12月4日に参加した、私塾界プレミアムセミナーのパネルディスカッション「教育再生で実現させる日本の未来」についてレポートしたいと思います。当日、Twitterで報告もしていたので、そちらをベースにして、コメントなどを入れながらという形にしたいと思います。
公教育と学習塾
パネルディスカッションのメンバーは、株式会社ナガセ 永瀬昭幸社長、成基コミュニティ 佐々木喜一代表、京都大学 山極壽一総長、開成中学・高等学校 柳沢幸雄校長、灘中学・高等学校 和田孫博校長、大島九州男 参議院議員。モデレーターは、森上教育研究所の森上展安 代表です。なんと豪華なメンバー。パネルディスカッションは、成基コミュニティの佐々木代表のスピーチからスタートしました。
佐々木代表:公教育は平等、公平を考え無くてはならないから、大きく舵は切れない。だからこそ、塾の持つ役割があるのではないか。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
学校と学習塾は対立概念ではなく、学校でできない部分を学習塾が補完している、と僕は感じています。第一部の鼎談でも話が出たように、単純に学校の先生と学習塾の先生を比較するのは違うと思っています。公教育には社会全体への教育という目的があり、そのために必要なルールがあります。それがために、動きが遅くなってしまう(というか、準備に時間がかかる)部分がある、というのは理解できます。
先に学習塾をはじめとする民間教育分野で、どんどん実験をすればいいと思います。英語のプログラムにして、プログラミングにしても、とびっきりハイエンドな探究学習にしても。そうしたさまざまなものから、「これは広く展開しなければならない」という必要性が見えたものに、予算をつけて、公教育に展開していくべきだと僕は考えています。
大学受験の話
続いて、京都大学山極総長。
山極総長:いまの大学生は、知識を得るために大学に来ているわけではない。大学に来るのは、社会の先端に立っている研究者と接することが目的。他人のことを真似ていてはだめ、自分で考えることが大事。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
山極総長:自分で新しいことを考え、それを発表できるようにする。それが4年間でいいのか、というのをいま考えている。飛び級なども含めて、どのような形がいいのかを考えている。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
大学の役割は、MOOCが出てきたこともあり、大きく変わっていくと思われます。大学に行く意味、というのを京大の総長が語るのにとても意味があると感じました。
続いて、ナガセの永瀬社長。すでに日本の大学を飛び越えて、海外へという話でした。
永瀬社長:有名大学の入学者の多くは、東進ハイスクール出身。だが、それだけでいいのか?世界には、ハーバードなどたくさんの大学がある。ナガセに何ができるかを考え、無料テストをする。優秀な生徒たちに決勝大会に来てもらう。アメリカ留学支援などもする。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
自己肯定感と中等教育の大切さ
続いて、開成の柳沢校長。自己肯定感の話、それがなぜ中等教育(中学校・高校)であるべきか、というのを非常にわかりやすく説明してくださいました。
柳沢校長:グローバル人材を育てるために、中等教育は何をすべきか?必要だ、ということは論をまたない。世界に出て行ったときに、相手となる、今の世界の中高生はどんなふうに考えているのか。敵を知らなければ、なかなか理解することはできない。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:子ども若者白書の中で、「日本の若者は、自己肯定感が非常に低い」。日本人に比べ、自分に自信を持っている、強い自己肯定感を持っている若者と対峙しなければならない。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:なぜ自己肯定感が低いのか、を考えなければならない。自分は社会の中で、果たすべき役割がある、というのが自己肯定感の根底になる。これは、集団の中で、「自分は頼りにされている」と感じなくてはならない。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:なぜ自己肯定感が低いのか、を考えなければならない。自分は社会の中で、果たすべき役割がある、というのが自己肯定感の根底になる。これは、集団の中で、「自分は頼りにされている」と感じなくてはならない。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:いま、グーグルなどで知識を簡単に検索することができる。我々は、学校という場所に集めて知識を与えていて、親も学校に行かせている。とすると、学校はただ知識を与える場ではなく、集団の中で関係を作らせる役割を持っている。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:個別的関係と集団的関係。生徒同士の関係が学校にはある。その関係のなかで、自己の役割を作っていく。