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戸田市立戸田南小学校 授業レポート(2025年1月10日)

 2025年1月10日に戸田市立戸田南小学校を訪問し、5年生が「プレゼンテーションの作り方」を学ぶ授業にゲストティーチャーとして参加させていただきました。5年生 全4クラスの子どもたちが自分のChromebookをもって体育館に集まってくれました。

 授業の前半で「プレゼンテーションのコツ」を紹介してから、後半で子どもたちはグループで作っているプレゼンテーション用のスライド作りを進めていきました。

 この日、僕が子どもたちに伝えた「プレゼンテーションのコツ」は、株式会社クリエイティブシフトが開発した「プレゼンテーション・パターン」を、「パターン・ランゲージ授業づくりパートナー」である弊社フューチャーインスティテュートが教材として使えるように設計したものです。
 パターン・ランゲージは、慶應義塾大学の井庭崇 先生が研究している新しい「知恵の伝承&学び」の方法です。井庭先生が研究・開発している数多くのパターン・ランゲージのなかで、プレゼンテーションに関わるパターンをまとめたものが、「プレゼンテーション・パターン」です。

パターン・ランゲージは、すでに豊かな経験を持っている人から「コツの抽出」をし、他の人が「やってみたくなるヒント集」として提示するという、新しい「知恵の伝承&学び」の方法です。

株式会社クリエイティブシフト「パターン・ランゲージとは?」

 「パターン」という言葉が子どもたちには馴染みがないと思ったので、授業の中では「パターン」を「プレゼンテーションのコツ」と言い換えて説明をしています。授業の最初に、「今日は“プレゼンテーションのコツ”をみんなに伝えたいと思ってきました」と言って、ロイロノート・スクールをホワイトボードに映して、「メインメッセージ」「ひとりひとりに」「適切な情報量」「ことば探し」「図のチカラ」などの7つのパターンを子どもたちに順に紹介していきました。
 11月に戸田市立戸田第一小学校で行った「プレゼンテーションのコツ」を学ぶ授業では9つのパターンを紹介しましたが、今回は7つのパターンに絞り込みました。全部で34のパターンがあるので、自分たちで「もっと他のパターンもあるなら知りたい!」となってくれたらいいと思いますが、最初からたくさんは敷居が高くなるので、5年生が自分たちで用意しているプレゼンテーションを「もっと良くしたい」と思えるようなきっかけになりそうなパターンを7つ選びました。

 パターンが書かれたカードを1枚ずつロイロノート・スクールで大きく映して、パターンのタイトルを紹介し、そのパターンの意味と、どういうふうにプレゼンテーションに活用できそうか、ということを紹介していきました。
 選んだ7つのパターンのなかには、たくさんの子どもたちが頷いてくれるパターンもありますが、よくわからなそうな顔をされるパターンもあります。紹介したパターンを記憶して言えるようになってほしいわけではありません。誰かのプレゼンテーションを聴くときや、自分でプレゼンテーションをするときに、評価の軸として使えるようにいろいろなパターンを知ってほしいと思っています。

 「プレゼンテーションのコツ」を紹介した後で、それを実践的にプレゼンテーションを作っていく作業のなかでどう使っていけばいいのかを体験してもらいたくて、望月幸太 先生が子どもたちに「できているところまででいいので、自分たちのプレゼンテーションをここで映してコメントをもらいたいグループはありますか?」と訊いてもらいました。
 こちらが用意したサンプルのプレゼンテーションを見るよりも、同じ5年生が授業でいままさに作っているプレゼンテーションを見ながら、さっき紹介された「プレゼンテーションのコツ」と照らし合わせていきたいという意図でした。
 いくつかのグループが手を挙げてくれたなかから、1つのグループの作っているプレゼンテーションのスライドをプロジェクタで映してもらいます。それをみんなで見ながら、さっき伝えた「プレゼンテーションのコツ」が使えているところを評価したり、「プレゼンテーションのコツ」を使って考えるといいのではないか、というところをコメントしていきました。

 見せてもらったのは、「戸田南小学校の階段の歩き方のルール」について伝えたいというプレゼンテーションでした。最初にパターン「メインメッセージ」を思い出してもらいながら、「メインメッセージは何?プレゼンテーションを聴いてくれた人にどう思ってほしいの?」と質問してみると、子どもたちは自分たちなりに言葉でしっかりメインメッセージを捉え直してくれました。
 また、プレゼンテーションのなかにあった「階段で怪我をしたことがある」という文章については、パターン「ことば探し」を思い出してもらいながら、「どれくらいの怪我なのかをもっと詳しく伝えたら、聴く人の受けるイメージは変わるかもしれないよ?」とコメントしました。

 具体的に「こう変えてほしい」と指示をしたいわけではありません。できるようになってほしいのは、子どもたちが伝えたいことが、プレゼンテーションを聴いている人たちに伝わるように、「プレゼンテーションのコツ」を手がかりにして、最後の最後まで何度もプレゼンテーションを練り直すことです。
 「いまはみんなChromebookを使ってプレゼンテーションを作っているでしょう?昔は、プレゼンテーションは画用紙に書いていたから一度書いたものを書き直すのは、すごく大変だったんだよ。いま、みんなはChromebookで簡単に直せるでしょう?だから何度でも直そうよ!」と伝えました。

 その後、体育館のあちこちでグループでプレゼンテーション制作をする子どもたちの間を歩き回って、スライドを見せてもらいました。「自分たちのメインメッセージは何だろう、って考えちゃいました」というふうに、「プレゼンテーションのコツ」として紹介したパターンを使ってプレゼンテーションを見直している子たちがたくさんいました。

 こうして他の人のプレゼンテーションにコメントをする機会を授業の中に作ることで、建設的なコメントをやりとりして実際にプレゼンテーションが良くなっていく経験を子どもたちにしてもらいたいと思います。

(為田)