教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

奈良女子大学附属中等教育学校 授業レポート No.2(2023年1月25日)

 2023年1月25日に、奈良女子大学附属中等教育学校の二田貴広 先生が担当する5年生(高校2年生相当)の基盤探究Ⅱ(コロキウム類型)の公開授業「日本古典文学の学びのための360°動画教材をつくる生徒たち ―メタバースでの学びを展望して―」をオンラインで参観させていただきました。

 clusterでのプレゼンテーションが終わったあと、休み時間を挟んで授業は後半へ続きます。公開授業の後半では、「メタバースでの<わたし>は、『わたし』なのか?」について考えていきます。

 二田先生は事前に3つの問いを生徒に提示していました。この3つの問いについて、生徒たちと全国各地から参加している先生方との間で対話がされました。

  1. メタバースアバターの他者の「気持ち」はわかる?
  2. 「われわれとしての自己(Self-as-We)」という概念
  3. アバター同士が「仲良くなる」とはどういうことか?

 こうした問いを通じて、メタバースにどんな可能性があるのかを生徒たちと大人たちで一緒になって対話をするのは、興味深い取り組みでした。
 我々大人の参観者よりも、生徒たちのほうがオンラインでのコミュニケーションの体験が多いのではないかと思います。最近では、オンラインでその場にいない人と一緒にゲームができるようになっています。「あつまれ どうぶつの森」などのゲームでも、アバターを通じてコミュニケーションもできるようになっています。

 対話のなかで、「アバターの方が“一緒にいる”感じがする」という声が生徒からあがっていました。
 自分自身もZoomなどのオンライン会議システムを使って、画面を共有してもらってプレゼンテーションを聴くことはあります。そのときにはアバターは使っておらず、プレゼンテーションをしている人の顔を画面で見ています。
 そうした体験と、今回の公開授業で体験したアバターとしてプレゼンテーションを見る体験とは、少し受け取り方が違うように感じました。アバターがいることで、身体性が少し増えるのかな、と思いながら対話を聴きました。

 二田先生から挙げられた最初の問いである、アバターの他者の「気持ち」はわかる?については、「アバターでは、どんな表情でも作れる。操作している人の表情と一致もしない。気持ちはわからないのでは?」という声もあがっていました。
 アバターであれば、どんな表情や感情でもボタンひとつで「作って見せられる」と思います。作れるのは表情や感情だけでなく、所属や名前でさえも好きなように「作って見せられる」環境です。
 どれが本当かがわからないからこそ、逆に本名をしっかり出して、アバターと名前に信頼をつけていくことが大事かな、と僕は感じました。

 clusterをはじめとするメタバース空間は、これから広がっていくテクノロジーです。メタバース空間での学びを体験し、その後で対話をする時間をもつことで、自分自身にとってメタバースがどんな意味を持ち得るのかを考える機会になったのではないかと思いました。

 No.3に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)