漢字の指導方法について、小学校の先生方に向けてアンケートをお願いしておりましたが、その集計結果をレポートします。後編では、フリーアンサーを中心にまとめます。こうして定性的な言葉をいただくと、先生方の思いが本当に多く読めて勉強になります。
漢字の指導でここの時間が足りないという部分がありましたら、教えてください。
前編で、「教えたい」と「実際に教えている」のギャップのことをレポートしましたが、その実情や理由や背景などが、この「ここの時間が足りない」という答えに含まれているのではないかと考えています。たくさんの答えをいただきましたが、テーマごとに分類してみました。(もちろん、「特に指導で時間が足りないということはない」というお答えもいただいておりますが、今回のレポートでは割愛させていただきます)
(1)児童の学習時間/習熟についてのコメント
まずは、児童の漢字を学習する時間について、または習熟についてのコメントです。漢字をしっかり書ける/読めるようにすることを習熟と考えると、そのための先生が児童にかける時間がなかなかとれないというコメントをいただきました。
- 学習の効率ということを考えることに、抵抗がありますが、漢字はできれば効率よく学習できればと考えています。個人差に対応するためには、習熟のための時間が足りないと感じます。
- ノートに書き取りをする練習時間
- 漢字を覚えるために児童が自身で確認(テスト)する時間
- 繰り返して練習する時間
- 定着のため、繰り返し指導する時間が足りない。
- 児童全員のノートを休み時間に見るだけでも時間が足りないが、どうしても字形が整わない児童への細かな指導に時間を割けない時がある。
- 45分の授業時間内では、練習する時間 をとることはなかなかできず、(他の学習活動があるため)もっぱら練習は家庭学習となるのですが、書き間違えた漢字を何度も練習してくる 児童も多くいます。 間違えた漢字を覚えることになっています。
- 練習時間
- 練習と、正しい練習をしているかどうかをチェックしてあげる時間
- いつ→国語の授業時間の始めまたは終わり五分ほどを使って。どのように→ドリル(よく採用するものは赤ねこ)を使って、①読み方②熟語③筆順✖️2回④三文字練習⑤熟語で練習⑥漢字ノートに熟語で練習 といった漢字です。一回に新出漢字は四つほどにしてます。①〜③は先生と対面して。④以降は個人で取り組んでいます。文章の中で使えるようになることが大切だと思うので、時間があれば、熟語の意味や文章づくりまでしっかり見てあげたいですが、あとは毎日の家庭学習になっています。
- 覚えさせる時間
- 漢字練習の時間、読み替えや熟語の意味を調べさせたり教えたりする時間
- 書き慣れる時間
- 丁寧に練習させる時間。
また、定着については宿題や家庭学習の量や質によっても変わるので、そうした点についてのコメントもいただきました。
- 指導の時間に不足は感じていませんよ!家庭学習で、丁寧に学べるかどうかで、定着が違うと思います。本当は、漢字や熟語の意味まで字典を引いて調べられればいいですが、家でお家の人と一緒に出来れば最高のコミュニケーションになると思います。
- 宿題に出している漢字への指導時間不足
- 宿題でひとりひとりの定着を確認する時間。
(2)国語の授業内容についてのコメント
学年が上がるに従って、学ぶ内容、授業で教える内容が増えていくため、そのなかで漢字ばかりに時間をかけられないというコメントもありました。
- 国語の時間枠でおこなう内容かそのものが多過ぎるから、おろそかになりがち。
- 高学年は漢字の指導時間そのものが取りにくいです。
- 漢字指導全般
(3)漢字の指導内容についてのコメント
単純に漢字を書けるようになる、読めるようになるというだけでなく、成り立ちや部首やつくり などについて、教えたいが時間が足りないという先生もいらっしゃいました。
- 成り立ち
- 部首やつくりの説明の時間、反復練習
- 漢字の成り立ちや熟語の意味
また、漢字を使っての文章作りや意味調べなどについても、漢字をしっかり文章の中で使うために、授業の中で指導したいという答えもありました。
- その漢字を使っての文章作り
- 実際に文章の中で使わせる時間
- 習った漢字をつかって文章をつくる時間だと思います。
- その漢字を実際に文章の中で、使用する練習の時間
- 漢字のなぞり書き、漢字の意味調べ、文作り
