教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

「学校で使うパターン・ランゲージ」オンラインセミナー レポート No.2(2025年11月30日)

 2025年11月30日にオンラインセミナー「学校で使うパターン・ランゲージ」に登壇して、パターン・ランゲージを研究されている井庭崇 先生(慶應義塾大学 総合政策学部 教授・株式会社クリエイティブシフト取締役会長)と対談をさせていただきました。

井庭先生 × 為田 対談

パターン・ランゲージを授業で使う意義

 パターン・ランゲージの教育現場での活用事例を紹介してもらった後は、井庭先生と為田で対談をさせていただきました。
 対談は、井庭先生から高校で行った探究の講演の話からスタートして、授業のなかでパターン・ランゲージがどのように効果を発揮するのかについて話しました。

井庭先生:
こないだ、高校1年生 280人に対して、探究の講演をしてきたんです。「探究パターン・カード」では、「A 課題の設定」「B 情報の収集」「C 整理・分析」「D まとめ・表現」「E 高める動き」「F 振り返り」と段階が分かれていて、最初の「A 課題の設定」のところで9つのパターンの話をしてきたんです。探究もプレゼンと同じで「よくわからないけど、やる」「具体的に何をやればいいのかわからない」「自信がない」というのが感想で多かったです。生徒たちは、「探究がまだわかってなくて不安だ」「どうしたらいいんだろう」と悩んでいる。解説した9パターンのなかでは、「興味があること」(自分の動きに注目して、興味をもっていることを見つけ、そのなかから探究の課題になるものを見つけていく)と「心の動き」(今までにあったことのなかで、よかったことだけでなく、怒りとか悲しみなどで心が動かされたことも思い出してみよう)の2つがいちばん響いていました。
高校生たちは「そういうことだったんだ!」となって、「漠然とした不安が、ひとつひとつの考え方や手順がわかってきたことで、すごくクリアになって楽しみになりました!」「できそうだという自信がもてました」という感想を多くもらいました。このもらった感想のなかには、パターンの名前が言葉として入ってきていましたね。いちばん難しい「A 課題の設定」のところでも効くな、と思いましたね。

為田:
意外と探究学習の「課題の設定」のところでは、「興味があることを見つけよう」とか9つのパターンに近いことを言っている先生はいると思うんですよね。これは、プレゼンテーション・パターンについても同じことが言えると思います。ただ、先生はちゃんと教えている(伝えている)けど、児童生徒があまりできるようになっている気がしない、というのが現状だと思うんです。それが、「パターンで与えられるとちゃんとできる」というのがあるんですよね。ここの差はどうしてなのかな、と僕は思っているんです。
プレゼンテーションでも探究でも、パターン・ランゲージを紹介したときに、先生方に「いや、でも、それはうちの学校の授業では伝えてるんだよね」と言われることがこれから出てくるのかな、と思ってるんですけど、井庭先生だったらどう答えますか?

井庭先生:
先生がそうして伝えていて、それで通じているのであればいいと思います。パターン・ランゲージがすべてだとは思っていないので。学び手として難しいのは、先生がいろいろ伝えたことをつながったまま丸ごと受け取って、分解できないまま聴いているんじゃないかな、と思うんです。そうすると、どうしても残らないものも多いんじゃないですかね。パターンになっていると「ひとつひとつ」という感覚があるんです。感想を見ていても、「1個1個がわかったからありがたい」というものがあります。パターンが1つずつカードになっていて、扱い得る何かとして捉えられているのがいいのではないかな、と思います。
もうひとつは、パターン・ランゲージは「説明する人の言葉」ではなく、「説明を受ける側の人の言葉」として書いているので、それが効いているのであればうれしいなと思います。パターン・ランゲージは「どういう言葉だと、どう伝わるのか」ということを本質観取して丁寧に作っています。だから、受け手に「するっと入ってきた」という感想も多い。普通の説明では自分の中に残せなかったものが、パターンで受け取ることで自分の中に残せているのではないか。それは狙って作っているところでもあります。

