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戸田市立戸田第一小学校 授業レポート(2025年4月25日)

 2025年4月25日に戸田市立戸田第一小学校を訪問し、1年生がはじめてタブレットの使い方について学ぶ「タブレットとなかよく はじめてのたぶれっと」の授業を参観させていただきました。この授業が、1年生の子たちにとっての「タブレット開き」となります。1年生4クラスが2クラスずつに分かれて、多目的室で一緒に「タブレット開き」をしました。
 戸田市の小学校ではタブレット端末として1年生からChromebookを使います。多目的室では、「タブレットをどう使うのか」について話を聴くのが目的なので、子どもたちはChromebookを教室に置いたままでした。

タブレットとなかよく はじめてのたぶれっと

 この日の「タブレット開き」で話す内容は、1年生を担当する先生方みんなで話し合って決めたそうです。最初に1年3組を担任する石塚怜美 先生がスライドを映しながら、タブレットとはどんなものかを子どもたちに紹介していきます。石塚先生が「タブレットってどんなもの?」と質問すると、子どもたちからは「パソコン!」「おべんきょう!」「クロムブック!」という声が返ってきました。石塚先生は子どもたちから返ってきた言葉を受け取ってやりとりをしながら、タブレットが「学校生活を良くするもの」「自分を良くするもの」だと伝えます。

 石塚先生は、「タブレットも仲間に入れて勉強していこうね。そうすると、みんなの勉強がレベルアップするんです。素敵な1年生になれます」と言い、「それから、頭だけじゃなくて、心の中も素敵になれると思います。すごいでしょ?」と続けます。
 1年生にはまだどんなふうにタブレットを使うか具体的にわからなくても、こうして「勉強にだけ使うものではなくて、学校のいろいろな場面で使う、学校での仲間だよ」と伝えていくのは大事だと思います。

 続いて、「タブレットは学校からの連絡を知るためのものでもある」と子どもたちに伝えます。戸田第一小学校では、Googleクラスルームを使って事務連絡を行っているので、「タブレットに学校からのお知らせが来る」ということを1年生にしっかり伝えることは大事です。
 学校でみんなで使うのはこの日がはじめてですが、あらかじめパスワードは子どもたちに伝えてあって、家で保護者と練習してきてもらっていたそうです。子どもたちはすでにChromebookを家に持ち帰っていて、学校からの連絡を保護者の方と一緒に見ている子たちも多く、「もってくるものは何かな?」ということなどをタブレットを見ればわかることを体験していました。

 ここで、スライドに「ツイツイ」という名前の悪そうなキャラクターが登場しました。「ついつい、おもしろい動画を見ちゃおう…とか思っちゃうかもしれないよね」と石塚先生が言うと、子どもたちは「ダメ!」と言います。動画は見ちゃいけないということを、この時点でわかっている子が多いのだな、と驚きました(お兄ちゃんやお姉ちゃんが戸田第一小学校に通っている子も多いのかもしれません)。
 もちろん、一律にどんな動画であろうと見てはいけないというわけではないので、子どもたちへの言葉としては、「(授業中に、あるいは、何かをしなくてはいけないのに)ついつい見たくなっちゃうとき」という言い方をしているのだと思います。細かいところですが、学習に動画を使うこともあるので、こうした伝え方の工夫は大事です。

 動画を見てしまう以外にも、たくさんの「ついつい」があることは、先生方も上級生を見ていてわかっています。そこで、「ツイツイ」が出てきてしまったときにどうすればいいのかを考えるために、スライドに戸田第一小学校のキャラクター「ハッピーパンダマン」を登場させて、「それは じぶんの まなびかな?」と質問させていました。
 子どもたちが「ついつい」何かをしたくなるときに、「これは自分の学びになっているかな?」と自分で向き合えるようになってほしい、という先生方からのメッセージだと思いました。
 1年生のときにこれがすぐできるようになるかというと、なかなか難しいのですが、でも伝え続けていくことは大事だと思います。学年が上がっても「ついつい」何かをしたくなることはなくならないと思います。そのときに「1年生のときから言われてるな…」と、この指導が子どもたちの中に残り続けたらいいと思います。これはタブレットの活用だけでなく、生活指導的な面などでも同じことで、こうしたことは小学校ではたくさんあるだろうと思います。

