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東京書籍 『NEW HORIZON English Course』 学習者用デジタル教科書 体験&授業づくりワークショップ レポート(2024年12月26日)

 2024年12月26日にTOPPAN小石川本社ビルにて、東京書籍株式会社と弊社フューチャーインスティテュートで学習者用デジタル教科書 体験&授業づくりワークショップを開催しました。全国の学校で特に活用が進んでいる教科である、小学校算数と中学校英語の二部構成で行ったワークショップのうち、中学校英語のワークショップの様子をレポートします。

 現在、英語の学習者用デジタル教科書は全小学校・中学校に無償提供されていますが、あまり使ったことがないという先生もいらっしゃるのが現状なので、最初に、東京書籍 DX企画部の清遠和弘さんから、『NEW HORIZON English Course』の学習者用デジタル教科書の機能と、学習者用デジタル教科書を活用した授業の例を紹介してもらいました。
 学習者用デジタル教科書の2つのページを同時に見比べられる2画面機能を活用している様子や、学習者用デジタル教科書で教科書に書かれている英文音声を何度も再生して聴いて、Googleドキュメントの音声入力ツールを使って発音練習をしている授業を紹介してもらいました。
 その他にも、音読練習、新出単語の意味の確認、わからなかった単語・重要語句の確認、ドリルの活用などの例も紹介してもらいました。僕はもちろんデジタル教科書がなかった頃に中学校で英語を学んでいました。紙の教科書とCDラジカセで先生は教えてくれていたのですが、デジタル教科書のいろいろなデジタル教材コンテンツがあったなら、あの頃の授業はどんなだったか、自分の英語の勉強の仕方はどう違っただろうか、と考えながら話を聴いていました。

 学習者用デジタル教科書の機能紹介と授業事例紹介が終わったところで、参加してくださった先生方にIDとパスワードを配布します。この日のワークショップには、先生方に端末を持ってきていただいていたので、自分の端末で学習者用デジタル教科書にログインしてもらって、好きな学年で自由に学習者用デジタル教科書を使ってもらいました。
 参加者のテーブルごとに「こんなコンテンツがあった」と情報交換もしてもらうために、学習者用デジタル教科書を自由に使ってもらう時間を多く取りました。また、会場には東京書籍の教科書を編集している方も、デジタル教科書を制作している方もいらっしゃったので、その場でプロフェッショナルな意見を先生方とやりとりすることもできていました。

 自由に学習者用デジタル教科書を使ってみてもらった後で、学習者デジタル教科書についての意見を、Padletで共有してもらいました。「授業アイデア」「イチオシ機能」「質問」「改善アイデア」の4つの観点を色分けして、それぞれのカードに書いて貼ってもらいました。参加してくださった先生方からいただいたコメントを一部転載します。

「授業アイデア」

  • 新出単語:デジタル教科書で生徒自身が個別で新出単語を確認できるのは画期的だと思います。
  • グループワークで競わせながら英文で回答する活動:Googleクラスルームのmeetでチャット欄に答えの英文を送信させる。最初に投稿した生徒の回答をヒントにして答えにチャレンジできるため、英文を作ることが苦手な生徒もチャレンジしやすい。
  • デジタル教科書+タブドリライブ:中2なのに休み時間YouTubeではなくタブドリを使っている。。。これは驚異的です。文法動画も見れるし、ワークいらず。

「イチオシ機能」

  • 拡大&書き込み機能:教科書に書き込みができる。間違っても消せる。ガンガン書き込める。
  • Dictationをレベル別で:(1)マスク機能を使う (2)再生速度を変える (3)文字の見やすさを変える

「質問」

  • いま、全員で聞かせているものを個別で生徒に聞かせることができますか?
  • 文法を自分で練習できるようにするための機能はありますか?
  • 学習者用デジタル教科書内で、指導者用のフラッシュカードのように使用することはできますか?
  • 辞書指導をどのようにしているのか、アイデアがあれば共有していただきたいです

 Padletに書かれたイチオシ機能を見て、「あ、それ見てみよう」というふうに新しいデジタル教材コンテンツに出会うこともありますし、「授業アイデア」が共有されることで授業での活用までイメージできるのもいいと思います。
 教科担任制をとっている中学校の先生方向けのワークショップでは、「こういうふうに授業で使っている」「この機能は使えるだろうか?」と専門性の高いディスカッションがされていたように感じました。

 Padletには質問も多く書き込まれていたので、いくつかを取り上げて、東京書籍の皆さんから「こういう機能がありますよ」と実際に学習者用デジタル教科書の画面を見ながら解説をしてもらいました。その解説に追加して、「先生方の勤務校ではどうされていますか?」と個別に状況を聴くこともできました。 いちばん印象的だったのは、「辞書指導をどのようにしていますか」という書き込みについて、参加者の先生方と行ったディスカッションです。デジタルが普及することによって、辞書指導の時間は減りつつあるということや、インターネットを辞書として使うことのメリットとデメリットなど、日々英語の授業を担当されているからこその経験をもとに意見交換ができたように思います。
 主催者側からデジタル教科書の機能を一方通行で紹介するのではなく、実際に授業ではどうなのかということをディスカッションできたのがよかったと思っています。

 ワークショップのなかで清遠さんから、英語の学習者用デジタル教科書の活用を研究した「学習者用デジタル教科書の学習履歴データの活用に向けた共同実証研究」についての報告もありました。学習者用デジタル教科書の操作ログなどを分析した成果なのですが、こうした研究成果がオープンになることはとても重要だと思います。(参考資料:「学習者用デジタル教科書の学習履歴データの活用に向けた共同実証研究」成果報告会レポート まとめ(2024年2月19日)

 こうしたワークショップを通じて、学習者用デジタル教科書を活用した授業アイデアがどんどん広がっていき、子どもたちの英語の学び方の選択肢が広がればいいなと思います。

 小学校算数『新しい算数』のワークショップ レポートはこちらです。
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(為田)