教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

i和design Final Presentation 取材報告 No.1(2016年3月12日)

 3月12日に多摩市立愛和小学校のi和design Final Presentationに参加してきました。午前中に公開されていた授業と、午後に行なわれた研究発表会の様子をレポートしたいと思います。

実況中継Minecraft(4年生+6年生)

 小学校4年生と6年生の合同で、Minecraftを使った授業を行っていました。授業では、一人1台ずつタブレットを持ってMinecraft Pocket Editionを使います。授業の最初に、上田先生から今日の授業は3人組のグループで行うことが伝えられます。ただし、グループになるのはMinecraftの世界の中、つまりオンラインでの話であり、オフラインの方では誰と誰と誰が同じグループかはわかりません。

Minecraft: Pocket Edition

Minecraft: Pocket Edition

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 グループを分けるときに配られたカードには、リーダー・建築家・デザイナーと役割が書いてありました。建築家はとにかく家を建てる、デザイナーは建てられた家をアレンジしていく、というように役割が与えられていました。役割だけを決めたらさっそくグループで家を建て始めるのですが、誰と誰が同じグループかもわからないので、家を建てている間もグループ内での会話はいっさいありません。
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 「どう?」と上田先生が訊くと、「だれかわかんない」「何を作るのかわかんない」「話し合った方がやりやすい」という感想が児童から返ってきました。そこで、上田先生は、Minecraftにコメント機能があることを伝えて、「同じ家を建てているグループのメンバーに対してコメントを書いてもいいよ」と言います。ただし、コメントするときのルールが3つありました。ルールは下の3つです。

  1. 否定しない。「やりたくない」とか「ダメ」とか言わない
  2. 正体をバラすのダメ
  3. コメントするときは、良いアドバイスを。より良くするために、「こうしたい」「こうしたらいいと思う」と言うようにする

 この3つのルールだけを伝えて、また家を建てる作業に戻ってもらいます。すると、児童からは、「家のまわりに花を置いてもいい?」のようなコメントが出始めました。また、上田先生は机間指導しながら、「作った後に、「◯◯をしたよ」とコメントをするのもいいね。」というふうに、良いコメントについて教室内でシェアをしていきます。
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 しばらくコメントを書きながら家を建てる時間をとった後で、上田先生はディスカッションを行います。ワークシートを配って、「会話なしだとやりやすいかやりにくいか」を書いていき、発表し合います。
 会話をした方が作業はやりやすい、という声が多いなか、一方で「コメント書いたのに無視された」というコメントもありました。こうした感想が出るのも、実際にコメント機能をMinecraftで使ったからこそだと思います。また、オンラインでのコミュニケーションであれば、こうした問題はいつでも起こりえるものであり、それを疑似体験できるのはいいなと思いました。
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 このタイミングで、グループリーダーを上田先生が発表します。そして、グループのリーダーのところに児童はiPadだけを持って移動して、グループごとに座ります。こうしたことができるのも、タブレットを使った学習ならではだと思います。グループみんなで座った状態で、今度は、会話しながら家を建てる作業の続きをします。

 ここで、グループごとに座って一気にコミュニケーションが活発になればよかったのですが、そこはなかなかうまくいきません。会話できるグループとできないグループがあります。まあ、これは当たり前ですね。グループ内にどんな人がいるかにもよりますし、リーダーの性格などにもよると思います。オンラインでコメントが盛り上がっていなかったグループが、オフラインで顔を突き合わせれば急にコミュニケーションができるようになるわけでもありません。グループになっても会話がないこともあり、それなら一緒じゃないか?とも思います。コミュニケーションスキルとしては、オンラインかオフラインかで違いがあるわけではないな、と感じました。
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 上田先生は、授業の最後に、「今日の授業で勉強してほしかったのはマイクラ(Minecraft)ではなく、コミュニケーションです」と児童に向けて言っていました。授業終了後に上田先生と「グループ同士で座ったときに、もっとコミュニケーションが活発になるとよかったですね」「それはそうですけど、なかなか難しいですね」とお話をしました。ただ、思いとしてどういう落とし所を用意しているのかがわかりやすい授業だったな、と感じました。
 オンラインとオフラインのコミュニケーションの違いなどを実感させるのであれば、「家を建てる」というゴールがないものではなく、「なるべく高い家を建てる」などのようにある程度目標を設定した方がよかったかもしれないなと思いました。目標があると、コミュニケーションの必然性ができますし、コミュニケーションしないと成立しない/定義が合わない/意図がすれ違う、というような指令を出すようにすれば、よりコミュニケーションの良さや難しさを体験できるのではないかと思いました。
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 オンラインでのコミュニケーションとオフラインでのコミュニケーション。グループで一緒に何かをする意味。コミュニケーションの良さと限界。リーダーシップのあり方。いろいろな要素に焦点を当てながら授業が作っていけそうだな、と感じました。

 No.2に続きます。

(為田)