美術の授業は、必要か…?
小学校の英語必修化に加え、プログラミング教育も必修化が検討されている一方、美術科の授業は、授業数の減少や美術教員数の減少が実態としてあり、美術は必要か?という声もあるのが実情だと思います。
時間数の減少や美術教員の減少については、OAC(公益社団法人 日本広告制作協会)が開催した「教育現場と制作現場をむすぶ情報交換会2014」の開催報告ページにて、北翔大学の山崎正明准教授や武蔵野美術大学の三澤一実教授が述べていらっしゃいます。なんと北海道では、美術教員の4割が「免許外教科担当」として美術を受け持っている先生がいるようです。体育の先生が美術を教えるケースもあるとか。
開催報告 | 教育現場と制作現場をむすぶ情報交換会 2014「クリエイティブの未来に向けて 教育の試みと課題」
社内研修で実施されているデザイン講座
上記のように、美術教育が軽視されている一方で、実際にプロの現場でデッサンや平面構成の研修がされているという事実があります。株式会社サイバーエージェントでは、エンジニアが同じ社内のデザイナーからデッサン・平面構成・タイポグラフィとロゴデザインに関して学ぶテクニカルクリエイター研修が実施されたようです。
▼第1回デッサン講座
https://www.cyberagent.co.jp/technicalcreator/article/id=12108www.cyberagent.co.jp
▼第2回平面構成講座
https://www.cyberagent.co.jp/technicalcreator/article/id=12145www.cyberagent.co.jp
▼第3回タイポグラフィとロゴデザイン講座
https://www.cyberagent.co.jp/technicalcreator/article/id=12169www.cyberagent.co.jp
デザイナーとして雇われても、今までデッサンなんて描いたことないという人もいるので、若手デザイナー向けにデッサンや色彩構成の社内研修を実施する会社はよくありますが、エンジニア向けに実施されているのは珍しいのではないかなと思います。
サイバーエージェントでは、「デザイン」と「エンジニアリング」を繋ぐ存在として「テクニカルクリエイター」を定義し、採用・育成を進めており、その育成活動の一環としてこの研修が企画されたようです。サイバーエージェントのテクニカルクリエイター研修は、デザイナー向けとエンジニア向けのものがあるようですが、エンジニア向けの研修の大目的は、「デザインの基礎を学び、モノの見方や、美意識を養う」こととのことです。
サイバーエージェントのように、デザイナーとエンジニアの両方のスキルを持った人材を育成する動きや、デザインの改善案出しはプロジェクトメンバー全員で出して、最終的な形にするところだけデザイナーが担当したり、プランナーがプロトタイプとしてデザイン見本を作ったりプログラムを作ったりなど、業務の多様化・求められるスキルの多様化がされてきています。
美術教育は、絵をうまく描くことが目的ではない
美術を教えるにあたって、生徒に身につけさせたい学習目標は何でしょうか。先生によっては、絵が上手く描けることに主眼を置くがあまり、例えば自画像を描く課題で、顔写真をトレースして描かせたりするようです。しかし、絵を描くのは手段であって、何を表現するか、どのように観るか・描くかが大事だと思います。
モチーフらしさを表現するためにはどうしたらいいか、そもそもモチーフの「らしさ」とは何か、モチーフはどんな構造・質・色・形をしているか、どのような構図にしたらいいかなどを考え、表現し、それが伝わるかを確認し、修正、観察、比較、修正…というプロセスを学ぶことに意味があると思います。
プログラミング教育が、プログラミングができるようになるのが目的ではなく、プログラミングを通して、「問題解決力や論理力、創造力や思考力を身につける」と言われるように、美術教育も、美術を通して、観察力、分析力、問題解決力、表現力、非言語コミュニケーション力を身につけることができると思います。
(前田)