教育ICTリサーチ ブログ

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戸田市立新曽北小学校 授業レポート (2020年11月6日)

 2020年11月6日に戸田市立新曽北小学校を訪問し、山﨑敦史 先生が担当する5年生の国語の授業を参観させていただきました。
 この日の授業は、「よりよい学校生活のために」、学校生活の中から課題を決めて、課題を解決するために意見を出し合い、班で話し合っていく授業でした。授業の最初に山﨑先生から、今回の授業では「考えを広げる話し合い」と「考えをまとめる話し合い」をするという説明がありました。
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 この日の授業では、一人1台のChromebookを使って、それぞれ自分のGoogleアカウントでログインして、Google Jamboardを話し合いのツールとして使っていました。班ごとにJamboardのファイルが用意されていて、各児童が自分のページに自分の考えを付箋に書いて模造紙に貼っていくように、テキストボックスでどんどん書いていました。テキストボックスだけでなく、線を書いてまとめたりもしています。また、テキストボックスの色を変えることもできますので、色に意味をもたせることも可能です。
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 付箋に書き込んでそれを模造紙に貼っていく、という活動と、Jamboardで行った今回の活動と、それぞれのメリットとデメリットがあるので、そこをきちんと評価することは重要だと思います。
 デジタルで行うメリットとしては、付箋に書ける文章量をほぼ気にしなくてよくなります。どんどん書き直すことができるのもメリットの一つと言えると思います。思いついたらどんどん書く、直す、不要ならば削除する、というのも「考えを広げる」活動を行うときにはあっている使い方だと僕は思います。また、紙の付箋と違って下に落ちてしまったりすることもないですし、次回の授業へつなぐために保存しておくのも簡単です(授業が終わった後も、見返すことが可能になります)。
 デメリットとしては、付箋に書くときの簡単さが失われることはあるかもしれません。今回授業を参観させてもらった5年生のクラスでは、ほとんどの児童がキーボード入力を問題なくしていたので、思考のスピードとアウトプットのスピードの差があまりなく、授業として有効だったと思います。ですが、キーボード入力やJamboardの操作に苦労するようだと、そもそも「考えを広げる」というスピード感と量が求められる活動を阻害してしまう可能性もあります。

 班の全員が、自分の考えたことを発表した後は、班としてみんなの意見をまとめていきます。班全体のページが用意されているので、そこにどんどん書いていきます。ここは、みんなで、「これとこれを一緒にしたら?」「いいね」「そしたら消して」というふうに、作業をしたり話し合いをしたりしながら進めていきます。
 そうやって誰かがChromebookでテキストボックスを動かしたり、文章をまとめて書き直したり、グループで線を囲ったりしている様子を、班の全員が自分のChromebookの画面でリアルタイムに見ることができます。
 こうした作業をしているときに、「お前、まとめんのうまいなー」とクラスメイトに声をかけている児童もいました。こうした思考をまとめていく過程をみんなで見て共有できるというのはいいと思いました。
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 一方で、山﨑先生は途中でみんなの手を止めてもらって、「Jamboardを使うのに一生懸命になってしまって、話し合いがおろそかにならないようにしてね」と声をかけていました。
 今回の授業では、「考えを広げる話し合い」と「考えをまとめる話し合い」をしていきました。「考えを広げる」ときには、各自でJamboardでどんどん書き込んでいったことが瞬時に共有されていって便利です。一方で、「考えをまとめる話し合い」をするときには、班のなかでみんなで話し合い、考えを練り上げていってまとめてそれをJamboardに書き込んでいくので、一人1台操作する必要はあまりないのかもしれないな、と思いました。
 思えば、仕事でミーティングをするときにも、みんなで考えをまとめる話し合いをするときには、ホワイトボードを使ったり、書記役の人がまとめてくれたり、というふうにしていることが多いです。
 こうして、活動の内容によって、どうやってJamboardを使っていくのか、ということもこれから慣れていくにしたがって洗練されていくだろうと思いました。

 最後に、クラスで発表をしました。発表を見やすいように机の向きをもとに戻して、発表を見ていきます。
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 実は授業全体を、Google Meetで校長室から川和田亨 校長先生が見ていました。全部の班の発表が終わった後に、校長室からMeetで児童へのフィードバックをしていました。「北小を良くしたい、という気持ちが伝わってきました」という校長先生の言葉は、この話し合いをリアルなプロジェクトとしての価値を高めてくれるものだと思います。
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 校長室からこうして授業に参加することができる、ということを児童がみんな体験できるのもいいと思いました。これができるなら、学校をお休みしているクラスメイトと一緒に授業もできるし、他の学校の5年生と一緒に勉強することもできる、と思ったのではないでしょうか。こうして先生方もどんどん新しい授業の形にチャレンジしていくことは大切だな、と思いました。

(為田)