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森村学園初等部 授業レポート No.2(2022年12月14日)

 2022年12月14日に森村学園初等部を訪問し、5年生を対象にして行われたLIXILユニバーサル・ラン<スポーツ義足体験授業>の授業を参観させていただきました。授業の主催は水まわりと住宅設備のメーカーである株式会社LIXILです。LIXILでは子どもたちの多様性への理解を育むため、2017年から全国の小学校で当授業を実施しています。1時間目から3時間目に5年生が1クラスずつ、体育館で義足アスリートとの交流とスポーツ義足体験をします。全クラスがスポーツ義足体験をした後の4時間目に、5年生全クラスが集まって、義足に関する学習を入口に多様性について考える授業を行いました。

 4時間目に、5年生の3クラス全部が集まって、スポーツ義足に関する学習をしながら、多様性について考える授業を行いました。講師は、スポーツ義足で陸上競技をしている池田樹生 選手(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社所属)とユニバーサル・ラン講師の井上友綱さんが務めました。

 池田選手の義足についての話を聴き、池田選手の走りを見てからスポーツ義足を体験した子どもたちに、井上先生は「日本で義足を使う人はどれくらいいるでしょうか?」と質問します。「ミッキー(池田選手)は先天的ですが、世界には、事故、病気、戦争とか地雷とかで、足をなくす人もいます」と考えるヒントを与えていきます。
 「10万人以下」「10万~100万人」「100万人以上」の3つの選択肢で、どれだと思うか手を挙げてもらいます。「10万~100万人」を選ぶ子がいちばん多かったですが、正解は「10万人以下」でした。日本で義足を使っているのは約6万人だそうで、2000人に1人の割合となるそうです。
 世界の他の国では、アメリカで約200万人(155人に1人)、インドで約500万人(240人に1人)が義足を使っているそうで、世界全体だと約2000万人(365人に1人)が義足を使っているそうです。

 「義足を使っているかどうかということ以外にも、世界にはさまざまな人たちが、さまざまな生活をしています」と井上先生は言います。例えば、性別も年齢もいろいろです。障がいがある人も障がいがない人もいるし、国籍が違う人も、宗教が違う人も、話す言語が違う人もいます。そこから、多様性について考えてほしいと井上先生は言います。
 「ここにもメガネをかけている人とかけていない人がいますね。現代使われている形をしたメガネは1700年代に発明されましたが、その当時は使っている人は本当に少なくて、メガネをかけている人は障がい者と言われていたんです。でも、今はもうそう言われませんよね。なんででしょう?」と井上先生が質問します。
 子どもたちからは、「メガネをかけている人が増えてきた」「メガネが社会になじんできた」と答えが返ってきました。井上先生は、「そう、増えてきたら、社会になじむ」と言い、続けて「ミッキーを見て、手がないとか、義足つけてるとか思う人もいます。でも、こういう授業を通じて、障がい者への見方が変わっていくと思います」と言います。

 ここで多様性について考えるためにグループになって、「自分たちには当たり前だけど、ミッキー(池田選手)にとって当たり前じゃないこと」をグループで考えてもらいます。
 子どもたちからは、「お箸を持つ」「料理をする」などの意見が出ましたが、池田選手は「お箸も使えるし、食器も持てます」「包丁で切ったり、洗い物もできます」と、どちらも平気という答えが返ってきました。
 「鉄棒は?」という質問に、池田選手が「最初に障がいに気づいたのは鉄棒でした。最初にできなかったけど、今は逆上がりもできます」と答えると、子どもたちからは「えー!」と驚きの声があがりました。
 「本を読むのは?」という質問には、池田選手は「本を押さえてないと閉じちゃうから読むのが大変なことはあるけど、今はタブレットを使って読むこともできますね」と答えていました。

 一人の子が、「今まで大変だったことはありますか?」と質問すると、池田選手は「小学校2年生くらいのとき、障がいをできない言い訳に使っていた時期があった。スポーツに出会って、工夫すればできるとわかった。それからは大変だと思うことはないですね」と答えていました。
 この言葉は、すごく子どもたちに伝えてくれたものが大きかったのではないかと思います。

 授業が終わった後も、池田選手のところでずっと話をしている子たちもいました。こうした授業の機会で義足を体験し、義足を使っている人とふれあい、自分たちと違うところもあるけれど、同じところもあるのだということを体験できることはとても意味があると思います。

 No.3に続きます。
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(為田)