河合雅司さんの『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』を読みました。表紙カバー折り返しのところにはこんなことが書かれていて、将来の推計について興味をもって手に取りました。
「直近5年間の出生数は毎年4.54%ずつ減少」――。このペースで減り続ければ、日本人人口は50年で半減、100年後に8割減となってしまう。もはや少子化を止めることはできず、日本社会の激変は避けられない。“不都合な現実”に対し、われわれはどうすべきか。答えは、人口減少を前提とした社会への作り替えだ。独自の分析で四半世紀前から警鐘を鳴らし続けてきた人口問題の第一人者が「縮んで勝つ」という”日本の活路”を緊急提言する。
そもそも「はじめに」のところで少子化対策について厳しいコメントが書かれていました。よくニュースで出てくる「合計特殊出生率」と「出生数」の数字の違いなど、きちんと考えずに見ていてはいけないなと思わされました。
周回遅れの最たるものが、少子化対策である。子育て支援の強化だけで人口減少対策をしたかのような気になっている政治家は多いが、すでに手遅れだ。
国会議員や首長、経済団体の幹部などには、いまだ「出生率が上がれば、出生数は増える」と固く信じている人が少なくない。
だが、これらが事実誤認であることは2005年と2015年の”ねじれ現象”が証明している。2005年とは合計特殊出生率が当時の底である1.26に落ち込んだ年だ。その後の子育て支援策もあって2015年には1.45にまで回復した。しかしながら、出生数のほうは106万2530人から100万5721人へとむしろ減ってしまった。
なぜ”ねじれ現象”が起きたのかといえば、出産期である25~39歳の女性人口が17.7%も減ったためだ。出生数減少の真の原因は「母親不足」なのである。
2023年までの直近10年をみると出生数は29.4%の大激減となったが、これも「母親不足」によるところが大きい。この間の25~39歳の日本人女性は19.0%も減っている。これに未婚率の上昇や夫婦がもうける子ども数の減少といった結婚や子どもに対する人々の価値観の変化が加わり、急落したのである。(p.4-5)
「少子化対策の強化など無駄だ」と言いたいわけではないが、もはや日本は出生数の減少も、人口減少も止めようがないのだ。年間出生数が50年もせず10万人を下回る可能性を否定できず、100年もすれば日本人は8割近く減る。出生数の回復を待ってはいられないということである。事態がここに至っては、政府が取るべき対策はこの”不都合な現実”を受け入れ、人口が減ることを前提として社会を作り直すことだ。このままでは足下から日本社会が崩れていく。(p.6)
「はじめに」の後、本編で人口減少していく日本でどんなことが起こるのかが書かれるのですが、そのなかでは「学び舎は遠くになりにけり 小中学校統合後に「20キロ以上通学」の子が1割」などのテーマも書かれていました。
人口推計については、自治体単位でやっているところもあるようです(僕が目にする機会がないだけで、多くの自治体がやっているのかもしれないですが…)。
神奈川県小田原市が出している「児童生徒数・学級数の将来推計について」では、地域別・学校別児童生徒数の将来推計や今後10年間の小学校の学級数の変化などが公開されていました。児童生徒数の減少、遠距離通学者の増加などを考えるとデジタルを活用できる学校にして備えておく必要があるように思いました。
もうひとつ、神奈川県秦野市が公開している「みらいの学校整備指針(案)について」でも、児童生徒数の推移や学級数の推移などを掲載していました。
児童生徒数が減少して、学校がどのように変わっていくのか、地域がどのように変わっていくのか、ということについて、きちんと推計を出して公開している自治体があるのはとてもいいなと思いました。
『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』のなかでは、日本に残された7つの活路として、以下の7つが紹介されていました。
- 外国人依存脱却
- 女性の戦力化
- 1人あたり利益向上
- 高付加価値化
- 海外展開
- 30万人生活圏
- 地域集住
学校と関連づけながら考えていかなければならないことも多くありそうだと感じました。
(為田)