教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

葉山町立長柄小学校 授業レポート(2024年2月7日)

 2024年2月7日に葉山町立長柄小学校を訪問し、1時間目と2時間目で6年2組のプログラミングの授業をさせていただきました。昨年度も長柄小学校で6年生にやってもらったアイロボットのプログラミングロボットRootを教材として使いました。
 「今日はこのロボットをプログラミングする授業をします」とRootを見せると、「お、ルンバみたい!」と言う声が子どもたちから聞こえます。ロボット掃除機ルンバのことを知っている子は、だいたいの動きを想像できます。そこで、「ロボット掃除機ルンバって、壁aaにぶつかったときにどんなふうになるか知ってる?」と質問すると、「後ろに戻る」とか「止まる」という声が返ってくるので、そうした動きも全部プログラミングされていることを伝えます。
 「Rootはルンバの会社が作っている小さいロボットです」と伝えて、Rootのプログラミングをしてみようと言って授業を始めます。子どもたちは自分のChromebookを持ってきているので、Googleクラスルームで配信した「iRobot Coding」のサイトにアクセスしてもらいます。サイト上で、簡単にブロックを組み合わせる方法と、プログラムを実行して画面上でRootを動かす方法だけを説明して、さっそくみんなにやってもらうと、すぐにできるようになります。

 ブロックを組み合わせてプログラミングをする練習をしたら、2人に1台ずつRootを配布して箱を開けてもらい、電源をつけてもらいます。電源が入ってRootの目が光るところで「かわいい!」と教室のあちこちから声があがります。
 僕は、Rootを使ってプログラミングを教えるときにいちばん好きなのがこの瞬間です。ロボットに愛着をもって、そして好きに動かしてみようと思ってもらうこと。それができれば、いろいろと細かくブロックの機能を説明しなくても、「できた!」「動いた!」と面白がってもらえると思います。それを大事にしたいと思っています。

 「iRobot Coding」のサイトでRootを接続してから、基本的なブロックの機能を知ってもらうために最初にミッションが書かれたワークシートを配布します。最初の2つのミッションだけを必ずやってもらって、あとは好きなものを選んでどんどんやってもらいます。残りの4つのミッションは、やってみたいものから自由にやってもらいます。
 どのミッションに取り組むかによって、子どもたちが作るプログラムは全然違うものになります。Rootを動かすことが楽しかったり、音を繋げて曲を演奏させるのが楽しかったり、LEDで光らせるのが楽しかったり、それぞれに楽しいと思うことは違います。それぞれに自分たちのやりたいことをやれることが重要だと思っています。

 子どもたちが自分で思いついたアイデアをどんどんプログラムを組んで試してもいい雰囲気を作ることを、僕はいちばん大事にしています。
 今回の授業では、Rootの上にペンケースを置いて運んだり、ペンをRootに挿して形や絵を描いている子がいましたが、このあたりも何も指示をしていません。自由にやってもらって、助けが必要であれば行って一緒に考えたり、取り組んでいる子が多い機能については全体に向けて説明して共有する、ということを繰り返していきます。

 円弧を描くブロックについても教えていませんが、教室の中で誰かが試してできることがわかると、その子のところへ行って、「どうやったの?」と言ってプログラムを見せてもらい、どんどんノウハウが教室の中で伝播していきます。

 Rootのプログラムを書く「iRobot Coding」には、3つのレベルが用意されています。レベル1ではイラストだけで設定できるブロックだけで構成されている基本的な動きをプログラムできます。レベル2では、ブロックのなかにテキストを入力できて長さや角度などを自由に指定できます。レベル3では、すべてをテキストで入力できるようになっています。
 最初に配布したワークシートに書かれているミッションは、全部レベル1でできるようになっているので、レベル2とレベル3は使わなくてもできます。ただ、自分たちでおもしろいプログラムを書こうと思ったら、どんどん細かいことをしたくなるので、何人かの子どもたちはレベルを自分で変更して、何も説明していないのに自分たちでどんどんプログラムを高度化させていきました。

