教育ICTリサーチ ブログ

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山形市小学校長会「教育DX推進研修会」 講演レポート(2024年6月7日)

 2024年6月7日に山形市総合学習センターで行われた山形市小学校長会の「教育DX推進研修会」で講演をさせていただきました。当初はオンラインでの講演依頼だったのですが、山形市内全36校の小学校の校長先生に直接お話をさせていただきたいと思い、関係者の皆様に対面での講演を実現していただきました。

山形市の教育DX推進について

 今回の講演のタイトルは「教育DX推進と校長の役割」でした。事前の打ち合わせで「教育DXで推進しなければならないことと、校長の役割の両方について話をしてほしい」と言われていたので、講演の最初に山形市が進めている「DX・デジタル化」についての取り組みを紹介しました。
 このページの中で紹介されている、「山形市スマートシティ推進基本計画」のなかには「デジタル人材育成」という項目があって、そこでは取り組みとして「小中学校における時代に対応したICT環境の充実及び情報活用能力の育成」と書かれていました。

 ここに書かれている「小中学校における時代に対応したICT環境の充実及び情報活用能力の育成」は、学校として推進しなければならないことだと思いますが、これだけでは具体的に「学校で教育DXをどう推進したらいいのか」についてはわかりません。ただ、政策としてはこうした一般的な書き方にならざるをえないと思います。
 教育DXについては「学校でこれを推進してほしい」と具体的にはまだ打ち出されていませんが、いまの段階では、デジタルを普段使いして慣れておくことと、その先で子どもたちが学びのツールとして、思考・表現のツールとしてデジタルを使いこなせるようになることが、教育DXへの学校としての備えとなると思います。

 それぞれの学校の状況や学校経営方針に合わせて、「うちの学校ではデジタルを使ってこういう学びをできるようにしよう」と定め、校内で広げていくことこそ、校長先生の役割だと思います。同じ山形市内の小学校と言っても、それぞれにICTの活用の進み具合も違うでしょうし、クラスの人数も違うでしょうし、地域性も違うと思います。だからこそ、校長先生が自校に合ったデジタルの学びを打ち出す必要があると思いますし、それが教育DXにつながっていくと思います。
 そのために、「デジタルによって学校での学びがどんなふうに変わるのか」を校長先生は知らなければならないし、知ったうえで、学校で先生方と子どもたち・保護者の皆様に言葉として語らなければいけないと思います、と校長先生たちに伝えました。

デジタルを活用した授業事例の紹介

 参加している校長先生に、「デジタルによって学校での学びがどんなふうに変わるのか」を具体的に知ってもらうために、デジタルを活用した授業事例を紹介しました。

 最初は、この日の午前中に参観させていただいた山形市立みはらしの丘小学校の授業を紹介しました。同じ山形市内で、Windowsタブレット端末も同じですし、教室に電子黒板が導入されていることも、使うことのできる授業支援ツールも同じです。だからこそ、「これ、うちの学校でもできるかもしれない」ということを感じてもらえるのではないかと思いました。
 山形市立みはらしの丘小学校の授業を紹介した後は、日本各地のいろいろな学校で、いろいろな学年・いろいろな教科の授業事例を紹介して、それぞれの授業で「何を目的としてデジタルを使っているのか」を明確にしていることが成功の秘訣だ、ということを説明しました。

Padletを活用したコメント・質問の共有

 授業事例を紹介した後で、Padletを使って、この日の講演へのコメントと質問を入力してもらいました。QRコードを電子黒板に映すと、校長先生たちはスマホやタブレット端末でPadletにアクセスしてくれます。
 コメントをブルーで、質問をレッドのカードで、と色を指定して、5分くらい時間をとってコメントと質問を入力してもらいました。Padletをはじめて使う校長先生が多かったですが、すぐにカードが集まってきました。

 以下のようなコメントをいただきました。どれも、僕が伝えたいなと思っていた内容だったので、とてもうれしかったです。

  • 目標を明確にすることの大切さを再確認できた。
  • 若手の先生方に直接聞かせたいお話でした。そっか、それもできそうだ、と私に思いつかない発想が出てきそう。それが、周りの年配の人を動かしていくと思う。
  • DXで、何ができるのか、から、何がしたいかに変えていきたいと思いました。
  • 自分が使って授業していない…体験していないので、ワクワク感が上がってこない。校長であっても、自分で使って授業をしてみることが大切かなぁと思いました。

 今回のように参加者が多い講演では、全員にコメントや質問をもらうことはほとんどできません。しかし、こうしてPadletでコメントや質問を書いてもらうことで、全員からの発言を読むことができるようになります。これは講師としてとても大きな利点です。
 もうひとつ得られる利点として考えているのは、校長先生たちにこうして「デジタルを活用してコメント・質問を書く」ことを体験してもらうことです。そして、他の参加者である校長先生の意見をたくさん読むことができることを体験してもらうことです。こうしてデジタルを活用することで、よりたくさんの声を集めることができて、集めた声を次に使うことができる、ということが体感できます。

講演終了後も繋がりが続く良さ

 参加してくれた校長先生が書いてくださったカードの中には質問がたくさんあったので、僕は帰りの新幹線のなかで質問にコメントを返しながら東京へ帰りました。この日の講演を聴いた後、翌日に勤務校へ戻ってもPadletのURLさえ共有しておけば勤務校の先生方にもコメントや質問とその回答を直接読んでもらうこともできます。

 こうした講演への参加の仕方・講師である僕との情報のやりとりが、教室での子どもたちとのやりとりで同じことができるのだ、ということを体感してもらいたいと思って、こうした講演の設計にしました。


 山形市立小学校の教育DXの推進に少しでも今回の講演がお役に立てればと思います。

(為田)