2021年10月20日に、宮城教育大学附属小学校を訪問し、2年生・3年生・6年生の3つの学年でコンピュータサイエンス科(以下、CS科)の授業を参観させていただきました。
宮城教育大学附属小学校ではプログラミング教育にとどまらず、より適切にコンピュータを活用するために、その特性や原理についての科学的な理解を学ぶことを目指して、年間10時間のCS科を設けてカリキュラム開発及び授業研究が進められています。
いただいた「コンピュータサイエンス教育」のカリキュラム開発に向けての実証研究 報告書のなかにある2020年度のCS系統表を見ると、以下のように7つのカテゴリーのなかに、さまざまな概念が配置され、これらを1年生~6年生のそれぞれの段階で学ぶようになっています。
- A コンピュータの仕組み
- ハードウェアとソフトウェアの特徴や仕組み
- 情報機器の基本操作の知識
- B ネットワーク技術
- ネットワーク・通信の仕組み
- サイバーセキュリティ
- C アナログとデジタル
- アナログとデジタルの変換
- D データと分析
- データの収集・記録・保存
- データの可視化と加工
- E メディアの特徴
- 文字、数値、音声、静止画、動画の特徴
- F プログラミングとアルゴリズム
- プログラミング的思考
- プログラミングの知識・技能
- コンピュータを使った計測と制御
- G コンピューティングと社会との関わり
- 生活への影響
- 社会的な相互作用・コミュニケーション
- 安全、法、倫理
一人1台の情報端末が配備されたことで、児童全員が同じコンピュータ利用体験ができるようになったので、こうして体系を作り、授業を行っていくことが可能になったと思います。
デジタルをツールとして使いこなせる子どもたちを育てるために、こうした体系表とそれぞれの概念を学ぶための授業案が研究されることには大きな意味があると思います。今回参観させてもらった授業の中でのねらいも、この体系表の中に位置付けられたものになっていました。
2年生・3年生・6年生の授業を見せていただいた後で、2年生の新田佳忠 先生、3年生の上杉泰貴 先生、6年生の安倍彰人 先生に、「子どもたちにとって、CS科はどんな教科・授業になっていますか?」と質問してみました。
安倍先生:
いまだに分からない部分は分からないです。「プログラミング教育と何が違うの?」と訊かれたときに、ここに来るまでは「ICT活用」と思っていました。
でも、やっていくうちに、知らずに使っていたコンピュータの中身を知って使えるようになるところが、CS科としての強みなんだろうな、と思ってきました。IDとパスワードも、どんな機種になっても使えるようになります。AIにも弱点があることが分かるようになるのも同じです。AIの良さ、苦手なところも理解した上で、うまく使っていくことを考えるなど、CS科で学ぶ意義が見えてきていると思います。
新田先生:
私自身コンピュータをそこまで知らなかったのですが、CS科を自分自身が指導すること、勉強することを通して、為すことで学んできたな、と思っています。ネットワークの仕組み、コンピュータの仕組み、デジタルとアナログの特性とか、そういうのがやっていくなかでわかってきました。子どもたちもそうであったらいいと思います。
主体的な使い方ができるようになってほしい。そして、安全に使えるようになってほしいです。どういうときはデジタルがよくて、どういうときはアナログがいい、と判断できるようになってほしいです。「心を込めて書きたいときは手描き」「絵を描くのを楽しむのは、手描きがいい」「慣れていないから手描きがいい」、というふうに自分なりに選んで主体的な活用が増えてきたらいいと思います。
CSをやることで変わってきたな、と思うのは、自力解決できる、自力でトラブルシュートできる子が増えてきたと思います。質問もあまり訊きに来なくなりました。
上杉先生:
前提として、CS科は、子供たちにとってワクワクする授業であってほしいと思っています。GIGA端末の活用も始まり、子供たちの興味関心も強くて、今はそうなっていると感じます。GIGA端末の配備により、これまでは台数が少なくて争奪戦だったコンピュータにじっくり向き合えるようになりました。
(今日やった)IDとパスワードの授業も、興味がなければ当たり前のこととして見過ごされてしまいますよね。これまで、目を向けなかったようなことについて一緒に体験したりしながら学ぶことで、コンピュータやプログラミングについて、またデジタル社会についてじっくり向き合う教科にしていきたいですね。子供たちがコンピュータを問題解決の道具として、新しい表現ツールとして、情報の科学的な理解に支えられた活用ができるように授業を考えていきたいと思います。
今回参観させていただいた2年生・3年生・6年生の授業は、CS科の体系のなかの一部ですが、こうしてCS科の体系のなかに埋め込まれた授業が日々開発され、授業で実際に子どもたちがどう学ぶかを評価しながら作られているのは、GIGAスクール構想によって一人1台の情報端末が配備された全国の小中学校にとって、大きな力になるのではないかと思いました。
(為田)