フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。
今回は、Googleの「AutoDraw」を使って、特徴を捉えることの重要さを学ぶ内容を考えてみました。
「AutoDraw」は、人が描いた線をヒントに描こうとしているものを判断して、候補となる絵を割り出してくれるweb上のツールです。
線を描くごとに、画面上部に候補の絵が表示され、任意の絵をクリックすることで、手描きで描いた絵がきれいに整えられた絵に変わります。
この機能を利用して、絵やモチーフを見る人に伝わるように描くには、特徴を捉えることの重要さを実感してもらいます。
▼授業の流れ
- AutoDrawの基本的な操作を説明する。
- テーマを与えて、描かせる。(例:ゾウ、ウサギなど、なるべく形的に特徴のあるモチーフがいいでしょう)
- 描きながら、画面上部に表示される候補の絵をチェックするように伝える。(クリックはしない)
- テーマの絵が候補の一番左側に表示されたら、描くのをやめる。
- 全員がテーマの絵が表示されるかある程度時間が経ったら、全体で鑑賞をする。
- 誰がいちばん少ない手数でテーマの絵が表示されたか確認する。
- 手数が少ない絵の中で、どういう傾向があるか話し合う。
- いちばん手数が少ない絵と、多い絵を見比べてみる。
- 特徴を説明する。(テーマ例:ゾウ)
- 耳を小さく描いた場合だと、長い鼻を描いても候補の一番左にゾウが表示されない。 →ゾウは耳が大きいのが特徴なので、小さいとゾウだと判断されにくくなってしまう。
▼顔だけでゾウを表現
1. 下の例では、顔と鼻だけでは、候補に「ゾウ」は表示されなかった
2. 耳を1つ足すと、「ゾウ」が一番左に表示
▼全身でゾウを表現
1. 下の例では、顔、体、前足、後足、方耳だけでは、一番左に「ゾウ」が表示されない(候補中には出た)
2. もう1つ耳を足したら、「ゾウ」が一番左に表示
▼全身のゾウで、耳を小さくしたら、鼻を描いても、一番左に「ゾウ」が表示されない(候補中には出た)
「AutoDraw」が公開されたときは、「おもしろいけど、多様性や一人ひとりの個性ある表現力を伸ばすことに注力している図工や美術では、使えないかな…」と思って使わずにいましたが、使わずに決めつけてしまうのはいけないな…と思い直し、ようやく使ってみました。
誰が描いたどんな絵でも、決められた絵になってしまうことから、逆に多様性の重要さを教えることはできないかな…とも思いましたが、機能自体がおもしろいので、多様性の重要性を伝えるには不適切だなと感じました。
そして、絵の上手さに左右されずに、同じ素材を使うことができるというところから、美術の色彩構成で、レイアウトや配色を教えるのなら向いているかも…と思いましたが、実際にやろうとすると、背景は1色しか塗ることができず、絵を重ねても重なった線で区切られた部分を分けて色を塗ることができなかったので、レイアウトや配色を教えるのにも向いていないなと思いました。
今回、思い込みで使わずにいた「AutoDraw」ですが、実際に使ってみることで見える・分かることもあるということを、改めて私自身が学びました。これは、学校のICT導入にも言えることではないかと思います。もちろん、何のためにICTを導入するのかという目的を明確にしてから、どういうICTを導入するのかが大事ですが、まずは目の前にある機材を使ってみる。無料で使えるツールを使ってみる。使ってみた上で、どう授業に活用できるかアイデアを出してみる。
そうすることで、イメージしていただけでは、思いつかなかった活用方法が生まれてくるかもしれません。
(前田)