青木栄一さんの『鉄道忌避伝説の謎 汽車が来た町、来なかった町』を読みました。タイトルにある「鉄道忌避伝説」については、以下のように書かれています。
大概の日本人はこんな話をどこかで聞いたことがあるに違いない。
「明治の人々は鉄道が通ると宿場がさびれるといって鉄道通過に反対したり、駅を町から遠ざけたりした」
「蒸気機関車から出る火の粉で火災が起こる、煤煙で桑が枯れるなどといって鉄道の建設に反対した」
「鉄道が開通して便利になると村の若者が町にしばしば遊びに行くようになって堕落すると、村の長老たちが鉄道の駅設置に反対した」
「江戸時代に栄えていたわれわれの町に鉄道が通過していないのは、先祖たちが鉄道通過に反対したからである」
このような話は、「鉄道忌避伝説」と呼ばれる。(p.1-2)
この「鉄道忌避伝説」の真偽について書かれている本です。例として挙げられている町(と駅)も多彩で、掲載されている地図を見ているだけでもおもしろかったです。
中央線上野原駅が例に挙がっています。「中央線の上野原駅(山梨県)は同名の町のはるか下方に位置し、駅と市街との連絡は不便」(p.44)と書かれています。これは町が乗り入れを忌避したわけではなく、鉄道を敷く技術的な問題でこうなっている、という話が説明されます。
Googleマップで実際に上野原駅のあたりを検索し、地図の詳細を「地形図」に変更してみると、駅のところが河岸段丘でぐっと低くなっている様子もわかります。ストリートビューにして見ると、段が上がっている様子がよくわかります。こうしてGoogleマップを使うのもおもしろいな、と思います。
終盤に出てくる例は、山口県萩市の萩駅ですが、市街地をぐるりと回っていると書かれていたので、実際にGoogleマップで調べてみました。これも見てみると、萩市街をぐるりとよけて鉄道が建設されているのがわかります。でも、これも鉄道が避けられたというよりは、建設された1925年には市街地開発が進み、そこに鉄道を乗り入れるのが大変だった(用地買収などなど)、ということなのだ、と書かれていました。
この他にも、東海道線が豊橋より西に行くと旧東海道から大きくルートを外れて、岡崎駅が市街と駅が遠くなっている様子や、大阪駅も市街地からは遠いところに設置されていることなども紹介されていました。
デジタル地図を見ながら本を読んで考えていく活動は、どんな町でも見ることができるのがいいなと思いました。町によってはきっと古地図と照合できたりとかもするのではないかと思います。
また、「鉄道忌避伝説」のように、よく言われていることだけど、それって本当?というのを調べる機会にもなりますし、逆にこの萩駅の地図を見せて、「どうしてここに駅を作ったのでしょう?」と考えてみたりとか、いろいろ課題に使えそうではないかな、と思いました。
(為田)