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192Cafe公開イベント #6「SI スクール・アイデンティティ ー らしさの追求で価値を高める」レポート(2025年1月18日)

 2025年1月18日に192Cafe公開イベント #6「SI スクール・アイデンティティ ー らしさの追求で価値を高める」が、武蔵野⼤学附属千代⽥⾼等学院・千代⽥国際中学校にて開催されました。192Cafeは、私立小学校の先生方を中心としたコミュニティで、為田は事務局としてお手伝いをさせていただいています。

オープニング

 今回、為田が事務局としてオープニングのMCを務めさせていただきました。今回、運営チームでテーマを「スクール・アイデンティティ」に決めたときに思い出したのは、ピーター・ドラッカーの本で読んだ、「何をもって憶えられていたいかね?」という言葉でした。ドラッカーが13歳のときに宗教の先生から問いかけられた言葉らしいのですが、これは人に対してだけでなく、学校に対しても言えることだと思っていました。
 それぞれの学校が、何をもって憶えられていたい、という姿をもっているか。「○○小学校って、~~な学校だよね」と憶えられたい姿を描けているか。学校側が描いている憶えられていたい姿を、児童生徒・保護者・受験者・教育業界が同じように描いているか。そうしたことを考える必要があると思ったのです。
 その「憶えられていたい姿」こそが、スクール・アイデンティティになるかな、と思ってもいますし、これは学校経営者や管理職や学校広報の担当者だけの仕事ではなく、一人ひとりの先生方の日々の授業とも密接に関わってくることだと思っています。

 そうした意味で、今回のイベントに登壇していただいた、就実小学校の海野誠二 校長、敬愛小学校の龍達也 校長、千代田中学校・高等学校(予定)の木村健太 校長、新渡戸文化学園の平岩国泰 理事長は、それぞれに各校の「らしさ」を作ってきている先生方だと思い、プレゼンテーションを依頼させていただきました。

「創立10年目-学校づくりのリアル」就実小学校 海野誠二 校長

 就実小学校の海野誠二 校長によるプレゼンテーションは、就実の歴史を紹介することからスタートしました。2024年度に開校10年目を迎えた岡山の就実小学校は、就実学園全体としては10年の歴史があります。学校名の「就実」は、建学の精神である「去華就実(華を去り実に就く=外面の華やかさにとらわれることなく、内面の豊かさと知性の充実に努める)」から来ています。

 建学から120年の歴史があるなかで、建学の精神をずっと大切にしつつ、時代ごとに「どういう教育が必要なのか」ということを考えてきた、というお話を伺いました。印象的な話としては、海野校長先生がおっしゃった、「国公立大学に何人いれるか、はもう流行らない」という言葉でした。かつては岡山県でそうしたことが学校の価値を測る尺度になっていたこともあったでしょうが、「いまはどうなのか?」ということを見ながら、学校を変えてきているというお話をされていました。
 もうひとつ、2009年から就実中学校・高等学校は女子校から共学校に変わりましたが、そのときの話のなかで、「傾いてしまってから共学化しても遅い」という言葉をおっしゃっていたのも、時代に合わせてスクール・アイデンティティを変えていく、ということを示している言葉だなと感じました。

 伝統にとらわれるのではなく、いまの社会を見て、さらに未来を見据えて教育内容を変えていっているそうで、英語イマージョン教育、独自の探究学習(個人探究/縦割り探究/教科探究)などに取り組んでいるそうです。
 また、こうした未来を見据えた教育とはどういうものか、それをなぜ就実小学校は行うのか、ということを保護者にきちんと伝えている、とおっしゃっていました。

 就実小学校の未来を考えるときに、周囲の学校や就実小学校がある岡山に近い環境にある学校との比較を行った、というお話も印象的でした。
 学校のもつ「らしさ」は地域にもよるので、時代の変化と地域性の両方を考えながら学校の「らしさ」を作っていっているということを感じられるプレゼンテーションでした。

「SI確立へ向けた広報戦略」敬愛小学校 龍達也 校長

 敬愛小学校の龍達也 校長先生のプレゼンテーションは、龍先生が毎日発信している敬愛小学校のブログの紹介からスタートしました。14年間、毎日発信しているそうです。このブログが、「敬愛小学校とはどういう学校なのか」ということを常に伝え続けているメディアになっていると感じました。