為田:
1つとして扱えるパターンの言葉を核にして、その周辺のエピソードを「こないだの運動会のときにも…」というふうに先生が言うことで、それぞれの学校・教室でパターンを使った学びの効果を上げられると思うんです。エピソードを用意しなければいけないのが大変かもと思う先生と、それがおもしろいと思っている先生に分かれるかもしれないですね。

井庭先生:
最近は、「パターン1つに具体3つがベスト」と言っています。違う事例を3つ出せるといい。先生であれば、「こないだのあの発表と…」とか3つくらいはパパッと言えると思います。抽象をいちいち0から生み出さなくていい。具体例3つを自分の学校でオリジナルに出してあげると、はまると思うんです。大変なのは、抽象を伝えるところ。そこに具体をうまくあてて届けてあげるといいと思います。

為田:
学校は6年間とか3年間とか継続できるので、1年間かけて具体を3つとか積み上げていくこともできますね。

井庭先生:
「探究パターン・カード」は大学院生でも使うし、「プレゼンテーション・パターン」も、小学生から教員や大人まで使っています。つまり、人生を通じて使える。小学生の頃からこれに接した子が中学校に入る、高校に入る、となるとスタート地点が変わってきます。違う学校から来たのに共通言語がある、共通感覚がある、というふうになればいいと思います。

パターン・ランゲージを授業で使うときに大事なこと

 学校でパターン・ランゲージを使った授業を行った後で、参観してくださった先生方から「パターン・ランゲージは評価にも使えますか?」とよく質問されます。パターン・ランゲージと学校での評価について、井庭先生に質問してみました。

為田:
パターン・ランゲージに限らず、学校で新しい何かを導入するときには、「子どもたちがどう変わったか」というのは大事です。そしてそれを「どう評価するか」ということが、学校ではすごく大事です。
僕は、授業でパターン・カードを紹介すると、子どもたちの行動が変わるのが目の前で見られるのが好きなんです。パターンが、子どもたちの何かを変えるトリガー(引き金)になると思っています。だから、45分とか50分の授業の前の方でパターンを紹介して説明して、授業の後ろの方ではパターンを子どもたちに使ってもらうようにしています。
でも、多くの先生方が、パターンを授業の後ろの方で評価に使っていることが多いかな、と見ていて思うんです。先生が、「このパターンを使えているな、よし」と子どもたちをチェックする感じになってしまっているのかもしれない、と思っています。これって、パターンの使い方として井庭先生はどう思いますか?

井庭先生:
パターンは、実践の支援のためにあるので、評価のためだけに使うのはあまりよくないと思います。先生だけが知っていて評価に使うのはダメ。教えてあげたうえで評価に使うのはいいと思います。パターンを共有したうえで、ルーブリックにして評価に使っている専門学校の事例があります。ちゃんとパターンを渡したうえで、ルーブリックを作る。この事例では、ただ普通に教えた場合と、パターンで教えた場合で、パフォーマンス課題での成果が高かったんです。こういうのはいいと思います。
もうひとつ、自己評価のために使ってもらえばいいと思います。「経験があるパターン」と「これから取り入れたいパターン」を自己評価して、グラフ化してみる。1年後にどうなったか、変化を見ることができます。変化は漸進的なので自分ではわからないことが多いけど、こうして変化を見られるようにもできるし、足りていないところをチャレンジしてみようか、と自己診断もできる。本人が「ここ、もうちょっとやりたいかも」というところを伸ばせると思う。自己改善・自己成長のためのツールとしても使えそう。アドバイスをピアにもらうなど、他の人と対話することでの学びもあります。

為田:
僕は、井庭先生のおっしゃる「中空の言葉」という言葉がすごく好きなんですけど、学校って具体的な指示の方に引き寄せられていくことが多いと思っていて、中空の言葉で書かれているパターンの言葉が、だんだん具体的な指示になってしまって、「こういう感じでやっておけばいいんでしょ?」というふうに形骸化してしまうことってないのでしょうか?パターンの言葉を使って働きかけていくことで、中空に保ち続けることもできるのでしょうか?パターン・ランゲージの活き活きとした部分が、だんだんただチェックするだけになって、ワクワクする感じがなくなっていく感じってありますか?

