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書籍ご紹介:『生きる力を身につける14歳からの読解力教室』

 デジタルでさまざまな情報に接することが多くなり、読解力はこれまで以上に必要な能力になってくると思っています。そこで、いろいろと読解力に関する本は読むようにしています。今回は、犬塚美輪『生きる力を身につける14歳からの読解力教室』を読んでのメモを公開したいと思います。

14歳からの読解力教室: 生きる力を身につける

14歳からの読解力教室: 生きる力を身につける


 中学生たちの質問に犬塚先生が答えていくという形式で書かれています。出てくる質問が、どれも「言われそう…」というのが多くて、学校で子どもたちとやりとりをするときのネタになりそうだと感じました。

 最初に、「本なんて読まなくても、解説動画で見ればよくない?」という質問をする子への、犬塚先生の答えの部分を抜粋します。

もちろん、分からない部分を動画解説が教えてくれて助かった! っていう場面もあると思います。でも、「誰かが自分の分からないところをうまく解説してくれる動画を作ってくれる可能性」って決して100%じゃないですよね。本や解説書だって100%じゃないけど、たぶんそっちの方がカバーしている範囲が広い。
それから、もっと大事なこととして、役に立つ動画が公開されるためには、
1 その内容をよく分かっているユーチューバー
2 その動画を見たい人
の両方がそれなりの人数でそろわないといけません。今みんなは中学生で、中学生が学校で勉強する内容は全国どこでも同じで、みんなが勉強してきました。だからその内容が分かる人も大勢いるし、「そういう動画があればぜひ見たい」という人も多い。だから、ユーチューバーも「いい動画を作ろう!」と頑張ってくれて、分かりやすい動画が公開されるというわけです。でも、みんなが大学生になったとき、大学院生になったときはどうだろう。内容がうんと高度になるから、1が少なくなりますね。同じ内容を勉強している人も少なくなるから、2も少なくなってしまいます。そう考えると、確かに今はYouTubeで十分、かもしれないけれど、この先勉強し続けていくには、動画以外の方法で勉強できる方がいい、それには本を読むのが一番手っ取り早い、ということになりますね。(p.18-19)

 もしかすると、いつかは解決するかもしれませんが、でもこれだと、「誰かが解説してくれるもの」しか知ることができなくなってしまうので、ずっと使える「自分で学ぶ力」は身につかなさそうです。

 次に、「本を読まなくてもググればいいのではないか?」という質問への答えです。

知っていると知らないとでググるときの行動も違うのか……。知らない情報になかなかたどり着けないし、最終的にはたどり着けるとしても、ものすごく面倒だったり時間がかかったりしちゃいますね。(p.78)

 実は、「何でも検索すればわかる」というのは言い過ぎで、正しい検索の仕方を知らなければならないし、そもそも自分の持っている知識によって入力できる検索キーワードも違います。本を読む力だけではなく、リアルに世界での経験によっても、自分のなかに検索キーワードを増やすことができると思います。でも、圧倒的にコストパフォーマンスが良いのは、書籍をはじめとする文字情報だと思うので、読解力を身につけることは重要だと思います。
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 「読解力」を高めるための方法として、犬塚先生は、「読み方」を憶えること、「方略」について書いています。

重要なのは、「読み方」を憶えることです。心理学では、読んで理解するために、意図的にやることや考えることを「方略」と呼んでいます。これは、英語のStrategyという言葉の翻訳です。ストラテジーというのは「作戦」とか「戦略」という意味がありますので、「読むための戦略」を知ることが大切だということになります。読んで分かるような戦略を使いながら読むことで、内容がよりよく分かる、分かれば面白くなる、というわけです。(p.114)

 「読解力を向上させる6つの方略」が表にまとめられていました。「方略の名前」と「具体的な活動」が書かれています。犬塚先生の研究と、アメリカの研究機関の報告(National Reading Panel)をもとにしたものだそうです。

読解力を向上させる6つの方略(p.121)

  • 基本的な読み方コントロール
    • あれ?と思ったらゆっくり読む
    • 分からないと思ったら何回か読んでみる
  • 明確化
    • 「コレ」「ソレ」などが何を指しているかはっきりさせる
    • あいまいな表現のものをつまりどういうことか言いなおす
    • はっきり書かれていないことを足して言いなおす
    • 自分の言葉で言いなおす
  • 要点把握
    • 大事そうなところを見つける
    • キーワードを見つけて目立つようにする
    • だいたいどういう流れなのか図にする
    • 箇条書きにする
  • 理解チェック
    • 分からないところはどこか考える
    • 自分がちゃんと分かっているか確認する
    • 先生ならどんな質問をするか考える
  • 構造注目
    • 文章の段落構造に注意する
    • 接続詞に注目して話の流れを捉える
    • いくつかのまとまりを作って整理する
  • 知識の活用
    • 関連することでなにか知っているか思い出す
    • 知っていることと同じところ、違うところを考える
    • 知っている内容と結び付ける

 こうして見てみると、段落に番号をうって、その構造を見つけて、というふうに国語の授業でやってきたことは方略だったんだな、ということがわかります。本の中でも、ヨシキさんというキャラクターの「学校の授業は、読むための方略っていうより、授業の課題って感じで、本を読むとき自分が使える作戦とか工夫の練習をしているって考えたことがなかった」という言葉に、犬塚先生は以下のように答えていました。

以前中学生に調査をしたことがありますが、ヨシキさんのように思っている人は多いですね。「あれは授業でやること。自分が本を読むときにやることとは考えていなかった」という感じです。一方、国語の先生としては「授業でこんなに教えてるんだから、きっとみんな方略として身につけているはず」という気持ちもあるようです。先生としては、方略を教えているつもりでも、生徒たちが自分自身で使っていく”作戦”だとはなかなかハッキリ言わないために、授業中の課題だから授業が終わったら関係ない、と考えてしまうのかもしれないですね。まずは先生が”あからさまに”教えてくれる機会が増えることが必要だといえるかもしれません。
学校での方略の練習という点についてもう一つ言うと、国語以外の授業の時間に方略を使って読むという機会があまりないということも本当は問題なんです。方略をきちんと身につけるためには、「本当に意味がある場面」での練習が大事だからです。「国語」は、読むこと自体が目的になっている場面なので、読み方を教えてもらったり、基本的な練習をする機会としてとても重要です。ですが、読むことは、ほかの教科や自分自身の趣味など、「理解して何かができるようになる」ことを目的にしている場面で、方略を使って読むことが重要です。(p.122-123)

 テクノロジーの発達によって、さまざまな情報に子どもたちが接することができるようになります。読むことによってどのように情報を得ていくか、ということは非常に重要なことだと思います。そのためのヒントがこの本のなかにはあるのではないかと思いました。

(為田)