2025年9月5日に文部科学省 中央教育審議会の教育課程企画特別部会から、これまでに出た意見をまとめた「論点整理(素案)」が出されました。
学習指導要領の全面改訂に向けた教育課程企画特別部会の議論をまとめた「論点整理(素案)」には「次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方」が提示されています(p.5)。多様な子供たちの「深い学び」を確かなものにするために、「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」、「②多様性の包摂(Equity)」、「③実現可能性の確保(Feasibility)」の3つを「あらゆる方策を活用し、三位一体で具現化」する、と掲げられています。

僕は、「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」、「②多様性の包摂(Equity)」、「③実現可能性の確保(Feasibility)」のいずれにも、異論はまったくありません。次期学習指導要領に盛り込んでもらいたい考え方(=理念)だと思います。なかでも、「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」と「②多様性の包摂(Equity)」については、学校の授業を変えてくれるほどの影響をもってほしいと思います(「③実現可能性の確保(Feasibility)」については、授業というよりももう少し広く大きく環境の話かな、と思っているので、ちょっと横に置いておきます)。
「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」と「②多様性の包摂(Equity)」という考え方が学校の先生方にインストールされると、授業が変わっていくだろうなと思っていますが、一方で「授業をどう変えていけばいいのか」ということが教室で児童生徒を教える先生方には伝わりにくいかなとも感じました。この部分については議論がこれから深まっていくとは思いますが、それにちょっと先駆けて自分たちで今できることは何だろう?と考えてみました。
学校の先生の言葉に注目したい
自分たちで今できることとして、「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」と「②多様性の包摂(Equity)」が実現されることによって、先生方が教室で児童生徒に向けて使う言葉がどう変わっていくかを見ていこう、と思いました。
学校で研究授業に参加させていただくことが多くありますが、そこで研究授業に参加している先生方が、「授業中に先生が発した言葉」をたくさんメモしていることに僕はいつも驚いています。
そして、研究授業の後の協議会で、多くの先生が「あのとき、先生は“○○くん、~~~だね”と言いましたよね」「あそこの○○さんの質問に対しての、先生の“~~~”という問い直しがよかったですよね」というふうに、先生が教室で発した言葉からいろんなことを聴き取り、授業での見取りと合わせて価値づけているように思います。授業中に先生が児童生徒に向けて使う言葉が、とても意義深いことであることを感じます。
だからこそ、先生方が授業中にどんな言葉を言う/言わないようになったら、「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」と「②多様性の包摂(Equity)」という方向性が学校の先生方にインストールされたと言えそうなのか、を考えてみたいと思い、弊社フューチャーインスティテュートの佐藤靖泰と2人で考えてみました。
先生が授業中にこんな言葉を言う/言わないようになったら「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」が進んでいる感じがする(かも)
「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」がインストールされると、先生が授業中にこんな言葉を言う/言わないようになるんじゃないかな、と想像した言葉を書いてみました。それぞれの言葉の後に、どうしてそう思ったかの注釈も書いてみました。これが絶対ではなく、もちろん状況によることもたくさんあるのですが、たたき台として列記してみようと思います。
先生が授業中にこんな言葉を言うようになる:
- 「書けたところまででいいので、一度提出してみて、他の人がどんなことを書いているのかを読んでみましょう。他の人が書いたものを読んでから、書き直してもいいですよ」
※ 全部を自分ひとりで書かなくてもいい。他の人の書いたことを参考にしながら、少しずつでも自分の言葉で書けるようになっていく。- 「グループでの話し合いを始める前に、まずは自分の考えを書いてみましょう。グループ内で自分の考えを伝え合いましょう。」
※ いきなりグループで話し合う前に、じっくりと自分自身の言葉を書く時間をとることで、グループでの話し合いを深めることができる。先生が授業中にこんな言葉を言わなくなる:
- 「あまりよくわからなくてもいいので、教科書のまとめをノートに書いておきましょう」
※ 「よくわからないけど先生が言うから…」となってしまって、「教科書のまとめをノートに書く」ことがゴールになってはいけない。- 「自分の力だけで書いてみましょう」「他の人のを見てはいけません」
※ 自分の力だけでなく、他の人の考えも知ることで、自分の力以上のものを少しずつ書けるようになっていくこともある。
先生が授業中にこんな言葉を言う/言わないようになったら「②多様性の包摂(Equity)」が進んでいる感じがする(かも)
「②多様性の包摂(Equity)」がインストールされると、先生が授業中にこんな言葉を言う/言わないようになるんじゃないかな、と想像した言葉を書いてみました。
先生が授業中にこんな言葉を言うようになる:
- 「自分の考えと友達の考えを比べてみて「いいな」「なるほどな」「そうきたか!」をたくさん見つけましょう」
※ 意見の交流や議論が「自他が違うことが前提」で展開されることがより当たり前になる。- 「答えまで行きつかなくても大丈夫ですよ。そんな時は友だちや周りの人に考えを聞いてみるのも手ですね」
※ 答えを出すことだけが目的ではなく、さまざまな考え方・視点があるという気付きが大切なんだということが学級内に広がる。先生が授業中にこんな言葉を言わなくなる:
- 「タブレットは先生がいいと言ったときだけ使います」
※ 自分で思考したくなるタイミングも、表現したくなるタイミングも、人それぞれなので、自分でタブレットを使いたいと思ったときに使える環境である方がいい。- 「昨日の宿題を提出していないのはAさんとBさんです」
※ 提出していないこととやってないことは別問題。さらに家庭の事情や体調など「やれなかった」のには個別にプライベートな理由があるのかもしれない。自分で調整可能な程度の時間的・量的・内容的な余裕を持って家庭学習に取り組ませたい。
学校の先生の言葉に注目したい(くりかえし)
「①主体的・対話的で深い学びの実装(Excellence)」と「②多様性の包摂(Equity)」が大事で、それに基づく授業がしたい、という先生方が増えていけば、学校の授業で聞ける言葉は変わっていくのではないか、と思います。ただ、改めて自分たちでこうして「どんな言葉が学校の授業で聞けるようになればいいのだろう…?」と書いてみたら、意外と難しかったです。
ここからは、集合知でやるのが圧倒的に速いと思います。たくさんの授業を見て、先生方の言葉を集めて、「あ、この言葉はいいな」という事例を集めていきたいと思います。また、「こういう言葉もいい/よくないよね」という言葉があったら、ぜひ教えてほしいです。辞書作りの用例採集のように、集めていきましょう!(←『舟を編む』、大好きなんです!)
(為田)