教育ICTリサーチ ブログ

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渋谷区立原宿外苑中学校 授業レポート(2025年7月16日)

 2025年7月16日に渋谷区立原宿外苑中学校を訪問し、森静香 先生が担当する3年生の英語の授業を参観させていただきました。
 ホワイトボードの右側に「ライティングテスト」「リスニング」「ELSA」「Unit3 Review 単語発音or音読」「夏休みHWについて」と、この日の授業で行う活動が並べて書かれていました。また、ホワイトボードの中央には「ライティングテストで1文でも多く書く」「ELSAで発音をチェックして総合70%以上」と、この日の授業の2つのゴールが書かれていました。2つのゴールのどちらにも数値が入っていて、生徒たちが達成できたかを自分で評価しやすいようになっていました。

 授業の最初に「SDGsの項目の中から1つ選び、自分の考えを40語以上~50語程度で書きなさい」という課題で、ライティングテストが行われました。
 事前にライティングテストの準備用プリントを生徒たちに配布してあって、テストと同じ課題で生徒たちは文章を書く練習をしています。準備用プリントには「家庭学習で誤字や文法ミスなどを確認し、十分練習してから当日のテストに臨むこと」と書かれています。生徒たちは事前に一度書いて、自分で見直しチェックをした文章を、ライティングテストの直前まで見直していました。

 準備用プリントをしまってから、森先生がライティングテストの用紙を配って、10分間のライティングテストが始まります。テストを始めると同時に、電子黒板に映しているストップウォッチをスタートさせます。
 テスト用紙の下部にはルーブリックが載せてあります。「思考・判断・表現」の領域でA評価をとるためには、「SDGsの1項目について、適切な文構成を考え、<it is ~ for to …>の形式を用い、相手意識を持って書いている」ことが求められているとわかるようになっているので、生徒たちはルーブリックを見ながらライティングテストに取り組みます。

 残り時間が4分くらいになったところで、森先生は「見直して抜けているところがあれば、矢印とかで追記もOKです」と言っていました。プリントに手書きだと、どうしても単語が抜けていたりするときには手直ししにくいですが、矢印などを使って追記をしてもいい、というふうにルールが設定されているのはよいことだと思います。
 一度自分で書いた英文に追記をするのは、アナログよりもデジタルを活用するほうが生徒たちにはやりやすいのですが、自動スペルチェック機能が働いてしまうし、タイピングのスピードが遅いことがネックになる学校もあると思うので、まだライティングテストをWordやGoogleドキュメントを使って実施している学校はそんなに多くないと思います。ただ、ライティングについては、これからどのように授業の中にICTが取り入れられていくのか、個人的に関心をもっているところです。

 ライティングテストの後で、森先生は教科書の巻末にある「学習をふり返ろう ―CAN-DOリスト―」を開いて、そのなかから「書くこと」の中学3年の目標を紹介していました。
 「“社会で起きていることなどについて伝えるために、日本や世界が抱える問題について、具体例や自分の経験などを加えてまとまりのある文章を書くことができる”と書かれています。だから、今回のライティングテストをやってみました。難しいとは思いますが、中3で求められている力だと思いますので、またやりましょう」と生徒たちに伝えていました。ひとつひとつの課題ではなくて、中学校3年生の英語での大きな目標設定を生徒たちと言葉にして共有するのはいいことだと感じました。

 続いて、「リスニング」に取り組みます。森先生は電子黒板で副教材『NEW LISTENING PLUS』の英語音声データを再生して、みんなで必要な情報を聴き取り、概要・要点を捉える活動をします。この日は、ラジオインタビューを聴きながらディクテーションをしました。

 続いて、「ELSA」のパートに入ります。生徒たちにこの日の授業のゴールを再確認するために、森先生が「やってほしいのは発音チェック 総合70%以上です」と言うと、生徒たちはSurface Go 2でAI英会話支援サービス「ELSA Schools」を起動して、読みの練習に取り組みます。
 これまでの授業で使っていたUnit 3の学習セットを使って復習します。ELSAで単語の発音を練習するときには、再生スピードを変えることができるので、ゆっくり再生して聴き直している生徒もいます。目標である「発音チェック 総合70%以上」を目指して、自分の習熟度に合わせて、自分のペースで学習をしていました。その結果として、この日の授業では、多くの生徒たちが「発音チェック 総合70%以上」というゴールを達成できていました。

 次に、森先生は指導者用デジタル教科書でフラッシュカードを電子黒板に映して、単語の発音をみんなで確認していきます。森先生は「ELSAで発音していたように、発音してみてください」と言って、英語の発音を意識する言葉かけを何度もします。
 ecosystemが表示されたときに、森先生が「エコシステムって言ってなかったね」と言うと、生徒から「イーコだった!」と返ってきていました。「そう、ecosystemは、“イーコシステム”という感じで発音しますね」と言っていました。発音の練習のときに、「ELSAでの練習と同じように発音してほしい」という声かけが森先生からされることは、とても大事なポイントだと思います。一人ひとりで練習できるのはELSAのような教材を使っている利点ですが、逆に一人ひとりにどう学んでほしいかを伝える場面が減ってしまうこともあると思います。

 授業の最後に、夏休みの宿題について紹介をしました。印象に残ったのは、「オンライン英会話にチャレンジしてみましょう」という宿題があったことでした。渋谷区の中学校では、レアジョブ英会話を導入しています。学校で一度ログインができるかを確認して、夏休みに各家庭でチャレンジをしてもらうことになっていました。
 ELSAで一人ひとりが自分にあった形で発音の練習をして、その成果をオンライン英会話で試すことができる、というふうになっているのは、ICTを活用した英語の授業としてすごくよく設計されているなと感じました。

(為田)