教育ICTリサーチ ブログ

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桐蔭学園小学部 授業レポート(2017年6月1日)

 2017年6月1日に、桐蔭学園小学部の神山先生の図画工作の授業を見学させていただきました。見学させていただいたのは、5年生の3・4時間目の授業で、「コマドリアニメ」というテーマで、好きなテーマ・好きな素材でiPadを使ってコマ撮りのアニメを制作するという授業でした。

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 今回見学させていただいた回は、撮影に入る児童と、素材作り準備の続きをする児童に分かれて作業の続きをする回でした。これまでに、導入で1回、企画で1回、素材準備で1回と撮影までに準備を進めていたようです。


ふだん見慣れている映像がこんな風に作られているということを知ってほしい

 神山先生に、この授業を実施するいちばんの学習目標は何かお聞きしたところ、ふだん児童たちがTVやYouTube、映画などで見慣れているさまざまな映像というものが、どんな風に作られているのかということを知ってほしいということを仰っておられました。日常的に見ているものでも、それができるまでの工程やどんなことをしているのかというのは、知らないものですが、その工程を知り、実際に体験しながら制作するというのは、とても意味があると思います。

 実際に撮影に入る前に、身近にどういう映像があるかを考えさせ、YouTubeなどでコマ撮りアニメのサンプルを見せてどんなことができるのか想像を膨らませ、絵コンテを描くということを実施されているとのことでした。いきなり映像を撮影しているのではなく、絵コンテという下書きをしていること、絵コンテをする意味を、実際に絵コンテを描くことを通して学ぶのがいいなと思いました。

▼児童が描いた絵コンテサンプル
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iPadで撮影・編集の操作面のハードルを下げる

 コマドリアニメの授業は、4・5年前から実施されていたようですが、iPadを使った授業は、今回が初めてとのことでした。今まではデジカメとパソコンで実施されていたようですが、撮影したデータをパソコンに取り組むこと、パソコンでの編集作業、児童への対応などなど、操作面で先生も児童もとても大変だったようです。そこで、なんと神山先生ご自身でiPad数台を購入し、今回の授業で活用されているとのことでした。もともと神山先生がApple製品好きということですが、複数台私物で購入される先生はあまり聞かないので、ビックリしました。それだけ先生の意気込みがあるのだなと思いました。

 使用アプリは、撮影・編集が簡単に感覚的にできるという理由で、「ストップモーションスタジオ」というアプリを使用されているとのことでした。実際に、素材準備が終わった児童数人に、操作方法を説明されていましたが、以下について説明しただけで、後は児童たちだけで撮影・編集を進めることができていました。

  • どこを押したら撮影できるのか説明
  • どこを押したら撮ったアニメを再生できるのか説明
  • 手軽に持ち運びしやすいので、落として壊すということがないように注意しよう
  • 三脚がないので、手ぶれがしやすい。手が動くと映像がガタガタしてしまうので、注意しよう
  • たくさん撮ってOK。あとで、いらない写真を削除しよう(削除の仕方を説明)
  • コマの順番を変えることもできる。出来上がったアニメを確認しながら、どういう流れにするか検討しよう(コマの移動方法を説明)
  • 音は入れない

▼実際にその場で撮影し、撮影したものを再生、編集、削除の仕方を説明している様子
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個人制作にすることで、全員に一通りの工程を経験させる

 コマドリアニメなどの動画作成は、機器の数の制限もあって、グループ制作で実施されることの方が多い印象ですが、神山先生の授業では個人制作で、テーマ・素材も自由という形で実施されていました。神山先生によると、「グループ制作だと力関係や役割ができてしまい、全員がiPad操作できなかったりしてしまうので、個人制作にしています」とのことでした。また「自由な発想を大事にしたいので、テーマ・素材は自由という形にしています」とのことでした。児童一人ひとりの経験や発想を大事にされているのだなと思いました。

 どういうことを学習目標とするのかで、個人制作がいいのか、グループ制作がいいのかは、変わってくるかと思います。同じ目標に対して他者と協力し合うことや、一人一人が役割をもってグループに貢献することを学ばせたいということであれば、グループ制作が適していると思います。他者との発想の享受を目的とするのであれば、アイデア出しだけグループでやって、アニメ制作自体は個人という風に、作業内容で分けることもできるかと思います。また、他者との発想の違いを体感させるのであれば、テーマや素材を統一にすることで、条件は同じなのに出来上がった作品は異なるということで、他者との違いにつなげることができると思います。同じコマ撮りアニメでも、教える先生方が何を教えたいのかで、授業がガラリと変わるなと感じました。

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(前田)