- 漢字辞典を自ら引きながら学習する時間
- 書き順について
- その字を使った熟語とその意味をたくさん知ること
いただいたコメント紹介(抜粋)
最後に、フリーコメントをご紹介したいと思います。いろいろな考え方があると、本当に勉強になりました。
- ICT全盛の時代なので、漢字自体の学習に力を入れるというよりは、観察力や分析力などを高めるために、細かい指導を行っていた。
- 高学年になると新出漢字を丁寧に教える時間を確保できない。授業時間は単元の学習にしっかりと充てたい。なので、授業では読み方を教え、とめ、はらいなどしっかりとした書きの細かい指導はできないとことが多い(もちろん低学年はしっかり教える)実際には宿題の漢字ドリルをよくみて丁寧に書いてくるように指示を出し、提出してきたものでとめ、はらいができていなかったり、バランスがおかしかったりすると字を直させ、覚えさせるのが現状してあります。
- とにかくやらなければならない内容に対して授業時間が足りない。教材研究の時間は勤務時間内に確保できない。漢字は後回しになりがち。
- 初めの設問は、重視度の順位があります。一番はトメハネで、次が整った字形のための書体、最後に書き順です。書き順を軽視しているのではなく、書体が整っていると書き順は正しくなるため、この順です。
- 素敵なアプリができることをご期待申し上げます!
- 家庭学習時に、書き間違えを指摘し、正しく練習を進めることができる学習ソフトがあると嬉しいです。子ども達の学習時間が、無駄なものにならないように。
- 「何をどこまで指導するのか」は子どもによると思います。誤字を教えるわけにはいきませんが、字を書くことも苦手な子どもに、細かい「とめ、はね」まで厳しく指導したために、漢字学習が嫌いになってしまっては意味がないと思ってます。漢字が好きな子には一緒に字典を引いて意味を考えてあげられれば素敵だなと思ってます。「子どもの特性に応じる」ということと「漢字が好きになっちゃう」という指導ができたらいいなぁと思ってます。そして、自然に子どもが勉強しちゃうようになってほしいものですね。理想ですね(*^_^*)
- 低学年に配当字数の負担が大きいと感じている。
- 部首や書き順、その漢字がどのような時に使われるのか、指導するが、時間が足りない。また、しっかり定着させられていない。
- 実際に使う場面(長い文章を書く)では,漢字のチェックはできない。※ 実際に指導にあたっていた時のことを回答しました。
- 3月のJAETではお世話になりました。何かのお役に立てばと思います(^^)
- アンケートをしてみて、漢字指導は難しいなと改めて感じました。読み方については、興味をもつ子供もいるので、押さえなければならない読み方は必ずし、あとの読み方は紹介する程度にしています。また次期学習指導要領では、小学校で扱う漢字が増えるので時間が足りるか心配です。
- 教える側の意識として、生活の中で使うものということが低いのでは。漢字テストができればいいというところで止まっている感じがします。
- 書き順、とてつもなく間違ってる書き方(例えば、上から下へ書く、口を一画で書く、など)で無く、字の形など正しければ良しとしたいです…
- 読みは教えるというよりも、子ども達がすすんで調べるので、教科書を超えて、よりたくさんの読み方を扱っていました。
まとめ
アンケートにご協力いただきました先生方、本当にどうもありがとうございました。個人的には、漢字練習は低学年のうちはただの学習指導ではなく、ある種、生活指導にも近いと思っております。しっかりじっくり学習する姿勢を作る役割も果たしているのではないかと思っています。中学年から高学年にかけては、いよいよ教科書以外の文章を読み、自分で文章を書くためのツールとして、漢字を広く使えるようになり、語彙をどんどん増やしていってほしいと思っています。
目指すべきところは違うかもしれませんが、先生方の「漢字指導」についての思いを教えていただけることで、本当に勉強になりました
このレポートを通じて、他の先生方のご意見なども読んでいただき、またご意見などをいただければ幸いです。ブログのコメント欄やTwitter、Facebookページなどをご活用いただければと思います。多くの先生方がお答えいただいていますので、ぜひリスペクトをもったコメントをいただければと思います。
これを機会に、今後共どうぞよろしくお願いいたします。
(為田)