 こうして、自分たちで「やってみたい!」「こうやったらいいんじゃない?」と、どんどん試すような雰囲気を作ることが、授業者としていちばん大事だと思ってやっています。
 プログラミングのブロックの意味を覚えてもらいたいわけではなくて、やりたいことをプログラムで実現しようとして、失敗して、それをデバッグ(修正)していく過程を学んでほしいと思います。それが、失敗しながら直していけばいい、というマインドセットをもつことに繋がると思いますし、そうした学びをするのにプログラミングはとても良い教材になると思っています。

 今回の6年2組の授業は為田が担当しましたが、この翌日と翌々日には長柄小学校の先生が6年1組と6年3組を担当してRootを使ったプログラミングの授業に挑戦してくれています。そのために、授業を見に来て、授業の様子も撮影して準備をしてくださっていました。こうして、少しずつ学校のなかでプログラミングの授業が広がっていけばいいと思います。

(為田)

戸田市立芦原小学校 授業レポート No.2(2024年2月21日)

 2024年2月21日に戸田市立芦原小学校を訪問し、松本明子 先生が担当する5年3組の算数「円と正多角形」の授業を参観させていただきました。松本先生と子どもたちは、自由進度学習に取り組んでいました。松本先生は、単元を通して子どもたちに学習してほしいことを提示し、子どもたちは自分で単元全体の計画を立てて学習を進めていきます。
 自由進度学習のツールとして、松本先生が子どもたちに配布したカレンダーを見せてもらいました。カレンダーには単元の最後に行うテストの日付が書かれています。そして、そのテストの日までに学習してほしいこととして、「教科書まとめ」「教科書問題」「実技」「プレテスト」「計算ドリル」がリストとして提示されていました。
 僕にこのカレンダーを見せてくれた子は、上のところに「1日2つ!できなかったらくりこしor家で!」と書き込んでいました。こうして自分でどのように学習を進めていくのかを決められるといいなと思いました。

 授業の最初に松本先生が子どもたちに、「この単元もだいぶ進んできているので、計画どおりか確認して」と言うと、みんなカレンダーを見て自分の学びの状況を確認して、今日は何をしようか考えて取り組み始めます。
 この後35分間、子どもたちは自分のすべきことを自分のやり方で学習していきました。早く終わっている子もいれば、じっくりと自分のペースで取り組んでいる子もいます。早く終わったのでクラスメイトに教えている子もいるし、より多くの問題に取り組んでいる子もいました。こうしたさまざまな学習の仕方が、ひとつの教室の中で見られるのが自由進度学習の特徴だと思います。

 松本先生から学習するべき項目として挙げられている「教科書まとめ」や「実技」の項目については、「MISSION」としてロイロノート・スクールやプリントで子どもたちに配布されていました。

 MISSIONへの取り組みをロイロノート・スクールでする子は、教科書の内容をまとめたり、問題を問いたりしていきます。それぞれの問題に指定の提出箱があるので、できたらそこに提出していきます。

 プリントで取り組むMISSIONには、教室のなかに「提出箱」のトレイと「返却箱」のトレイを2つ用意してありました。できたプリントは提出箱のトレイにどんどん出されていきます。松本先生がときどき提出箱のトレイにたまったプリントを集めて、評価・コメントをして返却箱のトレイに戻します。
 返却箱のトレイにプリントが戻ってきたのを知って、子どもたちがみんな取りに来て、松本先生が書いてくれた評価とコメントを見て「やった!」とガッツポーズをしている子もいました。

 ロイロノート・スクールの提出箱も、教室の提出箱のトレイも、評価・コメントを待っている間に子どもたちは待ちぼうけになるのではなく、次のMISSIONに取り組んでいました。単元単位で自由進度学習を行うことで、たくさんの課題を設定することができ、子どもたちが待たなければ学べない時間を極力減らせていると感じました。こうした点も、自由進度学習のいいところだと思います。

 ロイロノート・スクールの提出箱に提出されたものを、松本先生は手元のChromebookで確認し、チェックをしていきます。やり直し、再提出の子には△や?を書いて戻します。ただ提出されたカードを見て返すだけでなく、話しかけたり、問いかけをしたりしていきます。

