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登米市教育研究会視聴覚教育研究部会 レポート No.1(2018年10月5日)

 2018年10月5日(金)に登米市立宝江小学校を会場に行われた、登米市教育研究会視聴覚教育研究部会に参加させていただきました。30名近くの登米市内の先生方が参加され、理論研修プラス実技研修と充実度の高い研修会でした。
 講師は宮城教育大学技術教育講座准教授の安藤明伸先生、その門下生である澤田美月さん、NTTドコモの阿部智さん、猪野裕葵さんでした。
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「小学校のプログラミング教育 最初の一歩」

 はじめに安藤先生による「小学校のプログラミング教育 最初の一歩」と題した講義による理論研修、引き続き、安藤先生・澤田さんによるmicro:bit、阿部さん・猪野さんによるembotのコースに分かれてのプログラミング体験講座でした。

 安藤先生は「事前と事後の自分の感覚の変容を大切にしよう。プログラミング教育のことをお話する前に、今の自分のイメージを確認しましょう」と、現時点でのプログラミングに対する意識の確認をすることから講義を始めていました。
 「書き終わったら、隣の方とプログラミングというものに対してどれくらいイメージが違うか、同じか比べてみてください」
 安藤先生は、過去に小学生にも同様にイメージの調査をしており、それによると小学生は、プログラミングの学習を始める前は、「かっこいい」「すごい」というイメージが高く、過度に肯定的な印象なのだそうです。ところが、プログラミングの単元が終わった後に同様の調査をすると、学習前よりもそうした傾向が多少減少傾向になるとのこと。これはプログラミングというものが、案外すぐにはできるものではなく、しっかり考える必要があることを子どもたちなりに実感した結果ではないかと安藤先生は考察していました。
 一方、大人のワークショップなどで実施したイメージ調査では、学習前は否定的印象や中立的印象の傾向が強いのですが、体験後は肯定的評価が増すとのこと。その知見からも、先生たちには早く体験していただくのが良いのではないでしょうか。
 プログラミング教育に関して、安藤先生は次のような内容をお話しされていました。
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  • プログラミングという言葉を画像検索すると、特に以前は意味の分からない英語が黒い画面に敷き詰められているようなイメージの画像が沢山でてくる。しかし最近は、比較的カラフルでイラスト等が多く使われた画像が表示されるようになってきた。これは、ビジュアル型のプログラミング言語が台頭してきたから。プロの世界では、確かに文字入力のプログラミングが主流なので、一文字違っただけで動かないことは起こる。しかし、初心者には文法的な間違い探しではなく、プログラムの手順・アルゴリズムを考えることに授業の時間を使いたい。文法的な間違いが生じないブロック型のビジュアルプログラミング言語の良さ、導入の意味はそこにある。
  • プログラミング的思考は、普段の生活でもみんな無意識に行っている。しかし、言われたことしかしない、形容詞や副詞を使わない、意味が通じたら瞬時に文脈を読まずに高速で実行するという特徴を持つコンピュータに対する指示として思考を整理して表現すること。曖昧さや抽象度が低く「ドライ」な表現は、豊かな表現が多く、また行間を読む文化の日本人には案外良い思考のトレーニングかもしれない。
  • 今日に至るまで文部科学省等のプログラミング教育の議論の際には、人間としての感性とか、人間らしさとか、思いを馳せるとか、そういうことが結構しっかりと議論されている。意外とそういう部分が大事で、そこを概念的に内包しているのが我が国のプログラミング教育だと考えている。

 安藤先生のお話の一つ一つが、ぐいぐいと刺さるものばかりでした。他にも「なるほど」「そうか」と感じさせる内容で、あっという間の1時間でした。詳しく知りたい!とお感じの方は、ぜひ安藤先生が登壇される研修会・講演等をチェックして参加してみてください。子どもたちが「わかった」「できた」と声を上げる授業のような、充実感と学びをたっぷり体験できると思います。

 No.2に続きます。
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(佐藤)