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柏市立大津ケ丘第一小学校 授業レポート No.3(2024年12月9日)

 2024年12月9日に柏市立大津ケ丘第一小学校を訪問し、小林郁和 先生が担当する6年1組の算数「並べ方と組み合わせ方」の授業を参観させていただきました。
 授業の最初に小林先生は、デジタル教科書をプロジェクタで映して、前時までに学習してきた、アイスクリームショップで5種類のメニューから2種類を選ぶ問題を復習しました。

 前時の学習をふりかえったら、Googleスプレッドシートで作られた「並べ方と組み合わせ方 学習計画」をプロジェクタで映して、クラスみんなでスケジュールを確認します。
 単元「並べ方と組み合わせ方」は全8回の授業で、「まとめ・探究」と「ワークテスト」も含めた7つのステップに取り組んでもらうことがわかるようになっています。スケジュールを見ると、それぞれのステップで取り組む教科書のページ数と問題が書かれています。また、それぞれの問題の解答もリンクで飛べるようになっているので、自分で学習を進めていくことができます。解答は自分で学習を進めるために見られますが、最後のチェックは小林先生がすることになっているので、問題を解いたら小林先生を呼んでチェックしてもらいます。
 この日の授業で、どのステップに取り組むのかを確認して、「今日はここまでやってみよう」というのをクラス全員で確認するために、「並べ方と組み合わせ方 学習計画」が共有されています。

 スプレッドシートで学習計画が子どもたちに共有されているだけでなく、クラスのGoogleクラスルームでは、ルーブリックと学習の流れが公開されていました。

【ルーブリック】

  • A: 並べ方と組み合わせ方を自分たちで見分けて、何通りかを正しく求めることができる。
  • B: 並べ方と組み合わせ方を助けを借りながら見分けて、何通りかを求めることができる。
  • C: 並べ方と組み合わせ方を助けを借りながら見分けて求めようとしている。

【学習の流れ】

  1. 先生のレクチャー<情報の収集>
  2. スプレッドシートに学び方の入力<課題の設定>
  3. スプレッドシート「学習計画」に沿って進める<整理・分析>
  4. 先生チェックはP183△1、いかしてみよう<まとめ・表現>
  5. <終わった人へ>
    • 練習問題で確認
      =計算ドリル
    • わかったか心配な人は確認
      =動画「とある男が授業をしてみた」「eboard」URLもスプレッドシートにあり
    • 発展
      =教科書補充問題、オンラインプリント
    • 探究
      =問題づくり(Kahoot!可)、AI、予習復習&欠席者向け動画制作
    • 中学受験問題
  6. スプレッドシートにふりかえり<振り返り・改善>

 子どもたちは、学習の流れを見ながら自分たちで課題を設定して、学習計画に沿って学習を始めます。また、終わった人に向けても次にすることを選べるように提示してあるのもいいと思いました。
 一人で学習する子も、友達と二人あるいはグループで学習する子もいました。「並べ方と組み合わせ方 学習計画」と、学習の流れとルーブリックが公開されているので、それらに沿って「どう学習するか」については、子どもたちに委ねられています。

 最終チェックは小林先生から受けなくてはいけないので、問題が解けた子は小林先生のところへ行ったり、教室を回ってきた小林先生に声をかけたりして、丸つけをしてもらっていました。
 小林先生も丸つけをしながら子どもたちのノートを確認して、「大丈夫?わかってきた?」と声をかけて回っていました。自由進度学習だからといって、すべてを子どもたちに委ねているわけではなく、きちんと学べているかを見とる先生の存在は変わらず重要だと思いました。

 指導者用デジタル教科書の単元「並べ方と組み合わせ方」のページからアクセスできるシミュレーション教材を使うと、レストランのメニューの組み合わせを考える問題を、メニューの写真をいくつでも使って樹形図を作ることができます。授業では、こうしたコンテンツも使いながら問題に取り組んでいました。
 こうしてメニューの写真を実際に動かして組み合わせを作りながら、どう考えるかを理解していくことは重要ですが、メニューの写真を必要な人数分作って配布してやってもらうのは大変です。デジタル教科書を活用することで、これまでは準備が大変だったこうした活動を簡単に実現することができます。

 最初に小林先生が映して見せていた「並べ方と組み合わせ方 学習計画」のスプレッドシートは、子どもたちにとって学習の進捗を確認するときに立ち返る場所になっていました。自由進度学習で自分で学ぶ授業になると、どこを学べばいいのかがわからなくなってしないがちですが、「並べ方と組み合わせ方 学習計画」のスプレッドシートには、さまざまなコンテンツへのリンクが貼られているので、どこを見たらいいのかが子どもたちにわかるようになっています。

 学習計画に示された問題が終わった子たちは、<終わった人へ>に書かれていた課題に取り組んでいました。Canvaで問題づくりをしていたり、動画制作をしていたり、自分で何を学習するかを決めていました。

 最後に、この日の授業のふりかえりをします。「並べ方と組み合わせ方 学習計画」のスプレッドシートには、授業の日付ごとにシートが作られていました。日付のシートには、クラス全員の名前と、その横に取り組んだ「学習方法」「ルーブリック」「ふりかえりコメント」を書く欄が用意されています。

 子どもたちは、この日の日付のシートを選んで授業のふりかえりを書いていきます。
「学習方法」の項目では、「一人で」学習したのか「友達と」学習したのかを選択して回答します。
「ルーブリック」の項目では、小林先生から共有されているルーブリックに基づいて「A」「B」「C」のいずれかを自己評価としてスプレッドシートのプルダウンで選択する形になっています。なお、意欲の高い子が自ら「S」という評価を作成していて、それを選択している子もいました。この「S」を選択する動きは小林先生からの提示ではありませんが、子どもたちが主体的にさらに上を目指して努力する姿勢を示しており、良い傾向だと小林先生は捉えているそうです。
 最後の「ふりかえりコメント」では、「難しい問題も樹形図を使って解くことができました。しっかり問題を見て問題に合った答えを出したいと思います。」「今日は全部一人で解けたし全問正解だったのでよかったです。問題が解き終わって動画を見たらさらに理解できたのでS」「今日は「たしかめよう」の問題まで進められたので、Aです。後半は計ドと動画づくりをやりました。」「先生チェックはできたけど、樹形図が書けてなかった。復習します。」というふうに、算数の問題内容や学び方についてコメントがされていました。
 また、「今日は、先生チェックなどはすぐに終わったけど友達と必要のない話をしていたので次からは、気をつけたいです。最後は動画づくりをしていました。」と、ふりかえりを書いている子がいて、小林先生は、「先生も気になってました。いろんなことを次につなげていきましょう」と言っていました。

 「並べ方と組み合わせ方 学習計画」のスプレッドシートを基盤として、子どもたちが学習を進めていくスタイルが印象的な授業でした。

(為田)