10月25日の第67回情報コミュニケーション教育研究会(ICTE)情報教育セミナー IN 東北にて、玉川学園高等部 登本洋子先生によるワークショップ「Officeソフトを活用した問題解決型実習の体験」を拝見しました。ワークショップのメモを公開いたします。
なぜMicrosoft Officeか
最初に、登本先生から、玉川学園高等部での情報教育について、ご説明をいただきました。「Microsoft Officeを指導する」という今回のテーマについても紹介がありました。
- 情報教育にすべての要素が入っていると思っている。
- 「Microsoft Officeを指導する」というタイトルの理由
- あまりExcelやWordに特化する情報教育は良くない、と思う。
- が、大学に入って最低限使えないとだめ。
- だから、ただ技術として教えるのではない方法で、授業で教えている。
- データだけでなく、コミュニケーション力、論理的思考力が必要。だから、グループ学習でやっている。
- 玉川学園では、マイクロソフトオフィススペシャリスト取得を目指している。
- 明確な目標ともなるので、取り組みやすい。
- Word Excelだけでなく、幅広く内容をカバーしている教科書の内容に基づいて授業。
- 高3、選択A群に「オフィス」という授業がある(4単位)
- 最初にキータッチをする
最初にキータッチの練習から入る、というのは実は非常に大切ではないかと思っています。しっかりツールとしてPCを使いこなすには、ある程度キーボードの入力スピードが必要だと思います。Wordで文章を入力する際には、キーボードの入力スピード=思考の出力スピードになります。したがって、キーボードの入力スピードが上がらないと、思考のスピードと差が出てしまうからです。
ワークショップ体験
続いて、ワークショップ体験です。参加者の先生方は全員参加で取り組みました。
- 先生方のグループワーク
- 業界動向 SEARCH.COM で調べる
- グループに分かれて、業界を決める(居酒屋、ビール、建設、カフェなど)
- 本来は10時間くらいかけてやるもの(ですが、この日は1時間でやりました)
- ミッションは「3位の会社が業界1位になるためにどうすればいいか」。
- Wordを使って報告書を作成する
- 1位、2位(抜くべき対象)と、4位(自社が追い上げられる)の企業を分担して調べる。
- 会社概要、業績の推移、業界の動向、主力製品紹介など
- 専門用語が出てくるときには、それも検索する
- ホームページの見方(会社概要などのページ)を説明し、調査開始。
- 業績の推移については、Excelを使用、Wordに貼り付ける
- PowerPointで発表準備→発表
本来ならば10時間ほどかけてじっくりやるプロジェクトですが、今回は1時間で凝縮していたため、最後の発表まで到達できたところは少なかったのですが、どんな授業になるかは十分に体験できたのではないかな、と思います。
実際に生徒たちのリアクションなどに関して、登本先生のコメントを紹介します。
- ゲームっぽくて楽しんでできる。
- 3位だと、上を目指したいと思える。
- グループの中で、分担ができることでサボれない。
- 仮にサボるのがいても、それは社会と同じ。
- Excelデータを、リアルなものを使うことで、動機づけさせるのは大賛成。
- 加工したい、PDFでしか発表されていない、とか、いろいろと見えることが変わってきそう。
実際の10時間での授業の流れについてもご説明いただきました。
- 授業の流れ
- Wordで報告書を作成
- この授業の前に、Word, Excel, PowerPointについて、基本操作は終了している。
- Excelで業績推移をまとめる
- 桁区切り、グラフ化→Word, PowerPointへ貼り付け。
- グループでやる
- 参加できない子もいるが、必ず参加できるように、企業研究を割り振る。
- 一方で、「誰かがどうしてもできなくても、なんとかなる」
- やっていくなかで、操作を文脈の中に入れる
- これが最後の情報の授業になる生徒もいる。
- 体験してみての感想(仙台清陵中等教育学校 上杉先生)
- この会社、知っているだろうか?というのもある。
- 業種を選ぶ時に、生徒は興味のあるところを選ぶ。
- ホールディングスとしての数字と、子会社の数字が混ざることもある。
- 前年度の生徒作品を見せている。また、最低限入れて欲しい情報については指示をしている。
グループワークでこうしたプロジェクトをするときに、「誰かがどうしてもできなくても、なんとかなる」という状況にしておくことは、非常に大切だと思います。グループでやるからこその責任感もありつつ、どうしてもできない失敗も体験できて、「次はこうしよう」と振り返りができる、というのは、教室という場所で体験しておくべきことだと思います。
また、前年度の生徒作品を見せることで、「昨年よりも詳しく調べよう!」というモチベーションも上がるとともに、毎年実績が積み上がっていくのではないかと思いました。ぜひ、実際に生徒たちが取り組んでいる授業も見学させていただこうと思いました。
(為田)