教育ICTリサーチ ブログ

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電子図書館サービスを提供するRakuten OverDrive・田島さんインタビュー No.2

 OverDrive事業の日本代表をつとめる、楽天株式会社の田島由美子さんにインタビューをさせていただくなかで、特に興味深いと感じたのは、Rakuten OverDriveが提供する司書向けのサービスでした。タブレット端末等ICT機器の導入が進んでいる小学校、中学校、高校の図書室で司書の先生が、Rakuten OverDriveのシステムで自分好みの図書室をオンライン上に作り上げることができるのではないかと思いました。

 田島さんは、図書館司書の先生の仕事として、以下のようなことが変わる、とおっしゃっていました。

  • 司書向けの購入サイトでレコメンド機能が働くことで選書の業務が効率化される。
  • 選書システムが充実していて、新しい本を仕入れるのが簡単。
  • 電子書籍なので、蔵書の整理・管理が簡単。
  • 貸出や返却などのアナログな業務がなくなり、督促などの業務が軽減される。

 Rakuten OverDriveのシステムを採用することで、学校の図書室で電子書籍の貸出ができるようになります。そうすると、児童生徒はRakuten OverDriveにアクセスして「コレクション」から読みたい本を選ぶ機能を使うことができます。
 司書の先生は自分でコレクションを作り、その中にどんな本を入れるのか決めることができます。例えば、「Classroom Management」や「オリンピック・パラリンピック」などのようにコレクションを作り、それに関連する本を並べることで、児童生徒に読んでもらいたい本を、グループでまとめてサイト上に陳列することができます。
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 学校の図書室では、さまざまなテーマでコーナーを作る取り組みが実践されています。司書の先生を中心として、児童生徒による図書委員会の活動、保護者ボランティア活動などで、特集コーナーを作っていることも多いと思います。そうした活動を、オンライン上で行うことができるようになってきているということです。
 紙の本を並べてこうしたコレクションを実際の図書室に作っても、その本が1冊しかない場合、一人が借りたら他の人が読むことができなくなってしまいます。調べ学習などで使う参考文献についても、実は同じことは起こりえます。クラスのほとんどの児童生徒が、同じ本を読みたい、というふうになった場合、いまの学校の図書室では対応ができないことが多いように思います。電子書籍でコレクションを作り、1冊の本を同時に複数の児童生徒が読むことができるようになれば、こうした問題を解決することができます。

 ただ、現状では、書籍の複数閲覧については、ライセンス契約の種類によって制限があるそうです。洋書では、ライセンスの形態によって、「複数同時アクセス可能=複数人数で同時に読める本」と、「1冊につき1人だけが読める本」とがあり、現在、複数人数で同時に読める電子書籍は、2割ほどにとどまっているそうです。(日本の書籍には複数同時アクセス可能なタイトルはないそうです。)
 田島さんは、こうした現状は、電子図書館サービスと電子書籍がどれくらい普及するか、にかかっているといいます。普及が進むにつれて、「複数人数で同時に読める本」のライセンス契約が増えていけば、学校の図書室で、紙の本では1冊しか入れていなかったような本を、クラス全員がタブレット端末で同時に読み、それぞれがハイライトした箇所を見ながら授業を進める、ということができるようになるかもしれません。そうした図書室が多くできてくればいいな、と思いました。

 No.3に続きます。
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(為田)