井庭先生:
学生や生徒、先生も気をつけた方がいいところだと思います。「(パターン・ランゲージは、)良い質を実現するためのツールである」ということを意識しなければいけない。「パターンに書いてあることをやればいい」というのではない。これはアレグザンダーが最初から言っていたことです。「やっておけばいいんでしょ」というのは質のことを考えていない。良いプレゼンテーションの質を生み出すためのヒントとしてパターンがある、ということを忘れてはいけない。良い質を実現するためにそれぞれのパターン・ランゲージがあるというのをわかって、意識する。それを目指しているという構えはいつも伝えなければいけません。「パターン、読んでおいて」とはしない。「良い発表にするために、パターン見直しておいて」、と言うんです。これは、とても大切で伝えるべきことです。

為田:
パターン・ランゲージは支援するためにあるからプロセスが大事、ということですかね?「良いプレゼンを作るためにこういうのを考えた方がいいんじゃない?」という感じですか?

井庭先生:
「やるべきことをやっておいたらクリアなんでしょ?」というふうになっちゃいがちだけど、良い質を作るためにあくなき探究をするのだ、ということです。
パターン・ランゲージは努力しない人にあげてもダメなんです。パターン・ランゲージは、努力する人、向上する人のためのものです。チートツールではない。「創造的にあなたらしく良いものを作ろう」という人に機能するものです。
良い発表の場がないのに、良いプレゼンを作ろうと言ってもダメです。ただ「頑張れ」と言っても頑張りません。これは授業の設計の問題です。だからこそ現場の先生が、関わっている生徒たちのことを見て考えた、「どういうことなら燃えるのか」というのがあってこそのものです。そこにやり方まで教えるのは先生方の負担になるので、そこはパターンを使えばいいと思います。

為田:
学校のなかの評価は最終的な総括的評価、いまどれくらい身についているのかという形成的評価だと、総括的評価で「使えてるね」と評価しがちですけど、プロセスとしてこのパターンを使えているのかを評価していかないとダメということですかね。

井庭先生:
子どもたちのコミュニケーション、言葉遣いが変わるというのは重要な発見だと思ったんですよね。そこは見えるじゃないですか。そうやってやっていくなかで、本人もそこでふりかえりを書いてみたりとか、どう成長したかを書いてみたりして。プロセスを見るのって、進み具合とか調査の量や質だったり、中間成果を見ているだけになる。そうじゃなくて、実践を見る。そこをパターンを使って語ってもらう、そのなかでできているかどうかを確かめていくことかな、と思いますね。

 最後にした質問に対して、井庭先生が「パターン・ランゲージは、努力する人、向上する人のためのものです。」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。パターン・ランゲージを授業の中にどう組み込むかの設計が大事になるので、ここは先生方と一緒に磨いていきたいなと思いました。

最後に

 パターン・ランゲージをどう活用しているかという具体的な事例もたくさんうかがえましたし、ターン・ランゲージの学校の授業への導入を進めているなかで、僕が思っている「パターン・ランゲージのいいところ」や「多くの先生方に使ってもらうときに気になっていること」についても質問をすることができて、とても勉強になりました。

 最後に、井庭先生からメッセージをいただきました。

井庭先生:
パターン・ランゲージを学校現場の皆さんが使ってくださることがいちばんです。我々はパターン・ランゲージを作っているけれど、普段の授業をするわけではないので、そこを皆さんが新しい形で展開していってくださればと思います。世界で作られているパターン・ランゲージですが、教育と福祉の業界では日本が導入先進国です。ここが突破できれば日本の教育も変わって、日本の社会も変わると思っています。こういった場に来てくれる方は同志だと思っています。ありがとうございます。

 小学校・中学校・高校でのパターン・ランゲージの活用は日本が導入先進国だとうかがって、僕自身すごくモチベーションが上がりました。子どもたちと先生方が「創造的にあなたらしく良いものを作ろう」とするときにパターン・ランゲージを使えるように、学校をサポートしていきたいと思います。

(為田)