五橋キャンパスで開催された、未来を創る教育セミナー 2025 in 仙台(主催:一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC))で行われた、東北学院大学 教授 稲垣忠 先生と東京学芸大学 准教授 登本洋子 先生が登壇した「特別対談:自立した学習者と「ふりかえり」」の様子を〈前編〉・〈中編〉・〈後編〉に分けてレポートしています。

子どもたちに「ふりかえり」をさせている我々は「ふりかえり」をしているのか?

 ここで、登本先生がこのセミナーに参加している先生方にとって、「ふりかえり」をどうするかは気になる課題であるという前提を確認したうえで、会場に来ている学校の先生方自身に「ふりかえりを毎日されていますか?」と質問をしました。「毎日じゃなくても、週1回くらいはふりかえりをしています、という方は?」という質問に対して、手を挙げたのは3~4割くらいでした。笑い合いながらも「毎授業週とかは…ふりかえりはできないよね…」という空気が会場に流れました。

 登本先生は続けて、稲垣先生に「どうやってふりかえりをしているのですか?」と質問します。

登本先生:
いま、稲垣先生と共同研究などを進めさせていただいていますが、稲垣先生はとてもお仕事が速くて、そのような稲垣先生はふりかえりはどうされていますか?

稲垣先生:
私、いつふりかえりしているかなと思ったら、Facebookで週に1回くらいまとめて書いているんですね。ただそれはふりかえりというか、ほとんど生存確認みたいな感じですね。どうしても東北にいると、稲垣ってそういえばいた気がするけど、彼は何やってんだろうね、って気にしてくれてるならまだいいんですけれども、気にもされなくなってしまったら怖いと思うわけですよね。一応なんか生きてますよ、なんか仕事してますよ、と伝えるために1週間に1回書くというのが、僕にとってのふりかえりですね。
あと、大学で1年に1回業績をまとめろって言われるじゃないですか。あれもふりかえりになりますね。それこそ、我々の師匠である堀田龍也 先生は年末にブログでまとめを書かれるじゃないですか。「あんなにいつも出せないな」って思いながら読んで、「やばい自分はこれができていない」とか思ったりします。

登本先生:
人のふりかえりを読みながら考えさせられることもありますよね。稲垣先生は1週間に1回しっかりこれだけの文量を書かれて、本当にふりかえりをされているから、また日々につながっているんだなと思いました。

「ふりかえり」について気になっている、2つのこと

 登本先生はいろいろな学校で授業を見ていて、「ふりかえりにいたるまで」と「ふりかえりの頻度と内容」の2つが気になる、と言います。

 1つめに挙げられたのは、「振り返りにいたるまで」のことです。「先生が設定している授業の目標」と「生徒たちがふりかえりで書くまとめ」が、きちんと対になっているのだろうか、と登本先生は問題提起します。

登本先生:
例えば、小学校で「物の体積と温度」を学ぶ単元で、目標が「学習した内容をもとに現象の仕組みを説明しよう」であるのに、授業のまとめが「金属や空気の温度による体積の変化は、日常生活でも使われている」となっていたことがありました。
このように、授業の目標とまとめが対応していないという場面を、わりとよくみかけます。

ふりかえりをするときに、「そのときの目標が何なのか」をつかんでおくことは大切なことですが、これが意外と児童にはっきりと落ちていない形で授業が展開されている。そして最後に目標と対になっていない形で授業のまとめが行われて、かつ児童に「ふりかえりなさい」と言うと、児童が書いている記述がとても漠然としたものになっていることはとても気になることです。

 2つめに挙げられたのは、「ふりかえりの頻度と内容」です。ふりかえりを「いつ」「どれくらい」「何のために」行っているのか、という点について、登本先生は問題提起します。

登本先生:
児童生徒にとって、月曜日から金曜日まで、基本的に1限から6限まで、授業があるとします。今は毎回の授業でふりかえりをやっていることが多いと思います。そうすると1週間のなかで約30回、児童生徒たちはふりかえりを書いていることになります。こう考えたら、児童生徒たちはけっこうすごいと思いませんか?毎週20~30回、授業の最後に「はい、ふりかえりを書いてください」と言われているわけです。

「ふりかえり」を何のために行っているのかは、一度よく考えた方がいいです。ふりかえりは、児童生徒の成長のために行っています。でも、もしご自身の授業で毎回行うふりかえりがあまり役に立っていないということであれば、単元の最後にだけふりかえりを書くようにすることもできます。毎回のふりかえりをただ漠然と、「今日これがわかりました」と書くんじゃなくて、今日学んだことをしっかり自分の言葉で書くようにすることもできます。ふりかえりが形骸化していないか、今一度見直してみてください。

デジタルでふりかえりを書くようになって、紙でふりかえりを書いていた頃よりできることは多くなってきたと感じています。何より、友達のふりかえりを見ることができます。先ほど稲垣先生も堀田先生のふりかえりを見て自分も思うことがあるということをおっしゃっていましたが、せっかく同じ教室の中で学んでいるので、一緒に学んでいる友達がどんなことを同じ授業のなかから考えてきたのかということを繋げてあげる、ふりかえりにはそういう役割もあると思います。

