山口周 さんと長濱ねる さんの共著『未来を照らすコトバ ビジネスと人生、さらには社会を変える51のキーワード』を読みました。この本は、毎週土曜日にJ-WAVEで放送している「NTT Group BIBLIOTHECA ~ The Weekend Library ~」の番組内容をまとめた本です。僕はこの番組が大好きで、毎週欠かさず聴いているのですが、毎週1つキーワードが取り上げて、キーワードに関連する参考書籍が紹介されるのです。
2022年4月からスタートした番組の中で紹介されたキーワードのなかから、この本では51のキーワードが選ばれて対談が掲載されています。たくさんとった読書メモの一部を共有したいと思います。
キャリア・アンカー
参考書籍は、エドガー・H・シャイン『キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう』です。キャリア・アンカーとは、「自分のキャリアにおいて必ず戻ってきてしまうある種の軸のようなもの」(p.92)だそうです。
山口 調べると、キャリア・アンカーには八つのタイプがあることがわかりました。
- 専門・職能別コンピタンス 専門家として独り立ちしたい、能力を発揮したい
- 全般管理コンピタンス 会社で偉くなりたい
- 自律・独立 人に管理されるのではなく、自分で管理したい、自立したい
- 保障・安定 何より安全性や保障、安定性が大事
- 起業家的創造性 起業家的な挑戦をしていきたい
- 奉仕・社会貢献 社会貢献していきたい、社会に奉仕していきたい
- 純粋な挑戦 とにかく難しいことをやりたい。問題の種類は何でも良い
- 生活様式 仕事とプライベートは分けて、プライベートを重視したい
(p.94)
キャリアに何を求めるのかは人それぞれです。キャリア教育の授業とかで、「ここに挙げられている8つのタイプ、自分のキャリア・アンカーのタイプはどれだろう」、と考えてみるのもいいな、と思いました。
適応戦略
参考書籍はティム・ハーフォード『Adapt 適応戦略 優秀な組織ではなく、適応する組織が生き残る』です。このキーワードに関連して、「失敗」ということをリフレーミングすることが大事なのだ、と言うのが書かれていたのですが、この考え方を子どもたちに伝えたいな、と思いました。
山口 物事がうまくいかないことを、私たちは「失敗」と考えがちなのですが、元々の計画自体が仮説に基づいているので、それがうまくいかなかったとしても「想定した仮説の誤りが検証された」という風にポジティブに考えればいいわけです。(p.118)
弱いつながり
「弱いつながり」「弱い紐帯」というキーワードは、僕自身すごく興味をもっています。参考書籍は、マーク・S・グラノヴェター『リーディングスネットワーク論 家族・コミュニティ・社会関係資本』です。
山口 「弱い紐帯の強さ」の筆者グラノヴェターが(「弱いつながり」の例として)挙げているのは、「友達の友達」や「何かの機会に知り合った人」などです。何をもって強いとするか弱いとするか、彼は判断の基準を出していて、これが結構面白いんです。
- 一緒に過ごした時間の量
- 情緒的な強度
- 親密さ(もっとわかりやすく言うと、秘密を打ち明けられるかどうか)
- 助け合いをしている程度
(p.139)
仕事をしていると、「弱いつながり」の人が助けてくれたことは何度もあります。そういう経験もあって、「弱い紐帯の強さ」というのをちょっと信じているところがあります。そうした経験を子どもたちもできたらいいな、と思っています。SNSにはいろいろ問題もあるけれど、「弱いつながり」を維持するのにSNSは役立っている、ということも書かれていました。
山口 弱いつながりって、昔はそんなに維持できなかったですよね。つながりの強さを縦軸に、人数を横軸にとると、横がすごく短いショートテールだった。でも、ネットはつながりの「ロングテール」を作ってくれている気がします。一年に一回くらいしかやり取りしないけれど、SNSで2000人くらいつながっているみたいな。「完全に切れてしまうか、ものすごく強いつながりか」という両極端ではなく、その間の「弱いつながりのゾーン」がすごく広がっている気がしますね。(p.143)
ライフマネジメント・ストラテジー
ライフマネジメント・ストラテジーの参考書籍は、山口周さんの自著 『人生の経営戦略 自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』でした。
山口 マッキンゼーというコンサルティング会社の中興の祖であるマービン・バウアーが「ウィル・トゥ・マネージ=Will to manage」ということを言っています。つまり「経営意思」ですね。なりゆき任せや他人のせいにしない、何があろうと主体的に関わって「とにかく何とかする」という気持ちでやっていく、そういう態度が経営者には必要だということです。(p.148)
