2023年4月16日に、小学校3年生~中学校3年生の異学年構成で学ぶオンライン研究スクール「NEST LAB. (ネスト・ラボ)」のアントレプレナーシップ専攻のアドバンスコースの授業をオンラインで参観させていただきました。
NEST LAB. のアントレプレナーシップ専攻は、4月から12月までの第1日曜日と第3日曜日に、オンラインで90分の授業が行われます。月に2回の授業は、1回目がインプットの授業であり、2回目の授業がアウトプットの授業となっていて、子どもたちの好奇心・主体性・課題発見力・課題解決力・プレゼンテーション力などを養います。
4月はオリエンテーションで、株式会社NEST EdLABの藤田大悟 社長が先生を務めていますが、5月~11月までは現在進行形で課題解決に挑んでいる研究開発型ベンチャー企業の起業家(アントレプレナー)が講師として授業を行います。講師の話を聴くだけでなく、事前調査や事後調査など行動することも求められます。最後の12月には参加者たちが成果発表会を行います。
この日の授業は、4月の2回めの授業で、12人が参加していました。みんなZoomで接続していて、藤田先生がGoogleスライドの画面を共有しながら授業を進めていきます。
授業の最初に藤田先生が、「アントレプレナーシップとは、“好きを社会とつなぎ、それに挑戦する”気持ちや行動力」だと参加者に伝えます。
前回の授業で「自分の興味に正直になろう」という話をしていて、それに続く今回の授業は「あなたの好きを、仲間の好きとかけ合わせて、やれることを考える」ことから始まりました。
参加している一人ひとりの「自分の好き」を、「仲間の好き」とかけ合わせて、さらに「社会」につなげていく大切さを藤田先生は伝えます。その理由を「自分だけがやりたいことだと、世の中に貢献できなかったり周りの人がついてこなかったりする。他の人のために、世界とのかけ合わせをするのが、アントレプレナーシップだよ」と藤田先生は言います。
「私の好き」と「社会」をつなげるために、「社会」の困りごとを事前課題として参加者のみんなに探してもらっていました。自分の身の周りにある困りごとや、新聞やテレビなどで見た困りごと、周りの大人が言っていた困りごとなど、自分で見つけた困りごとを順に発表してもらいます。
「紙の新聞を買う人がいない」「環境にやさしい発電」「少子高齢化」などの困りごとが挙がりました。これらを、「テーマ」「困っている人」「どんなことに困っている?」というふうに、画面共有しているGoogleスライドで表にまとめていきます。テーマだけしか発表していない参加者には、藤田先生が「それは、誰が困るの?」「どうして困るの?」と追加の質問をしていきながら、表にまとめていきます。
みんなの前で、不足している情報をきちんと質問して補って、表にまとめる過程を共有することで、「どう考えたらいいか」をみんなに伝えることができます。こうした活動があることで、学校の先生が教室で板書するときに行っていることをオンラインの授業でも行うことができていました。
また、途中で「英語でテキストに書いたので、チャットに書いてもいいですか?」と質問する参加者もいました。彼は母国語が英語なのでコミュニケーションは英語の方がやりやすいようです。NEST LAB. に多様な参加者がいることを感じます。藤田先生は「もちろん。いいよ」と答えて、その子がチャットに書いた英語を日本語に翻訳して他のメンバーに共有し、画面に入力していきます。
このように発表の仕方を口頭だけでなく他のやり方も許容しやすくできるのは、オンラインの良さだと思います。
Googleスライドにみんなの見つけた「社会」の困りごとが並んだところで、藤田先生は「ここに出ている社会の困りごとのなかから、身近な課題にできそうなことを考えてもらいます」と言います。
大きすぎる問題だと途方もなくなってしまい、自分たちが解決できそうなものから離れてしまうので、ここで「社会の困りごと」と「身近な課題」のつながりを探していくことをねらいます。
身近にある「不法投棄」の問題と社会の「ゴミ問題」、身近にある「お金がない」という問題と社会の「経済格差」問題、身近にある「朝起きられない」問題と社会の「健康」問題というふうに、参加者はどんどん手を挙げて、自分で見つけた社会とのつながりを発表していきます。藤田先生は画面共有しているスライドに入力してまとめていきます。
次に、自分の身近で見つけた困りごと(=課題)について、「解決に何か協力できそうか」を考えていきます。他の人の見つけた困りごとに、「こうしたらいいんじゃない?」というアイデアも出てきます。「ガソリンが高い」という困りごとに「なるべく車に乗らないようにする」「電気自動車を使えばいいんじゃない?」というような解決策が出ていました。また、「水難事故を減らしたい」という困りごとに「僕がいま作っている水中ドローンを使ってもらいたい」というふうにアイデアを出していた参加者もいました。
藤田先生は、何か行動するときに必要なこととして、「社会の課題」を何とかしようと考え始めると実感がわきにくいので、「自分の好き」から始めて、「社会の課題」につなげるほうが、行動しやすいと伝えました。
こうした、「自分」と「社会」を行ったり来たりして、つながりを考えることは、自分の世界を広げつつ、社会を変えていくプロジェクトに取り組むために、とても大切だと思います。ただの調べ学習に終わらず、行動を促すために大事なプロセスだと感じました。
特に、NEST LAB. では、この後、起業家(アントレプレナー)が講師として授業してくれることで、「私の好き」と「社会の課題」のつながりを見つけたロールモデルの話をたくさん聴くことができ、より効果が高まると思います。
ここまでが90分の授業の前半でした。No.2に続きます。
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(為田)