ゴール=目的を明確にすることが大事

 登本先生は、ゴールとして授業の目的、単元目標がしっかりあることの重要性について説明します。

登本先生:
文部科学省が出しているサポートマガジン「みるみる」で、単元目標がしっかりとあって、そこで学習者が全体であったり個別であったり協働であったり、いろんな学び方を組み合わせながら進んでいくということが書かれています。
私はこの単元目標を授業でしっかりと設定しておくということが大切だと思っています。いま、「個別最適」であったり、「自由進度」であったり、「生徒に委ねる」であったり、いろんな言葉が語られることが多いんですけれども、私たちが考えていかなければいけないのは、本当に一人ひとりの生徒をちゃんと伸ばすことができているのか、というところです。

はじめて行く場所へ人に連れて行ってもらうことがありますよね。その後で、一度連れて行ってもらった場所に、2回目に自分一人で行こうとしたら行けなかったことってありませんか?
授業でも同じだと思うんです。先生方が全部わかりやすく子どもたちを連れて行こうとしている。でも、やっぱり最後は子どもたちが自分の足で歩いて来られるようになってほしいですよね。
ふりかえりにあたっては、もしかすると「どこに行くのか」も共有されずに進んでいるのかもしれません。どこに向かっているのかわからずに、先生のペースでただ進んでいく。その結果、子どもたちは先生からの一問一答には答えられていても、大きな流れで何を目指しているのかをわかっていない、ということになってしまいます。
どこに向かっているかもわからないのにふりかえりをするのは難しいことです。教員が単元の目標をしっかりもっていて、それを子どもたちと共有できているのかが大切なポイントだと思います。

自律した学習者になるためのふりかえりの役割は、まず「その授業の学習内容をちゃんと理解しているのか、学習内容が定着しているのか」と「自分が成長できているのか」、ということだと思います。それから、次の学習に向けて「今日もっと宿題して覚えた方がいいな」とか「ここを確認しておいた方がいいな」ということを自分で確認して自己決定することです。

そのためには「ふりかえりにあたって目的が明確になっているのか」「ふりかえりが授業の“終わり”ではなく、また次の学習に続いていくものになっているのか」に着目することが大切です。
先生が「はい、ふりかえりを書いてください」と言うときに、子どもたちに授業のどんなところを見てふりかえりをしてほしいのかを、教員が意識しておかなければいけないと思います。教員が授業の見取りをしているのかということが大切になってくると思います。

探究学習と「ふりかえり」/ 『学びの技法』と「RefNavi(レフナビ)」

 登本先生は、著書『学びの技法』のなかでまとめた「探究のステップ」の図を紹介して、その図の中央に「ふりかえり」があることを紹介します。

登本先生:
学び方ってどうやったらいいんだろう、というのを書いた「学びの技」という本では、探究学習のステップを以下の図でまとめています。

課題の設定、情報の収集、情報の整理…と進んでいく探究のステップは螺旋的に描かれています。行ったり来たりしながら進んでいくわけですが、中央に「振り返り」と書かれていて、目的をいつでも確認しながらそこに立ち返ったりしながら進んでいくことができるイメージです。
先ほど、稲垣先生が「俯瞰すること、メタ認知が大事だ」とおっしゃっていたんですけど、上に鳥が飛んでいまして、常に鳥の目で自分の活動を見るということを表しています。

稲垣先生:
ふりかえりのところは、ちょっとこれなんか段が上がってますよね。

登本先生:
はい、「ふりかえり」には階段でちょっと上になっていて、メタ認知(=鳥の目)はさらに上から見るようになります。探究のプロセスを行き来しながら、「常に」「上から鳥の目で」自分の探究を見る、ということができたらいいなということを図にしています。

 もうひとつ、稲垣先生と登本先生が一緒に取り組んでいる参考文献管理アプリ「RefNavi(レフナビ)」についても、探究学習のふりかえりをサポートするツールとして紹介されました。

登本先生:
私たちが稲垣先生と一緒に取り組んでいる参考文献管理アプリ「RefNavi(レフナビ)」を紹介します。探究的な学習において、発表など最後の成果物だけでふりかえりや評価をしてしまいがちであるところに私たちは問題意識を持っています。

探究のステップのなかで情報収集の存在はとても大きいのですが、探究的な学習のいちばん最後にふり返っても、情報収集へ戻ってふりかえることが難しかったりします。そのときの支援として、どんなメディアでどんな情報を収集したのかを可視化できるようにしました。
生徒たちがどんなものを使ったかというのを可視化できるようにすることで、教員の支援にも役立つし、ふりかえりのときも何となく「情報収集した」だけしか書けなかったのが、RefNaviを使うことで見えるようになります。

情報収集は、探究のステップのひとつのステップですけれど、ふりかえりのときに何に着目してほしいのかということで開発をしました。

 RefNaviの活用事例は、こちらのページから確認することができます。関心がある先生方は、ぜひお読みください。新たなお申し込みも可能です。

 No.3に続きます。

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(為田)