2025年10月18日に東北学院大学五橋キャンパスで開催された、未来を創る教育セミナー 2025 in 仙台(主催:一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC))に参加させていただきました。全体テーマは「“ふりかえり”から見とる学習者主体の学び」で、特別対談、全9校・教育委員会によるポスターセッション、グループワーク、講評のすべてのパートで「ふりかえり」がメインテーマとなっていました。
ポスターセッション
特別対談の後に2会場に分かれて行われたポスターセッションには、栗原市立築館小学校、仙台市立黒松小学校、宝仙学園小学校、仙台市立錦ケ丘中学校、鎌倉市教育委員会+鎌倉市立由比ガ浜中学校、青翔開智中学校・高等学校、宮城県多賀城高等学校、かえつ有明中学校・高等学校、玉川学園中学部・高等部の9校・教育委員会が参加していました。
そのなかから、宮城県多賀城高等学校、栗原市立築館小学校、仙台市立錦ケ丘中学校のプレゼンテーションの様子をレポートします。
宮城県多賀城高等学校
宮城県多賀城高校の佐藤寿正 先生は、「ふりかえり×メタ認知 学ぶ意味・必然性の感得へ」というテーマでプレゼンテーションを行いました。

佐藤先生のプレゼンテーションは、「生徒のふりかえりが形式的になりがちだ」という課題意識の提示から始まりました。生徒たちのふりかえりは、「楽しかった」や「難しかった」のように簡単な短いものになってしまいがちだし、自己評価にしろ他者評価にしろ、形骸化しやすいと言います。
そんな生徒たちのふりかえりを「学習意欲につながる“成長の営み”」にするために、多賀城高校ではOPPA(One Page Portfolio Assessment)=1枚ポートフォリオ評価、という手法を行っています。OPPAでは、生徒たちは1枚の用紙で学習前・中・後の履歴を記録し、その全体を生徒自身が自己評価します。
佐藤先生は、「学びのあしあと」と名付けられたOPPAで使うワークシートを示しながら、使い方を説明していきます。

「学びのあしあと」は単元ごとにロイロノート・スクールで配布されます。いちばん上に「地球の生き物はどう変わった?」のように、簡単に答えが出ない、単元を貫く本質的な問いが書かれています。
その下にある「授業前」の欄には、単元を貫く本質的な問いについて、既存の知識から考えた答え(=「素朴概念」)を書きます。その横にある「授業後」の欄には、学習後の知識や考えをふまえた答え(=「科学的概念」)を書きます。
この「授業前」と「授業後」の2つの欄を比較することで、生徒たちの学習前と学習後の変容を見取れるようになっています。

その下に、単元を学ぶ毎回の授業のふりかえりを書く欄があって、ここに生徒たちは「ふりかえり(今日の授業で一番大事だと思ったこと)」と「疑問点や感想など」を書いていきます。
毎回の授業の最後の5分間を「ロイロタイム」と呼んで、ふりかえりを書く時間として確保しているそうです。「時間を作らないと、生徒たちは書いてくれない」と佐藤先生は言います。
佐藤先生はロイロノート・スクールで毎回提出箱を準備して、そこに「学びのあしあと」を提出してもらっています。佐藤先生は生徒たちが書いた「学びのあしあと」のふりかえりを読んで、iPadを使って手書きでコメントを書いて、次の授業で返却しているそうです。生徒たちは、返却された「学びのあしあと」に新しい授業回のふりかえりを上書きしていくので、学習履歴が蓄積されていきます。デジタルでやりとりしているので、失くしたり汚したりすることもありません。

こうして、毎回の授業のふりかえりと、そのふりかえりへのフィードバックを通じて、授業では予想外の質問を生徒たちが書いてくることもあるそうです。また、興味深かったふりかえりを次の授業の冒頭でクラス全体へ紹介することもできて、授業内容が教科書を超えていくようになる、と佐藤先生は言います。
こうした機会があることで、生徒同士でお互いのふりかえりを読むことができ、学びへの意欲が触発されることもあるし、先生からも一人一人に対して適切なフィードバックをすることで、個別最適な学びに結びつけられます。
最初はふりかえりが上手にできない生徒でも、先生がコメントをしっかり返していくことで、だんだんきちんとふりかえりができるようになっていく実感があるそうです。

佐藤先生は、「たくさんの生徒たちとのやりとりを行うことになりますが、私が鍛えられます」と言います。教師の授業改善に繋がっているそうです。

栗原市立築館小学校
栗原市立築館小学校の髙橋陸 先生は、「「振り返り」で変わる!自由進度学習とフィードバックで育む主体的な学び」というテーマでプレゼンテーションを行いました。

髙橋先生は最初に、自由進度学習を始めるに至った背景を話してくれました。教員生活5年目あたりでもった、「授業は楽しいけれど、その学びが続いていないのではないか」という課題意識から、「楽しいだけ」の限界と向き合い、授業観を見直すことになったそうです。自由進度学習によって、「与えられて学ぶ子」から「自らつかみ学ぶ子」になってほしい、と言います。

