教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

袖ヶ浦高校訪問(2014年9月17日)

 9月17日(水)に千葉県袖ケ浦市にある袖ヶ浦高校の授業を見学させていただきました。袖ヶ浦高校は、BYOD(Bring Your Own Device)を実践している学校で、生徒たちは自分のiPadを持っています。参加させていただいたのは、5時間目の1年生の授業と、6時間目の2年生の授業でした。

 コーディネートしてくださった永野先生のお言葉だと、「外部の人の前でプレゼンテーションをすることに意味がある」とのこと。外部の人に向けてのコミュニケーショントレーニングの場に参加できて、僕としてもいろいろ気づきがありました。また、iPadをどんなふうに生徒たちが使っているのかを実地で見ることができたのもとてもよかったので、レポートしたいと思います。
 ↓袖ヶ浦高校の窓から見える景色が本当に気持ちいいです。視界が広い!
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1年生はiPadでプレゼン、レビュー

 1年生の授業は、身近なテーマを選んでの個人発表です。5人ずつのグループに分かれて、それぞれのテーブルに2人ずつ外部からのゲストがコメンテーターとして参加します。
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 発表は、iPadの画面を見せながらプレゼンをする人、それをムービー撮影する人、司会をする人、というふうに分担されています。1人3分の持ち時間、2分の質疑応答+コメントの時間が、教室の前に表示されています。
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 全員のプレゼンテーションが終った後、iPadを渡し合って、自分のプレゼンテーションを観直します。プレゼンテーションを見直すことで、声の大きさや身振り手振りなどを客観視できるので、とてもいいと思います。これらは、実技教科の実習部分の記録や部活動でのフォームやパフォーマンスのレビューなどで広く使われていますが、意外とプレゼンテーションでやっているところは多くないな、と思いました。
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 その後、動画はAirDropを使って、録画した生徒のiPadから、プレゼンテーションをした生徒のiPadへ転送します。
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2年生はポスターセッション

 2年生のクラスは、iPadは使わずに資料をホワイトボードに書いたり貼ったりしてのポスターセッションです。秋に修学旅行で行く沖縄をテーマにして、「オスプレイ」「尖閣諸島問題」「ひめゆり学徒隊」などについて調べ、発表をしていました。
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 見ていて思ったのは、ポスターセッションであっても、スライドショーの文法を知っているプレゼンテーションをするな、ということでした。ホワイトボードは上に透明なフィルムがかかっているので、フィルムの下に資料を挟んで、フィルムにマーカーで書き込んだり、ということもしています。また、入れてあった絵を外すことで「減った」ということを表現していた生徒もいました。

 プレゼンテーションを動画で撮影するのは、1年生と同じです。撮影した動画を自分でもう一度見て、そこからベストショットをスクリーンショットにして、コメントもつけて提出、という事後学習への流れになっていました。
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 プレゼンテーションソフトを使うことで、プレゼンテーションよりもアニメーションの方に力点が行ってしまう、というのは、多くの学校で見られる問題点ですが、そういった部分を捨象して、プレゼンテーションはどうあるべきか、という本質の部分をトレーニングできていいな、と感じました。
 また、こうして1年生の時のプレゼン動画、2年生のときのプレゼン動画、と自分のiPadに蓄積されていくのって、ポートフォリオとしておもしろいな、と思います。

結局、アプリ+αが大事

 授業後に永野先生に「プレゼンテーションの内容については、どこまで先生方が関与しているのか」と質問させていただきました。プレゼンテーションとしては、もっと公平に調べなくてはならない部分もあると感じましたし、ただそこまで先生が踏み込むと、時間がかなりかかる、というのを、他の学校様でも見ているからです。
 永野先生の答えは、1年生と2年生については内容については踏み込んでいない。ただし、3年生の課題研究については、内容まで踏み込んでいる。そのため、時間もかかるので、理科と社会の先生にサポートに入ってもらっている、とのことでした。理科と社会の先生は、コンピュータについてはまったくわからなくてもいいので、テーマについての助言をしてもらう、という体制だそうです。
 こうして内容についてのサポートをしっかりするというのは、「情報科」の枠を超えてやらなくてはならないことであり、校内での調整も大変なのではないかな、と想像するのですが、コミュニケーションを豊かにする、という情報コミュニケーション科の目指す方向に重なっていて、とてもいいと思いました。
 3年生の課題研究発表会も、ぜひ拝見したいなと感じました。(研究員・為田)