 学校のホームページを、ただの情報公開のツールとして運用しているのではなく、敬愛小学校「らしさ」を作る、敬愛小学校ならではの教育モデルを作るブランディングのツールとして運用していることがわかります。
 学校として「憶えられたい姿」と「憶えられている姿」があって、それをすり合わせるためのツールとして、ブログを通じて毎日「こういう授業をしています」「こういうふうに子どもたちを育てていきたいですよね」とメッセージを発信しているのだと思います。
 毎日ブログを書くために、龍先生は教室を歩き回って、伝えたいことを探しているそうです。校長先生になる前、広報部長だった頃から始めた、ということでした。

 こうしてブログを通じてメッセージを発信し続けて、それを学校説明会などの場で保護者の皆さんにも知ってもらって、読んでもらっているそうです。こうして、保護者の皆さんも敬愛小学校がやりたいことがわかり、実際の授業の様子のなかでそれが実現されていることがわかるようになります。
 また、ブログは、保護者だけでなく教職員も読んでくれているそうで、保護者だけでなく、敬愛小学校を一緒に作っている仲間である先生方とも学校が目指している「らしさ」を共有することができるようになっています。

「創立137年目の大改革」千代田中学校・高等学校(予定) 木村健太 校長

 2025年度に校名変更予定の千代田中学校・高等学校の木村健太 校長先生は、最初に経団連が作った動画「20XX in Society 5.0~デジタルで創る、私たちの未来~」を紹介して、「これよりおもしろい社会を子どもたちが創造していくだろう、と思っている」という言葉でプレゼンテーションをスタートしました。

 木村先生のプレゼンテーションで印象的だったのは、次の社会を作る世代についての言及が多かったことです。経済産業省「未来人材ビジョン」から、「常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す能力」「夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢」「グローバルな社会課題を解決する意欲」「多様性を受容し他者と協働する能力」といった、根源的な意識・行動面に至る能力や姿勢が求められる、ということを紹介していました。

 学校が「未来をつくる場所」になってほしい、そのためには、楽しいことが大事だ、とおっしゃっていました。「学ぶようにあそび あそぶように学ぶ」。そのために、「本気の大人」を学校に招き入れているそうです。木村先生自ら、どんどん本気の大人を探して、生徒たちと本気の大人が一緒に学ぶ環境を作っている、という話をされていました。

 木村校長先生も含めて、千代田中学校・高等学校の先生方も「本気の大人」の一人だと思います。生徒たちには、広く浅く学ぶよりも、深くどんどん掘っていく学びをしてほしい、とおっしゃっていました。自分の学びたいことを深く掘っていけば、高校の分野を越えて最先端の論文も読みたくなる。最先端の論文は英語で書かれていることが多いから、英語も学ぼうと思う。AIだって何だって使わなきゃいけなくなっていきます。

 生徒たち一人ひとりが自分の好きなことをこうして深めていくのであれば、当然一人ひとり学びのストーリーは違うものになります。みんなが自分の本気を追求して学んでいく、そういう学校になれば「未来をつくる場所」となるのだろうな、と感じました。

「未来の学校をこの世に描き出す」新渡戸文化学園 平岩国泰 理事長

 新渡戸文化学園の平岩国泰 理事長のプレゼンテーションは、最初に「今こそ、未来の学校づくりが必要。ならば新渡戸がこの世に描こう」と言い、新渡戸文化学園でどのようにスクール・アイデンティティを再定義し、学園でそれを育んでいっているのかを教えてもらうような時間でした。

 新渡戸文化学園の理事長に就任したときに新渡戸の先生方の前で行った決意表明を教えてもらいました。学園として目指したい姿として、「全ての主語を子どもたちにしたい」「長所に注目した学校でありたい」「子どもたちが憧れる先生にしたい」「学校と社会をシームレスにしたい」「学校とアフタースクール 最強タッグにしたい」「日本中を幸せにする学校を作りたい」という6つの言葉を伝えたそうです。
 その先に、「Happiness Creator しあわせをつくる人」という言葉も伝えたそうです。僕は新渡戸文化学園は中学校・高校の授業も、小学校の授業も参観させていただいたことがありますが、この「Happiness Creator」という言葉は、先生方が子どもたちに伝えているところをよく見ましたし、先生方のさまざまな判断のときに立ち返る理念として機能している言葉だとずっと感じてきました。