 各自が自分で学んでいくだけでなく、どれくらい進んでいるのかをクラス全体で共有するための進捗表がホワイトボードに用意されていました。終わったところには、自分でスタンプを押していきます。こうして進捗状況を一覧しやすいのは、紙の方だと思います。

 授業の最後に、ロイロノート・スクールのふりかえりカードに取り組みます。「この時間の振り返りと次の時間に取り組みたいことをくわしく書きましょう」と書いてあるので、そこにふりかえりを書いていきます。次の時間に取り組みたいことを書けるように、この単元で松本先生から出されている、すべてのMISSIONが書いてありました。自由進度学習での計画を子どもたちに委ねるときには、こうした細かい工夫が重要だなと感じました。

 子どもたちに自分たちの学びの計画と実行を委ねる自由進度学習を、こうして子どもたちと一緒に作っていく取り組みが進んでいるのはとてもいいことだと思います。学年や教科、単元によってそれぞれ必要な工夫も違うと思いますので、こうしたノウハウが蓄積されていくのはとてもいいことだと思います。

 No.3に続きます。
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(為田)

戸田市立芦原小学校 授業レポート No.1(2024年2月21日)

 2024年2月21日に戸田市立芦原小学校を訪問し、石田卓矢 先生が担当する6年3組の理科「生物と地球環境」の授業を参観させていただきました。子どもたちは、食品ロス、海洋汚染、森林破壊、絶滅危惧種など、自分たちの興味のあるテーマを調べ、問題を発見し、その解決に向けての方法について調べて、最後にプレゼンテーションをします。
 授業の最初に石田先生は、「自分たちだからできるプレゼン」を目指してほしいと子どもたちに伝えていました。子どもたちはインターネットからも、Canvaなどのアプリからも、素材を選んで使うことができます。でも、そうしたどこかからもってきた素材よりも、自分たちで描くイラストや図を使ったり、自分たちで撮影した写真を使ったりする方が、「自分たちだからできるプレゼン」になるということを伝えていました。子どもたちがいろいろなツールを使いこなすようになってきたからこそ、先生が授業の中でこうしたメッセージを子どもたちに伝えていくことはとても重要だと思います。

 石田先生の話のあと、グループでの活動に入ります。どこで活動するかを自分たちで決めることができるそうで、教室に残って話し合いをするグループも、図書室へ移動するグループもありました。
 プレゼンテーションの準備に入っているグループは、Canvaやロイロノート・スクールを使ってスライドを共有して作っていました。共有していることで同時にスライドを編集できるので、内容ごとにページを分担して作ることができます。
 Canvaでスライドを作るのと同時並行で、プレゼンテーションの原稿を作っているグループもありました。Chromebookの画面を分割して、Canvaのスライドを表示させながら、Googleドキュメントで原稿を書いていました。
 CanvaもGoogleドキュメントも、共有設定が簡単にできるので、こうしたグループワークのときに便利です。教室で対面でディスカッションをして方向性やこれからやるべきことを決めたら、みんなで分担してすぐに作業に入れます。作業に応じて、どこでどのように作業をするのがいいのかを自分たちで決めることができます。

 図書室で活動をしていたグループは、本がたくさんあるので、テーブルの上に本を広げながら話し合ったりスライドを作成したりしていました。

 石田先生は教室と図書室を行き来しながら、それぞれのグループでどんなことを調べ考えているのかを見とりながら、さらに考えを深めていける問いを投げかけていきます。
 子どもたちが一人1台のChromebookでさまざまなアプリやツールを使いこなせるようになって、いろいろなことを表現できるようになったからこそ、「伝えたいことは何か」「この表現がいちばん伝わりやすいか」という本質的なところを先生がサポートすることが重要になってきていると思います。
 アプリやツールの使い方を教えることは、芦原小学校においてはもう先生のメインの役割ではなくなっています。先生のメインの役割は、アプリやツールを使って問いに向き合える環境を作ったり、さらに問いへと向かう手助けをするということになっていると感じました。

 No.2に続きます。
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(為田)

戸田市立新曽小学校 授業レポート No.2(2024年1月29日)

