教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

令和3年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果

 文部科学省のサイトで、令和3年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果が公表されました。毎年注目してきていましたが、昨年度の調査結果で劇的に数字が変化し、それをうけて今回はどうなったのかな、というのを見ています。

 以下の3つのデータをいつも関心をもって見ています。

令和3年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)

 都道府県別 学校における主なICT環境の整備状況の中から、「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」です。一昨年度が4.9人/台だったのが、昨年度に1.4人/台となり、令和3年度はついに0.9人/台となり、一人1台を上回っている状況です。下の図の水色の部分が増加分ですが、劇的に台数を増やした自治体がありますね…。

 さらに校種別に整備状況を「学校種別 学校における主なICT環境の整備状況」で見ることができます。
 校種別に見てみると、教育用コンピュータ1台当たり児童生徒数は、小学校で0.9人/台(昨年度は1.3人/台)、中学校で0.8人/台(昨年度は1.2人/台)、義務教育学校では0.8人/台、高校で1.4人/台(昨年度は2.5人/台)となっています。
 まずは小学校・中学校での配備が児童生徒が使う分に関してはほぼ完了と言えるかと思います。ただ、これは「何台整備されているか」という数字であり、「どんなふうに使われているのか」というのはこの中には含まれていないので、学校現場で先生方をサポートしていかなくてはならないと感じています。
 また、高校での整備も進められている状況ですが、思考・表現のツールとしてICTを使っていくことを考えれば、高校での配備がもっともっと進められればいいなと思っています。教科情報での活用も進めばいいなと思います。

 それと、「教員の校務用コンピュータ整備率」もどんどん上がってきているのですが、校務用だから、授業には使わないという想定だと思うのですが、どうなのかな…。
 但し書きに「教員1人1台に加えて職員室等に設置している共用の校務用コンピュータをカウントしている場合もあることから100%を超過する」と書かれているのですが、このあたり、「何のためにこの調査をしているのか」を明確にして出してほしいな、と思います。

 子どもたちにICTを活用した学びをしてほしいと思ったら、先生も授業のときにICTを活用することが望ましいと思うので、「授業のために先生が使えるコンピュータ整備率」という形で明確になるといいかな、と思います。
 現場で先生方に話を伺うと、「職員室では使えるけど持ち運べない」とか、「専科/非常勤の先生には配備されていないので使えない」という声を聞くこともあります。
 目的を明確にして、数字だけでなく「実際にどう使われているのか」を追いかける必要があるように思います。

市区町村(設置者)別 学校における主なICT環境の整備状況(全学校種)(1)【速報値】

 「市区町村(設置者)別 学校における主なICT環境の整備状況(全学校種)(1)」の方では、ICT環境整備を市区町村別で見ることができます。
 「①教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」を見てみると、設置者別に児童生徒数と人/台のデータがランキングで並んでいます。100%の自治体が増えたなと思います。この配備されたコンピュータを、「お金をかけてよかったね」「子どもたちの学びが変わったね」と地域の皆さんに思ってもらえるようにしていき、学校のチャレンジが応援されるようにすることが、僕たちの仕事だな、と感じています。

まとめ

 こうしたデータ上の数字だけでは、実際にどのようにICTを授業で活用しているのか、などに関しては見えないので、この数字に縛られるのは意味がないのですが、整備が進まなければそもそもできないことも多いので、まずは整備が進んでいることを喜びたいと思います。
 そのうえで、ICTを配備して授業力や児童生徒のICT活用を上手に行っている自治体や学校の様子を見ていくことが大事だと思います。

 また、コンピュータだけでなく、コンピュータで動かすシステムやコンテンツなどにも適正に予算をつけてきちんと使えるようにすることが重要です。
 一人1台の端末整備はゴールではなく、スタートです。整備された端末をどう使って、子どもたちの学びを変えていくのかを考え、うまくいっている方法論、予算をつけて横に展開する動きを民間の立場から支援していきたいと思います。

(為田)