この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、全8回のうちの2回目の授業についてです。
1回目のレポート内容は、こちらをご覧ください。
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協働 × データ分析、協働 × 問題発見
他者と相談・話し合うことで、分析や問題発見をより深める!
八王子高等学校の情報科の授業では、これまでも実習の授業をやってきましたが、生徒同士で話し合い、内容を刷り合わせていくということはありませんでした。そこで、前回個人個人で調べた各担当コンビニの売上数値や店舗数、1店舗あたりの売上数値などを、他のコンビニの数値と比較するために、自分が担当しているコンビニ以外の人と数値データを共有し、どういう気づきがあったのか話し合いながら、データ分析を深めました。
そして、再び担当コンビニでグループを再編成し、さまざまな視点から問題を発見できるように、データ分析をした観点(チェーン全店売上/店舗数/1店舗売上)が異なる人たちとグループを組むようにしました。
▼グループ分けの図解
このグループ編成で参考にしたのは、知識構成型ジグソー法です。
知識構成型ジグソー法 | 東京大学 CoREF
このジグソー法と、Excelを使ったデータ整合とWordによるレポート作成を合わせて、協働を通して分析と問題発見をする授業構成を考えました。
最終プレゼンのための、発表の練習となるグループ内でのミニ発表
今回の2回目の授業では、データ分析と問題発見までしかしませんが、最終的に7・8回目の授業において、クラス全体で発表をしてもらう形になります。先生方が懸念されていたのは、「クラス全体に対して発表するということに慣れていない」ということでした。「恥ずかしいから発表したくない」「緊張していつものように話せない」そういった傾向になってしまいがちということで、いきなりクラス全体で発表する前に、データ分析における自分の考え・意見を発表する場として少人数グループでのミニ発表を設けました。
目的に応じて、アプリケーションや道具を使い分ける!
これまでの八王子高等学校の情報科の授業は、主にWord、Excel、PowerPoint、InternetExplorerをアプリケーションごとに組まれた授業構成でした。Wordであれば、雑誌編集をする中で、文章入力や画像の挿入、検索置換や文字校正、レイアウト調整などをしていました。Excelであれば、ファーストフード店の都道府県別の店舗数や客単価を想定してそこから全店舗の売上数値を概算したり、音楽業界の売上の推移を大量のデータを使って、各年ごとにデータを並べ替えしたり、グラフを作成して数値ではわかりにくい推移を視覚化した上で、気づいたことをまとめたりしました。
しかし、本来ならば、データ整理・分析ならExcel、レポートをまとめるならWord、プレゼン資料をまとめるのはPowerPointというように、アプリケーションごとに学ぶというよりも、目的に応じてアプリケーションを使い分けることができるのが大切です。「目的に応じて使い分ける」ということは、アプリケーションに限らず、プリントや付箋などのアナログのツールにも言えることです。八王子の先生方からも「目的に応じて使い分ける」ようにさせたいというご要望をいただいていたので、データを見て気付いた問題点の洗い出しについては、付箋を使うようにしました。
アイデア出しにおいて重要なのはスピードです。質よりも量が優先される段階で、「え…これでいいのかな…合ってるかな…」といった迷いが出てしまうことはなるべく避けるようにしたいので、書き直しが容易であるデジタルはあまりオススメしません。また、生徒によってタイピングスキルがバラバラなので、入力スピードの遅い生徒にとっては、アイデアを思いつくスピードに、それを入力するスピードが追いつかないケースもあり得ます。もちろん、タイピングの方が速いという生徒もいると思うので、絶対付箋にすべきということもありません。実際に、仕事でアイデア出しをする際に、アナログの方がやりやすいという人もいれば、デジタルの方がいいという人もいるのが実態です。
パソコン教室での授業だから、なるべくパソコンを使うようにする必要はないので、目的や生徒のスキルに合わせて、適した道具を使うのがいいでしょう。
八王子の先生方も、クラスによって付箋でやっていたり、先生が個人的にExcelで作成されたファイルを使ってアイデア出しをしたりと、生徒の状況に合わせて使用する道具を使い分けているようです。
次回は、3回目です。今回の問題発見から問題を絞り込み、そこから改善案を発想する授業内容です。
(前田)