 2024年1月29日に戸田市立新曽小学校を訪問し、橋本拡 先生が担当する3年2組の社会「戸田市の人々のくらしのうつりかわり」の授業を参観させていただきました。この日の授業では、戸田市の様子のうつりかわりを「人口」「交通」「土地の利用」の3つの視点でまとめることをゴールとしていました。

 この授業では、最初に子どもたちが「人口」「交通」「土地の利用」の3つのエキスパート班に分かれて話し合って理解を深めます。その後で、3つのエキスパート班から1人ずつ集まって構成するジグソー班を作って、エキスパート班で学んだことを自分の言葉で説明します。そうして3つのテーマを総合して、「戸田市の人々のくらしのうつりかわり」について学んでいきます。

 最初に橋本先生は、「全員がアイデアを出すこと!」「人のアイデアをよく聞くこと!」「話し合いを楽しむこと!」という、3つの話し合いのポイントを子どもたちに紹介していました。
 その後で、この日の授業のタイムスケジュールが紹介されました。エキスパート班での話し合い(8分)→考えをまとめる(2分)→ジグソー班での話し合い(10分)→考えをまとめる(5分)→全体で共有(3分)というタイムスケジュールを橋本先生は伝えます。

 エキスパート班に分かれた子どもたちに、自分の担当するテーマの資料のカードがロイロノート・スクールで配られます。「人口」をテーマにするグループにはピンクのカード、「交通」をテーマにするグループにはブルーのカード、「土地の利用」をテーマにするグループにはグリーンのカードが配られました。
 配られた資料をエキスパート班のみんなで読んで、資料からどんなことがわかるかを読み取って話し合います。「人口」のエキスパート班では、資料を見ながら「若い人が減ってきてない?」「戸田市と埼玉県の人口の違いは…」というふうに資料を読んでいました。

 エキスパート班での話し合いを終えたら、ジグソー班に戻ります。自分の言葉でいままでエキスパート班で話し合っていたことを伝えなければいけません。橋本先生は「これからもとの班に戻るから、わからないところは、がんばってね」と言っていました。わからないところがあれば、エキスパート班のなかで質問したりして準備を進めていました。
 送られてきた資料のカードの下部には、資料から読み取れたことをまとめるスペースがあるので、そこにエキスパート班で話し合った結果をまとめて入力していきます。まとめ方に悩んでいる人は、「昔は○○だったけど、今は△△」みたいなまとめ方でもいいよ、と橋本先生は言います。

 最初に座っていた席に戻ってジグソー班で集まって、「人口」「交通」「土地の利用」の順番で、それぞれのエキスパート班で話し合ってまとめてきたことを発表して、最後にまとめを書いていきます。

 橋本先生は単元のゴール「戸田市の様子のうつりかわりをまとめよう」と書かれた黄色いカードをロイロノート・スクールで配ります。

 まとめの文章を書いているときには、エキスパート班での話し合いの成果をそれぞれが発表するのを聴いて、まとめのカードに書いていきました。発表している言葉を聴き取ってその場でまとめていくのが難しいという子たちには、エキスパート班で書いたまとめが書かれたカードをジグソー班のなかで児童間通信で送ってもいいかもしれないと思いました。
 ジグソー班のメンバーのまとめの発表をまとめることができなくて、結果的に自分のエキスパート班のことを中心にまとめてしまっている子が多かったように見えました。話し言葉だけでなく、書き言葉も含めて、他者の言葉をまとめて編集することができるのも、デジタルを活用しているからこそかなと思います。

 授業の最後に、一人ひとり書いてくれたまとめを、最後にロイロノート・スクールで提出してもらって、最後に各ジグソー班の代表にまとめたことを発表してもらいました。
 ロイロノート・スクールで資料やまとめの文章を書いていき、それを提出してみんなで見合うことで、教室内での情報のやりとりの量を増やすことができます。こうして、それぞれのグループでまとめたことをみんなで聴き合う、読み合う時間をとることはとても良い学びになると思いました。

(為田)

戸田市立新曽小学校 授業レポート No.1(2024年1月29日)