blog.ict-in-education.jp

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 学園の柱として、水曜日を探究の1日にしていることや、みんなで同じところに行く修学旅行をスタディツアーに変えたことなどを紹介してもらいました。スタディツアーは、全国各地に行き先ができてきて、先生が全部を引率することができなくなってしまったとき、保護者に相談したら保護者が「スタディツアーを続けてください」と言ってくれたそうです。
 ここでもまた、新渡戸学園が「Happiness Creator」を育てることを目指していることをきちんと保護者に伝えているからこそ、対等に「どういう行事がいいのか」を語り合える関係になっているのだと思いました。
 こうしたエピソードから、新渡戸学園での「Happiness Creator」という言葉はスクール・アイデンティティになっているし、それを保護者に伝えて共有することの大事さを感じました。

Padletで感想や疑問を共有

 今回、4人の先生方にプレゼンテーションをしていただいた後で、参加者の皆さんにはPadletに感想・コメント・質問を書き込んでもらいました。プレゼンテーションを聴いて感じたことや、もっと聴きたいと思ったテーマなどを1つのPadletに書き込んでもらうことで、情報を集約することができます。

 たくさんの感想・コメント・質問を書き込んでもらいました。この後に行う登壇者別セッションでのトークテーマのリソースにもすることができると思ったからです。実名で書き込んでいる参加者の方もいらっしゃるので、名刺交換などでネットワークを作るときにも、「あ、あのコメントを書いていた方ですね!」となったらいいなと思って、Padletを用意しています。

登壇者別セッション

 4人の先生のプレゼンテーションが終わった後は、登壇された先生方を囲んでもっと詳しく話を聴けるセッションの時間を30分ほど設定しました。全体に向けてのプレゼンテーションで終わりではなく、「さっきの話なんですけど…」ともっと詳しく話を伺ったり、「うちの学校では…」とディスカッションをしたりできる時間となりました。
 4ヶ所でのセッションには、192Cafeの事務局メンバーがディスカッションをサポートするために入っていました。「4人とも聴きたい!選べない!」という参加者もいらっしゃっただろうなとは思うのですが、どこかを選んでいただきました(結果的には4人の先生方、ほとんど同人数で15人から20人くらいが集まって話すセッションとなりました)。

クロージング 洗足学園小学校 赤尾綾子 教頭

 最後に、クロージングスピーチを洗足学園小学校の赤尾綾子 教頭先生にお願いしました。今回、4人の校長先生・理事長先生のプレゼンテーションを聴いて、学校が「どのようになりたいか=スクール・アイデンティティ」を描き、それを実現していく方法について学ぶことができました。
 ただ、リーダーだけがスクール・アイデンティティを描いていても、学校全体で実現するわけではありません。それを実現するためには、学校全体での動きが必要であり、その要ともなるのは学校のNo.2である教頭先生だと思います。だからクロージングスピーチを赤尾教頭先生にお願いしました。

 赤尾先生のスピーチのなかでは、登壇された4人の先生がイラストで出てきました。めちゃくちゃかわいいです。後日、赤尾先生に答え合わせをしてもらったところ、左から木村先生、龍先生、海野先生、平岩先生とのことでした。言われるとそう見えてきます。すごいw

 赤尾先生は、かつては「私学だからこそ一人1台のiPadをもって学ぶ…」などがアピールにもなったが、GIGAスクール構想が実現されて公立学校でも一人1台の端末を使って学ぶようにもなってきている、とおっしゃっていました。公立学校だけでなく、学童保育や習い事なども考えると、たくさんの選択肢がいまはあって、「私学だからこそのものは何だろうか」と考えることが必要だ、という問題提起がされました。
 赤尾先生は、「私学だからこその建学の精神がある。それを現代にあわせたわかりやすい表現として伝えていくことが大事だ」という話をされていました。

まとめ

 「スクール・アイデンティティ(学校の「らしさ」)という今まで192Cafeであまり取り扱ってこなかったテーマにチャレンジしましたが、学校の「らしさ」を考えるときには、当然「どんな授業をするのか」「どんな子どもを育てたいのか」ということも入れて考えなければなりません。
 そうした動きをやっていこう、と私立小学校の先生方に限らず、公教育を支える先生方や企業人ががんばっていくひとつのきっかけになればいいなと思いました。

(為田)