 こうしてタブレットを自分の学びに使ってほしい、という話をしてから、先生方からのお願いごととして、タブレットを大切に使うことを伝えていました。
 具体的な例として、「たたかない」「なげない」「ふまない」の3つがスライドで提示されていました。タブレットを床に置いておいたら踏んでしまって壊れてしまうことなど例を挙げながら説明をして、改めて「たいせつにつかおう」ということを伝えます。

 この日の「タブレット開き」の授業の中でいちばん印象的だったのは、最後に「なんのために つかっているか どうして そうなのか おはなしができるように しよう」と子どもたちに伝えていたことでした。
 これも1年生にはまだピンと来ないと思いますが、1年生がタブレットを使い始めるこのタイミングで伝えることにすごく意味があると思います。
 この言葉があれば、1年生に限らずどの学年の子どもでも、タブレットで何かしでかしてしまったときに、頭ごなしに「タブレットは禁止にします」と先生が言うのではなく、「何のために使っているの?」「どうしてそうしようとしたの?」と声をかける方針となると思います。この言葉は、子どもたちへのメッセージでもあり、校内で先生方で共有することで指導の方針にもなるように思いました。

タブレットは、「失敗しても大丈夫」と伝える

 ここで、石塚先生に「タブレットの先生に今日は来てもらっています」と紹介してもらって、僕も少し話をさせてもらいました。
 僕が「タブレット開き」で子どもたちにいちばん伝えたかったことは、「失敗しても大丈夫だから、どんどん使ってね」ということです。「タブレット開き」から続くしばらくの間、子どもたちははじめてのことをたくさんします。その時期に、「失敗しても大丈夫だよ」というメッセージはとても大事だと思っています。
 子どもたちには「僕がタブレットでいちばん好きなことは、失敗しても大丈夫なことです。ハサミで紙を切って失敗しちゃったら、もう戻らないでしょう?クレヨンでお絵かきしてても、塗るのを失敗したら、もう戻らないでしょう?でも、パソコンでは失敗しちゃっても大丈夫なんだよ。すぐ元に戻せるよ。すごくない?」と言いながら、ロイロノート・スクールで絵を描いて、わざと失敗して「元に戻す」ボタンで元に戻してやり直せるところを見せました。「ほら、元に戻せるでしょ?だから、失敗しても大丈夫です。壊れたりもしません。タブレットをいろいろな勉強に使ってください」と伝えて説明を終えました。

教室でタブレットを使う練習をする

 授業の後半では多目的室から教室に戻って、クラスごとにChromebookを使う練習をしました。石塚先生の担任する1年3組では、Chromebookを机の上に出す練習から始めます。

 最初は、子どもたちが机の中からトレーを引き出して、Chromebookを机の上に出して、その後でしまう練習です。トレーの中にはノートや教科書も入っているので、すぐに取り出すのは少し大変です。石塚先生は「ギュギュギュはなしですよ」と言います。1年生の最初は、こうして時間をかけて練習をする必要があると思います。

 その後、タブレットをゆっくり開く練習と閉じる練習をします。さっき「大切に扱って」と説明を聞いたばかりなので、みんな丁寧にタブレットを開けていました。

 何度か開閉を練習したら、ログインの練習をします。パスワードはすでに子どもたちに伝えてあって、家で保護者と練習してきてもらっているので、石塚先生は「お家で練習してきた、パスワードを入れてみよう」と言います。子どもたちはがんばって自分のパスワードを入力していきました。

 「タブレット開き」の授業は、ここまでで終了です。タブレットをどんなふうに使うのかを聞いて、机の中からタブレットを丁寧に出す練習をして、ログインするところまで進められました。

 この後の授業の時間で、クラスによってロイロノート・スクールを開いてお絵かきをしたり、電子書籍読み放題サービス「Yomokka!」にログインして本を読んだり、それぞれタブレットに親しむ時間をとっていました。

 最初にルールを明確に伝えて、子どもたちと先生の間、各クラスの先生の間で共有することが大事だと思います。
 また、タブレットの出し入れやログインなどは急にできるようになるわけではないので、時間をかけて取り組むことが必要だと思います。1年生の最初の時期は、授業の準備や給食の配膳、教室の掃除など、それまでできなかったことをできるようになっていくための時間をたくさん取っていると思います。それと同列に、タブレットを扱う時間として確保することが必要だと思います。

 「タブレット開き」から、そのあとの練習する時間までをしっかりとりながら、絵を描いたり本を読んだり、子どもたちがタブレットを使って楽しい時間を過ごせるようになれば、日常的に使うことへ繋がっていくだろうなと感じました。

(為田)