 2024年1月29日に戸田市立新曽小学校を訪問し、田尻令 先生が担当する6年1組の社会「長く続いた戦争と人々のくらし」の授業を参観させていただきました。前回1月22日に参観させていただいた授業では5時間で5つの課題(だいたい1回の授業で1つの課題)に取り組むペースになっていましたが、今回の授業では、単元全体で1つの課題に取り組むように授業が設計された、より自由進度型の授業を田尻先生と子どもたちが目指していました。

 今回の単元は全部で6時間で構成されていて、単元の学習の流れとして「課題決め」→「情報収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」→「発表練習」となっています。
 1回目の授業で、田尻先生は単元全体の内容を一斉授業の形式で子どもたちに伝えて、そこで学んだ内容を活かしながら子どもたちに調べたい課題を選んでもらっていました。3人~5人で作った10のグループが調べる課題は、「衣・食・住」「日中戦争」「空襲・爆弾」「特攻隊」「ポツダム宣言」「第二次世界大戦」の6つとなりました。

 この日は単元の2回目の授業で、単元の学習問題である「長く続いた戦争は、人々にどのような影響を与えたのだろう」から、各グループが調べると決めた課題にどんな繋がりがあるかを確認しながら、「情報収集」と「整理・分析」へと進んでいきました。

 各グループが、「課題決め」→「情報収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」→「発表練習」という学習の流れのどこまで進捗しているかがわかるようにシートも用意されていました。単元全体を通しての学習の流れが決まっていて、それが一覧できるようになっているので、他のグループの進捗状況もわかります。

 単元の最後の6回目の授業で、各グループがテーマについての発表会を行います。そのための動画やスライドを子どもたちは準備していきます。

 テーマを深掘りしていくときに自分たちで必要なことを学べるように、田尻先生は授業用スライドを提供していました。子どもたちは授業用スライドを見返したり、教科書の該当箇所を何度も読んできます。また、学習範囲の資料も教室にたくさん準備されていました。
 途中で子どもたちから、「授業に関係することなら、これも見てもいいですか?」とYouTubeやインターネット上の情報を見てもいいかどうか確認する質問があがっていましたが、田尻先生は「もちろん」と答えます。さまざまな情報を集めて、そこから自分たちでどの部分が必要なのかを選び取る活動をするために、自由を与えているように感じました。

 いろいろと調べていくと、途中で脇道にそれてしまったり、細かいところまで調べ過ぎてしまうケースもあります。教科書の内容から離れすぎてしまわないように、単元の学習問題「長く続いた戦争は、人々にどのような影響を与えたのだろう」と自分たちの課題がどう繋がっているかということを田尻先生が質問したりしながら活動が進められていきました。
 ここで、田尻先生が単元の学習問題と繋がっているかを確認しながら子どもたちに声掛けをしていくことがとても大切なことだと思いました。子どもたちは一生懸命調べていき、わかることが増えてきて楽しいものの、深掘りすることで雑学ばかりを身につけてしまう、「活動あって学びなし」の状況にならないようにするには先生のサポートが必要だと思います。子どもたちが既習の内容を活かしながら、「どうして?」「どのように?」など社会科らしい見方・考え方を働かせながらグループの課題に取り組めるようになることが必要です。

 最後の5分で、単元のふりかえりのワークシートをロイロノート・スクールで開いて、成果物を貼りつけ、その横に、この日の授業でどんなことをしたのかを書き込んでいきました。
 こうして成果物をふりかえりのワークシートに貼りつけてもらっていることで、田尻先生は子どもたち一人ひとりあるいはグループの進捗状況を見とることができます。

 また、一生懸命自分たちのグループでの活動に没頭しているからこそ、他のグループがどんなふうに調べたり、分析したりしているのかがわからないこともあります。
 毎回の授業の最初や最後に、クラス全体に対して、他のグループはこんなふうに進めている、ということを共有して先生が価値づけてあげるといいと思いました。

 自由進度型の授業で子どもたちが自分たちのペースで学習を進めているなかで、先生が果たすべき大切な役割は、「優れた学び方をしている子ども・グループの紹介」や「支援が必要な子ども・グループへの机間指導」になると思います。こうした役割は、先生だからこそできることです。そのためにも、進捗状況を常に見とれるようになっていることが重要です。

