教育ICTリサーチ ブログ

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芝浦工業大学附属中学高等学校 訪問レポート No.1(2020年10月5日)

 2020年10月5日に芝浦工業大学附属中学高等学校を訪問し、ICTを活用した授業の様子を参観させていただきました。芝浦工業大学附属中学高等学校では、入学時に一人1台タブレットPCを購入してもらうことになっています。
 また、先生方も一人1台、Surfaceを自分用のPCとして持っています。全教室の天井にプロジェクタが設置されているので、先生は担当する教室へ行き、自分のPCから無線で画面を投影することができます。また、職員室の先生方の机には、外付けディスプレイが配備されているので、職員室へ戻ってきたら、自分のPCを接続すれば大きな画面で仕事をすることもできるようになっています。
 こうした設備自体が揃っていることは、ICTを活用するための準備段階として非常に重要だと思います。
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 案内をしていただいた教頭補佐・教務統括室長である柴田邦夫先生によれば、現状では授業のときに生徒は自分のタブレットPCを先生方の指導のもと好きなように使えるそうです。「多くの先生方が教材を提示するのに使うようになってきて、生徒は思考や表現のツールとして使っているが、もっと使用を増やしたい」と柴田先生は言います。
 そのなかでも、教室を覗いていると、タブレットPCを開けてキーボードで何か入力をしている生徒もいます。教科ごとの特性によってや、授業の中での活動によって異なるとは思いますが、生徒たちが自分たちで「いつ、どのように使うのか」を選ぶことができるのはいいことだと思います。また、生徒たちがタブレットPCに好きなシールをたくさん貼っていて、自分のものとしての愛着を持っているように思いました。
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 グループワークをしている授業では、論点をまとめたり発表資料をまとめるためにタブレットPCを使っていました。
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 また、ディベートを行っていた社会の授業では、そのための情報収集や情報整理のためにタブレットPCを使っていました。出てきた論点などは、一覧性がある方が見やすいので、ホワイトボードに書いてまとめてありました。このように一人ひとりは個人情報端末で作業をして、それをまとめるのは全体でホワイトボードを使う、というように使い分けをしていけることが重要だと思います。
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 実験をしていた理科室では、実験の記録をその場でタブレットPCで入力し、クラス全体で共有していました。
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 ICT導入時には、校内でも「効果は出るんですか?」と言われたこともあったそうです。先生方がPCを使った授業をするようになり、生徒が一人1台のタブレットPCを使うようになっても、学業成績が以前と比較して落ちているという事実はないそうです。マイナスの効果がみられないので、「効果は出していくもの。そのために、どう工夫すればいいかを考えましょう」と柴田先生は校内で伝えているそうです。
 こうした姿勢を学校側がもっていることで、現場の先生方の授業設計にICTを取り入れていく工夫が活発に行われるようになるのだと思います。

 芝浦工業大学附属中学高等学校では、一人1台のタブレットPCは家庭へ持ち帰ることができます。また、禁止はしていますがゲームなどを自分でインストールすることもできるようになっているそうです。柴田先生は、「せっかく一人1台のタブレットPCを持っても、あれもできない、これもできない、というのでは無意味」と言います。
 一人1台のタブレットPCを持ち帰りで活用してもらっているので、入学時から家でのWiFi、プリンタの導入をお願いしているそうです。紙ベースでの資料配布はほぼなくなり、必要であれば家でプリントアウトしてもらうそうです。

 芝浦工業大学附属中学高等学校では、2021年度から、中学校で新カリキュラムを導入するそうです。そのなかで時間割の中に新設される「SD(Self Development)」は、定着のための時間、アウトプットをする時間として、生徒たちが自分で自分のやりたい学びを実現していくことを目指すそうです。また、同じく新設される「IT(Information Technology)」「GC(Global Communication)」は、探究型の授業を行っていくそうです。
 自分で学びを実現させたり、探究を突き詰めていくときには、デジタルは大きな武器になると思います。一人1台のタブレットPCを生徒たちも先生方も自由に使える環境を整備するところまで現状来ているので、ここから新カリキュラムの導入が進んで、より広い範囲で一人1台のタブレットPCが活用されていくのではないかと思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)