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宮城教育大学附属小学校 授業レポート No.2(2021年10月20日)

 2021年10月20日に、宮城教育大学附属小学校を訪問し、上杉泰貴 先生が担当する3年2組のコンピュータサイエンス科(以下、CS科)の授業を参観させていただきました。
 宮城教育大学附属小学校ではプログラミング教育にとどまらず、より適切にコンピュータを活用するために、その特性や原理についての科学的な理解を学ぶことを目指して、年間10時間のCS科を設けてカリキュラム開発及び授業研究が進められています。

 今回のテーマは、「IDとパスワード」についての授業でした。IDとパスワードは、なかなか正面切って授業のテーマとなることは少ないですが、一人1台の情報端末を活用する上でとても重要な概念であり、正しく知り使えるようになることが必要なことだと思います。

 授業は、Googleフォームを使って事前に回答してもらっていた、「何種類のパスワードを使っていますか?」というアンケートの結果発表から始まりました。棒グラフでまとめられた結果を見ると、「1種類」が2人、「2種類」が10人、「3種類」が11人、「それ以上」が5人でした。
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 「学校の中だと、どこで使っていますか?」と上杉先生が質問すると、「PC(Chromebook)にログインするとき」「キーボー島のとき」「Scratchというプログラミングサイトで使う」などの答えが出てきました。上杉先生は、それ以外にも、これまでに使ったことのある、Spheroでもパスワードを入れる画面があることを伝えます。
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 上杉先生が「パスワードの画面で共通することは何だろう?」と質問すると、「入力することがある」「どんなことを入力するのかな?」「自分で決めたり、先生からもらったりする、決まったパスワードを入れる」と子どもたちと先生の間でのやりとりが進んでいきます。
 「パスワードだけじゃなくて、ユーザー名(ID)もセットになっている」という答えが子どもたちから出ると、上杉先生は「どうしてユーザーIDとパスワードはセットになっていると思う?これを課題としてみんなで調べてみよう」と言い、近くの人と話し合う時間をとりました。「名字がなくて名前だけだと、同じ名前の人がいると区別できない。でも、名字もあると区別できる。IDとパスワードは名字と名前みたいなもの?」「キーボー島のIDとパスワード、教えちゃだめって言われている。パスワードの方が個人情報で分かりにくい」「パスワードの方が分かっちゃいけない気がする」という意見が出てきました。

 上杉先生は、「では、コンピュータを使って調べてみよう。パスワードを間違えてみたらどうなるのかな?」と問いかけます。子どもたちは自分のChromebookを取り出します。ログイン画面が表示されると、上杉先生は「自分のパスワードの大文字を小文字に変えてみたり、最後に1つ数字をつけてみたりしてみよう」と言います。「ログインできる?」と訊くと、子どもたちからは「できない!」と返事が返ってきました。

 パスワードはどんなものなのだろう?と訊くと、「大事なものを守るために、鍵をかける」「パスワードは鍵みたいなもの」という意見が出てきたところで、上杉先生は「例えば、友達のコンピュータでもログインはできるのかな?他のコンピュータに、自分のIDとパスワードをセットしたら使える?使えない?」と質問をしました。
 「えー…」と悩む子どもたちに、上杉先生は「やってみましょう」と代表者を決めて、教室の前に出てきてもう一台のChromebookに自分のIDとパスワードでログインしてもらいます。実際にやってみると、自分の席にある自分のChromebookと、いまログインしたChromebookの両方にログインできて、壁紙も同じになりました。
 Chromebookの壁紙を子どもたちが自分の設定にしていたので、「ちゃんとできている!」と分かりやすかったと思います。壁紙だけでなく、ログインしてくれた子のGoogleドキュメントが読めることをみんなで確認しました。
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 「同じだ!」「できた!」「すごい!」と教室は盛り上がります。こうした活動を、教室でみんなでやってみるのはとてもいいと思いました。上杉先生が「どういうことだろう?」と問いかけてみると、「同じIDとパスワードで入ったから、同じ画面になった。」「家のコンピュータでログインしてみても、できたから」などの声が出ていました。
 上杉先生は、「コンピュータは、IDとパスワードで本人かどうかを判断しています。IDとパスワードは“鍵”でもあるけれど、自分であるかを確かめる手段として使われているんですよ」と説明しました。
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 授業後、上杉先生にお話を伺うと、「GIGA端末が入って感じる良さの一つは、コンピュータの利用体験が下地として揃うところだと思います。学校内での同じ利用体験をもとにして話ができるので、“なぜ?”と自分ごとで考えられるようになると感じています。」と、一人1台の端末を使っていることの良さについて言及されていました。
 今回のIDとパスワードについては、CS科の系統表にある「ネットワーク技術」内の「個人認証」に関する授業でした。ChromebookにログインするときのIDについては、あまり入力する機会はないので、「今回の授業で扱うことができて、ネットワークアカウントについて話し合えたことは価値があったと思います」と上杉先生はおっしゃっていました。

 IDとパスワードを正しく知り、正しく使えることは非常に重要です。一人1台の情報端末を使えるようになったことで、実際にみんなで体験をするということが可能になり、きちんとIDとパスワードによる個人認証について学べるようになったのは、意義があることだと思いました。

 No.3に続きます。
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(為田)