 前回の授業よりも「より個別最適になるように」と田尻先生がチャレンジした授業設計でしたが、こうして授業のねらいを明確にして先生方が新しいチャレンジをすることが大切だと感じました。

 No.2に続きます。
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(為田)

洗足学園小学校 授業レポート まとめ(2023年12月18日)

 2023年12月18日に洗足学園小学校を訪問し、一人1台のiPadを活用した授業を参観させていただき、授業をレポートしました。また、授業中だけでなく休み時間にiPadを使っている様子も見られました。昼休みには、自分たちが学校生活を快適に送れるように、どうiPadを使っているかを見せてもらうこともできました。ただ授業で使っているだけでなく、一人ひとりの大事なツールとしてデジタルが存在している様子をレポートしました。

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(為田)

鎌倉市立岩瀬中学校 授業レポート No.3(2024年1月26日)

 2024年1月26日に鎌倉市立岩瀬中学校を訪問し、仲井間善之 先生が担当する1年3組の理科「大地の成り立ちと変化」の授業を参観させていただきました。仲井間先生の授業では、毎回の授業で学んだことをPadletにアップロードすることで、生徒一人ずつの学びの記録がポートフォリオとして見られるようになっています。授業の最初にPadletを使って前回の授業のふりかえりをしました。

 仲井間先生はGoogleドキュメントにスケジュールなど授業で使うプリントをアップロードしていて、すべてが生徒と共有されています。
 最初の5分間でこの日の授業の内容について仲井間先生が生徒たちと共有して、その後の30分間で生徒たちは各自で実験・観察・調査を行います。どこでどんなふうに学ぶべきかは生徒一人ひとりで違うので、それぞれが自分に必要なことを必要な場所で進めていきます。
 「授業の最後にクラス全体で共有をするので15分残して、ここに帰ってきてください」と仲井間先生が言うと生徒たちはそれぞれに学びを始めていきます。

 教室には、生徒たちが自分で考えて実験をしたり観察をしたりできるように、さまざまな学習教材が用意されていました。
 教室の後ろには参考書籍やいろいろな火成岩の標本が並んでいる机がありました。実物を見たり、手にとって見たりしながら考察をすることができます。この机に来て、「これ、全部火成岩ですか?触っていいですか?」と生徒が質問すると、仲井間先生は「もちろん」と答えます。こうしたやりとりから、さらに生徒たちが学びを深めることに繋がるやりとりが進んでいくこともあります。

 実験用具ができる机も用意されていました。クラス全員で一緒に実験をするのではなく、自分たちで実験の必要があると思ったことを自分たちで好きなときに実験できるようになっています。また、何度も繰り返して実験をすることもできます。

 双眼実体顕微鏡が用意されている机もありました。自分で「これを調べたい」と思ったタイミングでできるのがいい。

 接眼レンズにiPadをくっつけて標本を撮影している生徒もいました。撮影した画像をGoogleスライドに貼りつけて、考察を入力していきます。

 生徒たちが取り組んでいる課題の最終的なアウトプットは、「火山災害が発生した1週間後のドキュメンタリーニュース」または「地震災害が発生した1週間後のドキュメンタリーニュース」を制作することです。
 グループで協力しながら、Goodnotes、Googleドキュメント、Googleスライドなど、それぞれ自分に合った方法で学んだことをまとめていきます。

 授業のクラスルームでは、評価シートも共有されているので、生徒たちは、評価シートを見ながらプロジェクトに取り組んでいます。評価シートが共有されていることで、生徒たちはどんなふうに学ぶことが期待されているのかを知ることができます。

 授業が終わる15分前に、生徒たちはみんな自分の席に戻って、今回の授業で学んだことを隣の人と発表し合います。仲井間先生が評価シートを配布して、発表3分+評価シート記入1分で行っていました。iPadで調べた内容を指し示しながら発表をしていきます。
 生徒たちはそれぞれに自分の言葉で語っていて、自然と身振り手振りも出てきて、熱意がこもった発表になっていました。それぞれに自分のペースで自分の視点で調べたり観察したり実験をした後だからこそ、熱意がこもった発表になるのだと思います。こうして全員が自分の言葉で話す機会があるということが大事だと思います。

