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EDIX東京 イベントレポート No.1(2025年4月23日)

 2025年4月23日に東京ビッグサイトで開催されているEDIX東京へ行ってきました。EDIXはたくさんのセミナーやプレゼンテーションを聴き、最新情報や授業事例などを知ることができる場であり、「教育の情報化」を目指す仲間たちと会える場だと思っています。

 BPS株式会社「超教科書」のブースで行われた、帝国書院 川島新菜さんのプレゼンテーション「帝国書院のデジタル地図帳はここがスゴイ!授業内デジタル地図帳活用例」の様子をレポートします。

デジタル地図帳でできること

 令和7年度版『中学校社会科地図』の指導者用デジタル教科書・教材の導入率が66.0%だそうです。日本の中学校のおよそ3校に2校の割合で帝国書院の指導者用デジタル教科書・教材を導入していることになります。多くの先生が、教室で大型ディスプレイやプロジェクタを使って指導者用のデジタル地図帳を提示しながら生徒たちに解説や発問をしていると思います。

 川島さんは『中学校社会科地図帳』のデジタル教科書でできることとして、以下の4つを紹介しました。

  • 地図帳内の要素(土地利用、都市名など)を分けて表示することができる。
  • 地図帳に収録されている主題図どうしを並べて比べたり、重ねて表示したりできる。
  • 先生が配信したアンケートに生徒が答えると、その結果を地図化して表示できる。
  • 地図帳内図版の実際の距離が計測できる。

 これら4つの機能について、実際のデジタル地図帳のページで見せてもらいました。個人的には、地域別の主題図を比べてみることで、多面的な視点から地図を読み解く例が印象的でした。紙の地図帳では離れたページにある主題図を、並べて表示して比較できるのはデジタルの利点だと思います。
 そのほかにも、世界92都市、日本82都市の雨温図データを収録してあるそうです。雨温図は並べて表示して比較することもできます。そのほかにも世界と日本の項目別統計も多数収録されていて、円グラフや地図で表示することもできるそうです。

 これらの豊富なコンテンツは、先生方の教えたい内容と合わせて提示することで、児童生徒の学びの幅を広げられると思います。また、デジタル地図帳を使わずにインターネットで統計資料を調べるとノイズもたくさん表示されてしまうので、デジタル地図帳で良質な資料にすぐにアクセスできることは重要だと思います。

中学校の地理の授業でデジタル地図帳を使ってみる

 基本的な機能を紹介した後で、川島さんは帝国書院『中学生の地理』のデジタル教科書から「中京工業地帯の発展と名古屋大都市圏」の単元でデジタル地図帳コンテンツを使う授業をデモンストレーションしてくれました。
 デジタル教科書の本文を表示して、中京工業地帯で自動車産業が盛んなだけでなく、自動車を作るための鉄鋼業も同様に盛んであるということを説明した後で、デジタル地図帳で「日本の自動車工業」と「日本の鉄鋼業」の主題図を並べて比べて見せてくれました。

 また、愛知県内の自動車工場で作った自動車を、名古屋港と三河港から船で海外へ輸出することをデジタル地図帳で解説していきます。このときには、名古屋港と三河港の場所を拡大して見せて、その周囲には自動車積み出し基地があるということも紹介します。
 デジタル地図帳では、レイヤー切り替えメニューがあり、地図上に表示したい情報を選ぶことができます。こうすることによって、地図に掲載されているたくさんの情報から、フォーカスしたい情報だけを表示することができます。川島さんは、地図に「交通」と「自動車生産のようす」だけを表示させて、さらに自動車工場から港までの高速道路の距離や所要時間を見せてくれました。
 こうしたデジタル地図帳の機能を活用することで、先生は「ここに注目して考えてほしい」というふうに生徒たちに情報を手渡して、理解を導く助けができると思います。

「歴史」「公民」のデジタル教科書との連携もある

 「デジタル地図帳は便利そうだけど地理の授業でしか使えないし、今年は歴史・公民しか担当してないな…」と思っている先生もいるかもしれませんが、地図帳は地理だけでなく、歴史や公民の授業でも使うこともができます。
 令和7年度版からの新機能「学びコネクト」によって、帝国書院のデジタル地図帳は「地理」「歴史」「公民」の各デジタル教科書との間で学習要素ワードが連携されています。紙面タイトルや重要語句などの学習要素ワードを検索すると、関連した教科書紙面やコンテンツが自動抽出されて、すぐにそのページを開くことができます。

 学びコネクトの機能を使って、学習要素ワードをキーワードにして歴史の教科書と地図帳を同じ画面の中で開いて、ページを行き来しながら先生方は教材研究ができるようになります。また、そうした教材研究の仕方ができるようになると、生徒たちへの問いかけの仕方も変わっていくのではないかと思います。

まとめ

 EDIXでは、こうしてプレゼンテーションで聴いた機能を、その場ですぐに試してみることができるのが魅力的だと思います。特に、実際に教科書を編集しているスタッフや、機能を開発しているスタッフがブースにいることもありますので、より詳細な質疑応答ができると思います。
 僕も、新機能「学習要素ワード」が実際にどんなふうに設定されていて、どんなふうに教科書の枠を超えて横に繋がっていくのか、実際に使ってみたいと思いました。


 No.2に続きます。
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(為田)