教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア #01: フォントを使い分けて、情報を伝わりやすくする

 フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。
この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。

 今回紹介するのは、印刷物やスライドを作る際に、用途に合ったフォントを選ぶことで、より情報が伝わりやすくなることを紹介します。
 授業で使う教材作りでパソコンでプリントを作成したり、スライドを作成したり、保護者向けのお知らせを作成したり、職員会議で使う資料を用意したり、学校説明会用の資料やスライドを作成したり、授業内だけでなくさまざまなところで、先生方は資料を作成されていると思いますが、フォントの特徴を理解して、用途に合わせてフォントを選べば、より伝わりやすい資料を作成することができると思います。

フォントの大まかな種類

 フォントには、和文(日本語)用と欧文(英文など)用の2種類に、それぞれセリフ(飾り)があるかないかで大きく4種類に分類できます。
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日本語には和文フォント、英文には欧文フォント

 和文フォントは、日本語用にデザインされたフォントなので、英文には対応しておらず、文字同士の間(字間)がバラバラだったり、文字自体の形がきれいではなかったりして、読みづらくなってしまいます。英字や数字のときには、欧文フォントを使用するとよいでしょう。
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長文には、明朝体・セリフ体!

 日本語の長文には明朝体、英文の長文にはセリフ体が適しています。新聞や書籍、雑誌などでも、読者に読ませるような長文には、明朝体を使用していることが多いです。
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 同じ明朝体でも、太いと読みにくくなってしまいます。比較してみましょう。
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 細めの丸みのあるゴシック体を使っているものもありますが、初期搭載されているフォントで可読性のある細めのきれいなゴシック体はないので、明朝体を使用するのが無難です。
 学級通信や報告書・議事録などの長文には、細い明朝体を使用するといいでしょう。いちばん使用頻度が高いのが、MS明朝体だと思いますが、MS明朝体は太字に対応していないので、強調したいところには、ゴシック体を使ったり、色を変えたりして変化をつけるといいでしょう。または、MS明朝体を使わずにHGS明朝を使うようにしてもいいでしょう。
 Windows8.1以降(Mac OSは、10.9以降)であれば、遊明朝体というフォントが太字にも対応しているのでオススメです。ただし、OSバージョンの異なる他のコンピュータでもファイルを開く可能性がある場合は、互換性も考慮して、MS明朝体やHGS明朝を使う方がいいでしょう。

 欧文フォントは、Times New RomanやMinion Proが良いかと思います。Wordは、初期設定の規定フォントが、MS明朝体Times New Romanなので、そのままで大丈夫かと思います。

タイトル・見出しには、ゴシック体・サンセリフ

 日本語のタイトル・見出しにはゴシック体、英文のタイトル・見出しにはサンセリフ体が適しています。こちらも、新聞やビジネス本、雑誌などを見ると、ゴシック体が多く使用されているのがわかります。タイトル・見出しは、本文のリードになる必要があり、可読性よりも視認性が求められるので、パッと見で目立つゴシック体を使用するとよいでしょう。
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 ときどき明朝体が見出しで使用されているものもありますが、こちらも初期搭載されているフォントで視認性の高い太い明朝体はないので、ゴシック体を使用するのが無難です。

 タイトルや見出しではなくても、重要事項やキーワードにも、ゴシック体やサンセリフ体を使用するとよいでしょう。長文をすべて読んでほしい場合は、全文をゴシック体にすると、読みにくくなるので、「重要!」という言葉のアイコンを読ませたい文章の近くに配置したり、文章を読みたくなるようなリードの見出しをゴシック体で配置したりすれば、目立たせることができ、読みやすさも保つことができます。
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 いちばん使用頻度が高いのが、MSゴシック体だと思いますが、MSゴシック体は太字に対応していないので、HGSゴシック体を使うようにするなどして対応しましょう。Windows8.1以降(Mac OSは、10.9以降)であれば、遊ゴシック体というフォントは太字にも対応しているのでオススメです。
 ただし、OSバージョンの異なる他のコンピュータでもファイルを開く可能性がある場合は、互換性も考慮して、MSゴシック体やHGSゴシック体を使うのがいいでしょう。
 欧文フォントは、ArialやSegoe UIが良いかと思います。Wordは、初期設定の規定フォントが、MS明朝体Times New Romanなので、そのままで大丈夫かと思います。

スライドには、ゴシック体(メイリオ)・サンセリフ体(Segoe UI)

 スライドのそもそもの目的は、プレゼンの補助的な役割であり、要点を端的にわかりやすく伝えることなので、可読性よりも視認性が求められます。したがって、スライドには、ゴシック体やサンセリフ体を使用するといいでしょう。
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 和文であれば、MSゴシック体は、太字対応していないので、メイリオを使用するのをオススメします。メイリオは、Windows Vistaから搭載されているフォントです。メイリオがない場合は、HGSゴシック体を使用するとよいでしょう。Macの場合は、ヒラギノ角ゴを使っておけば間違いないです。

 欧文で、メイリオと組み合わせて使うのに相性がいいのが、Segoe UIです。多くの欧文フォントは、和文フォントに比べて小さくデザインされているので、同じフォントサイズでも、欧文の方が小さくなってしまうのですが、Segoe UIは、他の欧文フォントに比べて大きめに作られており、かつきれいなフォントなので、こちらを使用するとよいでしょう。

フォントの設定方法について

<PowerPoint2013における設定方法>

  1. リボンの「表示」タブ→「マスター表示」グループの「スライドマスタ―」をクリックして、マスター表示に切り替える
  2. リボンの「スライドマスター」タブ→「背景」グループの+「フォント」をクリックして、ドロップボックスから「フォントのカスタマイズ」をクリック
  3. 表示されたダイアログボックスにて、以下のようにフォントを設定して、パターンを保存する

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※次からは、保存したパターンを選択すれば良いので、毎回設定する必要なし


<Wordにおける設定方法>
▼規定のフォント設定

  1. リボンの「ホーム」タブ→「フォント」グループの[ダイアログボックス起動ツール]をクリックf:id:ict_in_education:20151123184024p:plain
  2. 表示されたダイアログボックスにて、例えば以下のようにフォントを設定して、[既定に設定]をクリックして、[OK]をクリックf:id:ict_in_education:20151123184047p:plain

▼見出しと本文、英数字用と日本語用と、それぞれ設定できるフォントパターン設定

  1. リボンの「デザイン」タブ→「ドキュメントの書式設定」グループの「フォント」をクリックして、ドロップボックスから「フォントのカスタマイズ」をクリック
  2. 表示されたダイアログボックスにて、例えば以下のようにフォントを設定して、パターンを保存するf:id:ict_in_education:20151123184118p:plain

※次からは、保存したパターンを選択すれば良いので、毎回設定する必要なし

クラスでの配布物をフォントを変えてみると…

 例えば、配布物を「すべて明朝体で作成」「すべてゴシック体で作成」「明朝体とゴシック体を使い分け」の3つのパターンで作ってみると、どのように変わるかを見てみましょう。

  1. すべて明朝体で作成したものf:id:ict_in_education:20151123184318p:plain
  2. すべてゴシック体で作成したものf:id:ict_in_education:20151123184349p:plain
  3. タイトルにゴシック、文章に明朝体を適用f:id:ict_in_education:20151123184452p:plain

 フォントを使い分けるだけでも、情報の伝わりやすさは変わってきますので、こうしたちょっとしたクリエイティブデザインのノウハウが、先生方の学校での仕事のお役に立てばと思います。

(前田)