 発表し合う時間が終わったら、Padletに今日調べた内容をアップロードします。こうしてこの日に学んだことがPadletに加わって、次の学びへと繋がっていきます。Padletは、先生が進捗を確認するために用いるだけでなく、生徒同士でもクラスメイトの学びがいまどんな状況なのかを参考にすることもできます。

(為田)

鎌倉市立岩瀬中学校 授業レポート No.2(2024年1月26日)

 2024年1月26日に鎌倉市立岩瀬中学校を訪問し、安宅修 先生が担当する1年4組の社会の授業を参観させていただきました。
 安宅先生はGoogleクラスルームで授業プリントのPDFデータを配信していますが、紙のプリントも全員に配布しています。そのため、生徒たちは紙とPDFのどちらでも授業プリントを使うことができます。紙のプリントを使って勉強している生徒は、プリントをノートに貼ってまとめてありますし、PDFデータを使っている生徒はiPadのなかにデータがあります。どちらの方法にしても、これまでのプリントが同じ場所にあっていつでも参照できるようになっています。
 iPadのGoodnotesでプリントを見ていたある生徒は、プリントの余白の部分に教科書や資料集などから関連するページを撮影して貼っていました。こうして自分の学び方に合うように情報を整理することはデジタルの方が楽にできると感じました。

 安宅先生は最初に前の時間の内容をふりかえった後、この日の授業「4. なぜ昔のことがわかるのか」で使うプリントを配布します。

 資料集を開いて安宅先生の説明を聴きながら、iPadではキーワードである「打製石器」や「火焔土器」をiPadで検索している生徒たちもいました。こうした生徒たちは、紙の資料集とインターネット検索はアナログとデジタルの敷居をまたいで繋がっているかのように学んでいるのだと感じました。

 この後で、みんなで「火焔土器土偶を使って祈りを捧げる理由は何か?」という問いについて考えます。安宅先生は共有スプレッドシートを用意してあり、ここにクラス全員でアクセスして、自分の名前の横に考えた理由を書き込んでいきました。

 みんなが書き込んだ共有スプレッドシートをモニターに映しながら、安宅先生はコメントを入れていきます。「豊作を祈って」と書いていたのを紹介して、「豊作と書いてあるけど、それは“農業をしていた”ということになると思う?」というふうに問いを重ねていました。
 挙手をして発表されて生徒の意見を先生が板書にまとめていく形式ではなく、スプレッドシートに生徒たちが書いた文章をそのままみんなで読みながら、安宅先生はそこから導けるさらなる問いに繋げて解説をしていました。

 共有スプレッドシートで同時に意見を書き込んでいくので、どんなことを書いていいのかわからない生徒たちは、クラスメイトが書いた文章を見て参考にして書き始めることもできます。
 また、共有スプレッドシートにデータが残っているので、次回以降の授業で見ることもできます。また、生徒同士でお互いに書いたことを読み合って、ディスカッションをすることもできます。

 No.3に続きます。
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(為田)

鎌倉市立岩瀬中学校 授業レポート No.1(2024年1月26日)

 2024年1月26日に鎌倉市立岩瀬中学校を訪問し、上原優士 先生が担当する1年1組の数学「立体の体積」の授業を参観させていただきました。上原先生は、Googleクラスルームでプリントを配布していて、生徒たちは自分のiPadでプリントを開き、先生はモニターに表示したプリントの電子黒板機能を使って授業を進めていきます。

 岩瀬中学校では一人1台のiPadで学校向けのGoodnotesを利用できるようになっています。生徒たちはGoodnotesでプリントを開いて、ペンや指を使って書き込みながら授業を受けていました。必ずGoodnotesを使わなければいけないわけではなく、自分の勉強しやすい方法でアプリなどを選べるようになっているそうで、Pagesを使っている生徒もいました。この日の数学の授業では、プリントに書き込んでいる生徒はいませんでした。