髙橋先生は、自由進度学習を導入する背景として、「キャロルモデル」と「ATI(適性処遇交互作用)」の2つのキーワードを紹介しました。この2つのモデルによって、学び方の指導へ繋げていく、と高橋先生は言います。
- キャロルモデル=時間をかければ学べるようになる
- 学習の成否は生まれ持った能力の差ではなく、「学習に必要な時間」と「実際に費やした時間」の差によって決まるという考え方。
- 「できない」のは「能力が低い」のではなく「時間が足りないだけ」と捉える。
- ATI(適性処遇交互作用)=今は学んでいないだけ
- 学習者の個人の「特性(適性)=Aptitude」によって、指導法や教材などの「処遇=Treatment」の効果が異なるという考え方。
- 適性(Aptitude): 学習者の学力、性格特性、学習スタイル、動機づけ、認知スタイルなど、学習成果に影響を与える個人的な要因。
- 処遇(Treatment): 教育内容、教授法、教材、学習時間など、教育を提供する側が変更できる要因。
- すべての学習者に同じ指導法が最適とは限らず、個人の特性に合わせて指導法を調整することで、より高い教育効果が期待できるとする。
- 学習者の個人の「特性(適性)=Aptitude」によって、指導法や教材などの「処遇=Treatment」の効果が異なるという考え方。

築館小学校での自由進度学習を支えるしくみも整理して紹介してくれました。自由進度学習を実現するための背景に、これだけのものが関わっている、ということが具体的に分かって、これから自由進度学習に取り組む学校には参考になるのではないかと思いました。
- 自由進度を支える学びのしくみ
- 単元の見通し(学習計画表)
- 自他の進捗把握(進度表)
- 自分ごとに捉えさせる教材づくり
- 学びの見える掲示や一覧表
- 教室レイアウトの工夫
- 子どもの行動を支えるもの
- 振り返り記録ツール
- 自己決定支援ツール
- 学びを支え合うツール
- 仲間の存在
- 教師の支援を支えるもの
- 記録写真・映像
- 児童の振り返り
- (自己流)声掛けマニュアル
続いて髙橋先生は、自由進度学習を支えるものとして、どう「振り返り」に取り組んでいるのかを紹介しました。児童に求める「振り返り」のポイントとして、3つのポイントが挙げられました。
- 情意的な感想ではなく
「楽しかった・難しかった」という表面的な振り返りではない。 - 学びと結びつける
これまでの学びと結びつけたり、新たな問いを見つけたりする。 - 前向きな思いの確認
「次はこうしたい」という前向きな思いを確認する時間の積み重ね。
そのうえで、年度の最初から、「学び方」「学習内容」「友達との関わり」について、振り返りで書くようにしよう、と子どもたちに伝えてきたそうです。

児童が書いた「振り返り」にどんなフィードバックをしているか、実際のフィードバックのコメントを事例として映しながら説明してくれました。
フィードバックの視点として、できたことや頑張りを具体的にほめる「価値づけ」、うまく行かなかった点や課題をやさしく要約する「原因分析」、時間配分・調べ方などすぐに実行できる具体策を示す「次回への提案」の3つを入れている、と解説されました。

「振り返り」については、頭の中で考えてはいるけど、表現できない児童もいるので、それを書けるように先生がサポートする必要がある、と髙橋先生は言います。「振り返り」は、先生からのコメントも含めてデジタルで蓄積されていくので、子どもたちは自分で書いた以前の「振り返り」も読むことができるので、少しずつ「振り返り」を書けるようになっている自分を、先生と子どもが一緒に確認することができていいなと感じました。
仙台市立錦ケ丘中学校
仙台市立錦ケ丘中学校の木村嘉彦 先生は、「学びを関連付ける振り返りの工夫 ~学習の転移から生まれる楽しさを目指して~」というテーマでプレゼンテーションを行いました。

木村先生は最初に、「学びを関連付ける」ために、「確かな学びの自覚」を目指していると言います。学びを積み重ねていくことで、学んだことを他の単元でも使えたり、他の教科との関連を見つけられるようになったりして、学びの楽しさを知ることができるようになります。そのために「振り返り」をどう使っているのか、ということが紹介されました。

生徒たちが学んだことを別の場面で活用すること、つまり「学習の転移」を目指しているということです。学習の転移を目指すポイントとして木村先生が挙げたのは、「自覚」と「関連付け」です。
実践事例として、中学校2年生 国語「資格ガイドを作る」の授業が紹介されました。一人ひとり資格を選んで調べていき、ロイロノート・スクールやCanvaなどを使ってまとめていきます。自分がまとめた内容はクラスで共有して、生徒同士でコメントもしていました。

木村先生は、生徒たちが「何を自分たちが学んだのか」を自覚できるように、Googleスプレッドシートで作成した「学びの自覚シート」を使っています。
単元ごとに用意されている「学びの自覚シート」の「ふりかえり」の欄に、「この単元を通して、できるようになったこと」「この単元を通して、次にできるようになりたいこと」「つながり(学習前と後の違い・新たな気づき・これまでの学習との比較)」の3つのことについて生徒たちが書いていきます。
ここで、学習前と後の違い・新たな気づき・これまでの学習との比較、という3つの視点で「つながり」を意識するように求めているのが印象的でした。
「ふりかえり」の欄の隣には、「キーワード」を書く欄があります。そこには「工夫」「理解度」「書き出し」「関連性」など、学びを一言キーワードで書くようになっています。こうして学びを一言でラベリングすることで、生徒たちにメタ認知を意識してもらうというねらいがあります。

また、他領域・他教科との関連付けを促すための視点として、「見通した」「気付いた」「考えた」「相談した」「広がった」「深めた」「まとめた」「つながった」などの「言葉」を紹介しているそうです。
こうして他教科と共有できる「言葉」、実生活で使える「言葉」を生徒たちが使えるようにするのは、基幹教科としての国語科の役割である、と木村先生は言っていました。

「学びの自覚シート」を使うことによって、ふりかえりの型を整理・構造化することで、生徒たち自身が学び全体を見渡せるようになる、と言います。
共通化しているふりかえりのための「言葉」がどんどん蓄積されることで、過去の自分とも、クラスメイトとも比較ができるようになるし、他の教科との関連付けも進んでいくと感じました。
No.5に続きます。
(為田)