2025年6月16日にオンラインで開催されたコエテコEXPO 2025 民間プログラミング教育フェス Day1に参加しました。「AIと描く、プログラミング教育の新章」というテーマの通り、生成AIに関するセミナーをたくさん聴くことができました。
参加したセミナーのなかから、学校や公教育と関係が深そうなセミナーの気になったところのメモを共有したいと思います。セミナー全体の記録ではなく、あくまで僕が個人的にとったメモです。学校の先生方に読んでいただいて、生成AIについての興味関心をもっていただけたらいいな、と思っています。
生成AIとプログラミング教育の今後 ~生成AI時代に求められる能力・スキル~(東京大学 大学院工学系研究科 准教授・吉田塁 先生)
東京大学の吉田塁 先生のセミナー「生成AIとプログラミング教育の今後」では、生成AIについての基本的な知識を紹介してもらいました。
- 吉田先生は、生成AIとプログラミング教育に興味があった。
- 2023年5月23日 大規模公開講座「教員向け ChatGPT講座」はインパクトがあった。
- その後、2025年3月27日にも「教員向け生成AI講座」を実施。
- 生成AIに関する基本的な知識
- 生成AIには実はいろいろな定義がある。
- 広く言われているのは、「学習データをもとにテキストや画像などのコンテンツを生成できる人工知能」。
- 生成AIには、「出力が不正確な場合がある=ハルシネーション」などのリスクがある。
- プログラミング教育と生成AI
- 生成AIが普及しても、プログラミング教育が必要なくなるわけではない。
- 教育現場での生成AIの活用はリスクもあるので、そこは理解する必要がある。
- 0からプログラミングをしてもらうことにはどれくらい意味があるだろう?ただ、「ちゃんと理解する」ということはする必要がある。コードをプロンプトで書かせることはできるけれど、それを理解するための基礎は必要だろう。
- 生成AIを学ぶ意義
- 生成AIが自己実現の強い武器になる。簡単に自分の作りたいものを作れることは、強い武器になる。オンラインで世界を相手にできる。自分のキャリアを広げるうえで、圧倒的有利になると言える。
生成AIを学ぶ意義として、「簡単に自分の作りたいものを作れることは、強い武器になる」という表現はとてもいいと思いました。こういう観点で学校で生成AIを活用していくことは大事だな、と思います。
教育現場で明日から使える生成AI活用事例5選(一般社団法人教育AI活用協会(AIUEO)代表理事・佐藤優太 さん)
一般社団法人教育AI活用協会(AIUEO)代表理事・佐藤優太 さんのセミナー「教育現場で明日から使える生成AI活用事例5選」では、教育現場ですぐに使える生成AI活用事例が紹介されました。冒頭で佐藤さんがおっしゃった「生成AIを使えば、先生の能力が拡張できる」という表現はとてもいいな、と思いました。
- みんがく「スクールAI」
- 目的別に活用できる生成AIプラットフォームで、1からアプリを作って生徒たちに使ってもらうことができる。アプリ共有機能で、全国の先生が作成したアプリを活用できる。
- 生成AIを使えば、先生の能力が拡張できる
- 例えば、英会話が苦手な先生も、ネイティブ級に。
- しかもAIは、能力拡張したまま生徒の人数分作れる→個別最適化できる時代になった。
- AI活用をどう浸透させるか
- 自分が「重い」と感じているタスクを代替できないか考える
- 保護者への手紙を書くのが苦手→生成AIでたたき台を作成しよう
- ホームルームでの小話が苦手→生成AIに壁打ち相手になってもらう、ロールプレイする
- 「こんなのあったらいいのに」を生成AIで実現できないか、考えて試してみる。
- 生徒一人ずつに先生ひとりを配置できたらいいのに。面接練習をもっとさせてあげたいな。
- 分野×生成AIの組み合わせを考える
- 教科をかけ算(英語×生成AI、数学×生成AI…)
- イベントをかけ算(入学式×生成AI、教員研修×生成AI…)
- 教育現場で明日から使える生成AI活用事例5選
- 授業準備での活用
- 保護者への連絡など事務での活用
- 探究的な学びを実現するための活用
- 個別最適な学びを実現するための活用
- 学習のふりかえりなどメタ認知する力を育成するための活用
- プロンプトは無限に簡単に生成できる(プロンプトを作るプロンプト)
- 3点、状況に合わせて考えて入力する
- target:利用者(生徒・先生・保護者等)「このプロンプトを利用するのは、targetです。
- goal:解決・実現したいこと「このプロンプトは、goalを解決・実現するためのプロンプトです」
- specialneeds:作成するときの留意点を記入する。
- どこでAIを使わないか
- 人間が得意/不得意とAIが得意/不得意で四象限を作る。
- どちらかが得意なら、そこは任せればいい。
- どちらも不得意なところは、別のツールを使えばいい。
- どちらも得意なところはどうする?
- どこをこだわるか
- 教育者としてのこだわりが大事。=何を私はやりたいか。
- いけともさんのYouTube「いけともch_旧リモ研」などを参考にしています。
すごく実践的に「こういうところで使えますよ」というのが示されたセミナーで、とても勉強になりました。プロンプトをどんどん作ってみて、もっともっと自分で試してみないと話にならないな、と感じました。
生成AI時代において、なぜ今も子どもたちに“プログラミング教育”が必要なのか(株式会社TENTO 代表・竹林暁 さん)
株式会社TENTO 代表 竹林暁 さんのセミナー「生成AI時代において、なぜ今も子どもたちに“プログラミング教育”が必要なのか」では、プログラミング教育がなぜ必要なのかについてきちんと言語化してくれていました。
- 2011年当時、プログラミングがどういうものか一般の人には知られてなかった。プログラミングすると何が良いかを訴求しなければならなかった。これって、今も一緒では?
- プログラミングにおいて、具体的なプログラミング手順を覚えることに価値はなくなった。
- 現在ではもはや、Pythonの仕様書は、エアコンの説明書と同じ。エアコンの説明書は誰も暗記しないでしょう?
- プログラミングは誰でも作れるようになり、実用性を売りにできなくなった。
- AI時代でも、プログラミング教育において価値がなくならないもの(今後も変わらないだろう)
- 試行錯誤を怖がらなくなること
- プログラミングは、ミスをしながら覚えるもの。このため試行錯誤が普通になる
- AIが人間を代行するようになるので人間はますます安全になる。
- 現代は「チャレンジ精神>安定志向」
- オープンな教材にする(正解がある教材=正解通りじゃなきゃダメというメッセージ。一本道になる。)
- 閉空間で学ぶ
- 自分が自由にできる空間
- テキストプログラミングを最初は学習しない
- できることが限定的で目に見えているツールを使うべき(例:ビスケット、スクラッチ、マイクラ、IchigoJam)
- 試行錯誤のためには自由が必要。でも、自由は制約があってこそ。
- ルールについての視座
- プログラムを作ること=ルールを作ること
- 自分が作ったゲームをほかの子供にやってもらう「こんなのくそげー!」
- 思考の明確化のトレーニング
最後に竹林さんがおっしゃっていた、「AI時代でもプログラミング教育において価値がなくならないもの」は本当に大賛成です。僕は個人的には「試行錯誤を怖がらなくなること」に意義を感じています。そのために、「オープンな教材にする」や「閉空間で学ぶ」など、ヒントをたくさんいただけたように思います。ただやらせるのではなく、きちんと設計されたプログラミングの授業が必要だなと感じました。
No.2に続きます。
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(為田)