 授業の最初の5分間で先生と一緒に角柱と円柱の体積の求め方を復習してから、練習問題を3問解きます。練習問題が解けたら、クラス内で確認や相談をする時間をとりました。生徒たちは自分のiPadをもって移動して、教室内で解答の確認をしたり相談をしたりしていました。生徒同士で学び合う時間をとった後で、モニターの電子黒板機能を使って上原先生が解答の確認をしていきます。

 次に上原先生は円すいの体積の求め方を紹介するために、デジタル教科書に付属しているデジタルの動画教材をモニターで再生し、みんなで見ていました。円柱の透明な容器と円すいの透明な容器が並んでいて、円すいの容器に入れた色水3杯でちょうど円柱いっぱいになることを実験する動画です。
 この動画を見ることで、円柱の体積(容積)が円すいの体積(容積)の1/3であることを実感することができます。実感を得るために実験をするには準備が大変なので、こうした動画教材を活用するのはいいと思いました。

 この後、円すいの体積を求める解き方を上原先生が解説した後で、練習問題に取り組みます。話し合いながら解いてもいいので、生徒たちはみんな思い思いの場所で、自分に合った方法で問題に取り組んでいました。

 もちろん、誰とも話し合わずに1人で問題に取り組むことも認められています。1人でじっくりと問題に取り組んで、それからクラスメイトと話に行くという生徒も多かったように思います。
 自分なりに、どういう学び方が自分に合っているのかを考えて、身につけていくために、こうした取り組みはいいと思います。

 授業の最後に上原先生が問題を解説したモニターの画面をiPadで撮影している生徒がいました。こうした記録の残し方も、各自が自分のiPadをどう使うかを工夫する中で体得していくといいと思います。

 No.2に続きます。
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(為田)

戸田市立新曽小学校 授業レポート No.2(2024年1月22日)

 2024年1月22日に戸田市立新曽小学校を訪問し、三宅真由 先生が担当する4年4組の国語の授業を参観させていただきました。
 最初に三宅先生は野球のユニフォームを着た子のイラストを見せて、「なんか、チグハグじゃない?」と質問します。子どもたちが「つながりがおかしい!」と答えると、三宅先生は「このイラストの服はつながりがおかしいよね。言葉も同じで、つながりに気をつけようね」と話して、この日のテーマである「言葉や文のつながりに気をつけて、分かりやすい文や文章を書くこつを身につけよう」へと導入していきました。

 三宅先生はロイロノート・スクールのカードをプロジェクタで映し出して、「ぼくの目標は、外交官になって世界各国をめぐります。」という文章を子どもたちと一緒に読みます。
 三宅先生は「何か変じゃない?」と子どもたちに質問して、主語と述語のつながりが変だな、ということに気づいてもらいます。三宅先生が「では、わかりやすい文に直しましょう。みんなだったら、何て言う?」と質問すると、子どもたちはロイロノート・スクールで自分のカードにわかりやすい文を入力していきました。

 もうひとつ、読点をどこに打つかで2つの意味が作れる「女の子は必死で走る弟を追いかけた。」という文をみんなで読んでみます。ロイロノート・スクールのカードの左端に、「女の子は」「必死で」「走る」「弟を」「追いかけた。」「、」の6個のカードが2セット用意してあって、子どもたちはこのカードをドラッグして2つの違う意味の文を作っていきます。
 こうしてカードをドラッグして文を組み立てる練習をすることで、書く時間をとらなくていいので、文を組み立てることに時間を多く使うことができますし、紙で文字で書くのに比べて、何度も順番を変えることが簡単にできます。

 主語と述語のつながりと、読点の打ち方でわかりやすい文を作る方法をみんなで練習したので、ロイロノート・スクールで配布した応用問題を一人ひとりで解いていきます。

 応用問題のカードには、「おわったら、ミライシードかだい」というふうに、次にやることが書いてあったので、応用問題が終わった子はミライシードを開いてドリルパークで課題に取り組んでいました。次にやることが明確になっていることで、早く終わった子は次の課題に取り掛かれるし、ゆっくり問題に取り組んでいる子も急かされずに自分のペースで取り組むことができていました。

 最後に応用問題をみんなで答え合わせをして、ふりかえりを入力しました。一人ひとりが自分のペースで学ぶことができるように、一人1台のChromebookを使っている授業でした。

(為田)