わかる、この「何があろうと主体的に関わって「とにかく何とかする」という気持ち」をもつ人を増やしたいと思います。経営者にはもちろんだけど、自分の人生の舵をとるには、絶対に必要だと思っているのです。そのために必要なものがそのあとに書かれていました。
山口 「世の中がどうなっているか」という地図と「自分が何を求めているのか」というコンパス。経営や人生という冒険には、じつはその両方が不可欠なのです。(p.153)
そう、地図とコンパスと両方いるんですよね。すごくいいことが書かれていると思いました。ここ、授業で子どもたちにいつか言いたい。
リ・シンク
参考書籍は、アダム・グラント『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』です。たぶんこの回をラジオで聴いていて、上原専禄 先生の話がとても印象的で、SNSだったか何かに書いたような気がするのですが、見つけられなかった…(Xの検索機能、マジでわけわかんなくなっているのを実感しました…)。
山口 私は一橋大学の学長にまでなった阿部謹也という歴史家が好きで、全集まで買ってしまいました。その阿部先生の恩師は上原専禄。ゼミで阿部先生が発表をすると、上原専禄はいつも「それで何がわかったんですか?」という質問をしたのだそうです。
「中世の人はこういうものを食べていた」とか「身分制度はこうなっていました」とか発表するんですが、いつも「それで何がわかったんですか?」と聞かれる。何度も「それで何がわかったんですか」という言葉を聞いているうちに、阿部さんはだんだん「わかる」ということが「わからなく」なってきたそうです。それである日、聞いたんです。
「先生、わかるってどういうことですか?」
上原専禄は答えたそうです。
「わかるというのは、それによって自分が変わるということです」
「知識が入る」とか「何かを理解できた」とかではなく、「その瞬間に以前の自分ではなくなる」ことが本当の意味で「わかる」ということ。歴史は、知識や何かのノウハウを得るため学ぶのではなくて、「自分が変わる」ために学ぶものだ。それが、上原専禄の考え方だったんですね。そして、それは「リ・シンク」の考え方でもあります。長濱 確かに勉強は「知識を得る」ことで止まっているし、ニュースも「時事問題に触れる」だけですね。それによって自分の生活や人格、行動が変わるのか。そういうことは、あまり考えたことがなかったです。(p.245-246)
「わかるというのは、それによって自分が変わるということです」っていう上原専禄 先生の考え方がすごく好きです。これも、いつか教室で子どもたちに言いたいと思っています。
集団浅慮
参考図書は、アーヴィング・L・ジャニス『集団浅慮 政策決定と大失敗の心理学的研究』です。ジョン・F・ケネディとそのドリームチームの優秀な人たちがやらかした「ピッグス湾事件」を見たジャニスが、「なんで賢い人が集まっているのに、ここまでバカなことをやるのか?」という疑問から研究を始めたそうです。
山口 ジャニスは、「賢い人たちが集まってアホな意思決定をする時」には、いくつかパターンがあるといいます。
一つ目は、みんなで空気を読んで対立意見を言うことが許されない状況になること。さっきの話で言うと、CIAが「大丈夫です、うまくいきます。素人は黙ってください」と言うのに対して、みんな黙っちゃう状況ですね。相手が「やりたい」と言っていることに対して水を差すようなことを言ってはいけない、という感じになると集団浅慮が発生する。
二つ目が、外部から「どんな議論をしているの?」というチェックができなくなること。三つ目が「早く決めたがる」こと。検討そのものがストレスになっていて、早く決めてこのプロセスから解放されたい、そう思うことで熟慮することなく決めてしまうようになる。最後の四つ目、これが意外なんですけど「リーダーシップがありすぎる」ことだと。リーダーシップが過剰になると、周りの人がリーダーに同調するようになって意見の多様性がなくなるんですね。
ケネディは当時、本当に愛されていました。だから「ケネディに反対したくない」「嫌われたくない」と、みんな思っていた。その結果、2000人のゲリラ全員が、捕虜になったり殺害されたりという惨事が起きてしまったのです。(p.366-367)
「なんで賢い人が集まっているのに、ここまでバカなことをやるのか?」という疑問は、たしかに社会で感じることがあります。チームで何かをやるときに、集団浅慮の理由を知っておくことは役に立ちそうだと思いました。
感想
番組が好きすぎて、対談部分を読んでいると、ラジオで聴いている声で勝手に対談が再生されます。とにかく、参考書籍を読みたい、と思う回が本当に多いラジオなんです。もちろん、あんまり興味のないキーワードな週もありますが、それはそれで「自分では絶対に手に取らない本」に出会う良い機会になっています。
授業で言いたい言葉、研修で言いたい言葉、カリキュラムを設計するときに意識したい言葉など、たくさん見つけられました。
(為田)






