2022年6月10日に、オンラインセミナー「ICT利活用がうまく行っている事例に学ぶ――『学校のデジタル化は何のため?』」に登壇しました。
このセミナーは、3月に発売した書籍『学校のデジタル化は何のため?』で書いた、教育ICT利活用の目的9類型を紹介し、「何のために学校でICTを利活用するのか」を考える軸として考えてもらいたい、という目的で開催しました。
ゲストとして、戸田市教育委員会の戸ヶ﨑勤 教育長に登壇していただきました。戸田市教育委員会は、教育ICT利活用の目的9類型を本当に最初期に応援していただいている自治体です。また、戸田市内の小中学校の先生方とお話をさせていただくことで9類型が磨かれてきたと思っています。
戸ヶ﨑教育長に戸田市内の小中学校でどのような活用がされているのかを紹介してもらうことで、参加者の方に実際の学校での活用事例を知ってもらおうと考えました。
セミナーは、教育ICT利活用の目的9類型の紹介するパートと、戸田市の小中学校でのICTの活用の紹介するパートで構成しました。
「教育ICT利活用の目的9類型」クイックレビュー
ICTはいろいろなことに活用できるからこそ、「GIGA端末を使いこなす!」というような大きな言葉で活用を始めるのではなく、もっと明確な目的を設定することが重要だと思います。
9つの類型を紹介しましたが、このなかでどれを目的に設定すべきかは、それぞれの学校で先生方が子どもたちの様子や学校で目指す方向性、地域文化などを考えながら決めるべきだ、ということを伝えました。一気に9つすべてを追うのはとても大変だと思います。自分たちで、どの類型を追求するのかを考えることが必要です。
「GIGA端末を使いこなす!」という大きな言葉でなく、「子どもたちの基礎学力を上げるために、類型5:進捗確認・理解度確認と類型3:理解促進を目指そうよ」というふうに、目的を明確にすることで活用を進めていけると思っています。
戸田市の小中学校での「教育ICT利活用の目的9類型」の浸透具合
戸ヶ﨑教育長は、戸田市で進めているPBL・探究の実践で、類型7:表現手段拡充・思考手段拡充、類型8:情報共有の拡充、類型6:教材拡充、類型9:学習環境の拡充あたりで活用されている、という話をしてくださいました。
たくさんの事例を紹介していただくことで、教育ICT利活用の目的9類型と学校での実践とを結びつけて考えるきっかけになったのではないかと思います。
読者アンケート結果紹介
今回、セミナー参加者の皆様には、事前にアンケートをお願いして、教育ICT利活用の目的9類型のなかで「あなたの学校でICTは主に何に活用されていますか?」と「何に活用したいですか?」について、全43件の回答をいただいていました。
「あなたの学校でICTは主に何に活用されていますか?」という“現状”についての回答では、「類型8:情報共有手段の拡充」「類型7:表現手段拡充・思考手段拡充」「類型1:興味喚起」が上位3つとなりました。「類型8:情報共有手段の拡充」が最も多いのは、授業支援ツールを使っている先生が多いことを示しているのではないかと思います。また、「類型7:表現手段拡充・思考手段拡充」は想像していたよりも多く、回答してくださった先生方の教室での、文章作成や表計算、プログラミングなどの活用が行われていることを示していると思います。
一方、「何にICTを活用したいですか?」という“理想”についての回答では、最も多かったのは「類型3:理解促進」、続いて「類型7:表現手段拡充・思考手段拡充」と「類型8:情報共有手段の拡充」となりました。「類型3:理解促進」は、いままでの授業ではなかなか理解が難しかった内容をデジタル教材やアプリなどを活用することで理解しやすくしたい、という活用方法です。先生方の「もっと目の前の子どもたちの学びをサポートしたい」という気持ちの現われかと感じました。
最後に、「こうやって活用したい=“理想”」と「いまこうして活用している=“現実”」の差が大きかったものとしては、「類型3:理解促進」「類型5:進捗確認・理解度確認」「類型4:授業効率化」の3つとなりました。この3つの類型を見てすぐに思いつくのはデジタルドリルをはじめとする各種コンテンツかと思いました。
戸ヶ﨑教育長には、戸田市の小中学校でビジョンを共有し、学校でICTをマストアイテムとして使っていくために、どのような実践をしているのか、ということについてお話をいただきました。
まとめ
教育ICT利活用の目的9類型は、「なぜICTを活用するのか」ということを考える評価の軸として使ってもらえればいいと思っています。学校で先生方と、「うちの学校はどの目的を達成するためにICTを使いたいのか」を話し合うときの叩き台にしてもらえれば、それがICT利活用を一歩進めることに繋がるのではないかと思います。
お忙しい中、ゲスト登壇してくださった戸ヶ﨑教育長、本当にありがとうございました。
(為田)