そして、自己肯定感を作っていく。学校での自治的な集団的関係での行動=課外活動を楽しんでいればよい。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:大人側が、そうしたミニ社会を楽しめるように陰に陽に働きかけ、自治的な集団であると思わせる必要がある。そのために、環境を作る。自己肯定感を育む発達段階は、中等教育の段階だと思う。そのために、中高が連結して存在することが大切だ。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:小学校と中学校の連結で、自治的な関係はできないのでは? #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
灘の和田校長も、同様に中等教育の重要性を説明されました。また、変わっていく大学入試に対するコメントも入れておられました。
和田校長:柳沢校長がおっしゃったように、中等教育が大切。戦後政策のために、中等教育は分断された。中高一貫の教育を建て直すのが、教育再生へのいちばんの近道。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
和田校長:大学入試に関しても、まだどんな形になるかがわからない。学力試験をやめる、というのはいいが、どんな共通テストにするのか?選抜性の高い大学への入試用に難問も出しますが、もっと普通の知識を問う問題も出したい、と言っている。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
グローバル人材を育てるために
一通りパネラーのスピーチが終わったところで、グローバル人材についてのディスカッションとなりました。キーフレーズを取り上げたいと思います。
山極総長:・日本社会はやり直しがきかない社会になっている。学生が自由に選択できるようにしましょうよ、という議論が出ている。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
山極総長:グローバル人材、というのは、単に国際的な感覚を持つ、というのではない。日本人のアイデンティティを持った学生を育てたい。京都大学は、世界に冠たる大学になろうとしている。留学生も多い。日本を愛する世界の学生を育てたい。それに責任を持つ。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
柳沢校長:・開成では、5名の授業料を、OBの協力(寄付)によって、出していきたいと思う。
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
・経済格差があるという前提のもとで、どうサポートするか、を考えるべき。 http://t.co/Y3A2BwN5n5 #私塾界プレミアムセミナー
ここで触れられた、「開成会 道灌山奨学金」、すばらしいと思いました。学びたいけど学べない、現状から脱することができない、そうした人たちに対してどんなことができるか。ひとつの解決策だと思います。
教育のグランドデザインを
また留学に送り出した後の若者を、日本にどのように迎えるのかという議論も行われました。
和田校長:留学から帰ってきた学生を迎え入れる体制がない。日本の大学でずっと勉強してきたオーバードクターを優先して、留学先から変えてきた若者にポストがない。こんなの、留学しようと思えない。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
たしかに、灘の卒業生には、飛び出している子、多そうです。ディスカッションの最初に言っていた、飛び級経験者にニートや自営業が多い、というのにつながります。
ハーバードに行った留学生が、そのあとどんな人生を歩んでいるかが大事。日本の将来のリーダーを育てることに意識が行っている。ハーバード行って、4年間の寮生活を送れば、一生の友達になるし、それは国家の人間関係になるし、宝であると思う。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
まったくその通りだと思います。教育は、20年後、30年後にどんな国にしたいかというグランドデザインがあって、そのために「どんな人材を育てるか」を考えて、カリキュラムに落とし込んでいくもの。アメリカのように、世界中の優秀な人材が集まる大学を作り、その後も続くネットワークを持たせて母国に帰ってもらう、というのもひとつの戦略です。シンガポールも、どこかの大学の研究室をそのまま国立大学に迎えたりもしています。
こうしたグランドデザインは、学習塾/私塾は打ち出しやすいですし、私学も建学の理念がありますから打ち出しやすい。でも、公教育では打ち出せないか、というとそんなことはないと思うのです。「どんな人材を育てたいのか」は、国レベルだけでなく、都道府県レベル、市町村のレベルでも、考えて初等教育、中等教育をどのように整備するのかという指針にするべきだと考えています。
第一部の鼎談で、高濱代表がおっしゃられていたように、それぞれの地域に、地域の学習塾が入って行って、地域の教育力を高める、ということが実現されればと思います。
高濱代表:「子どもたちを伸ばしたい」という一点に集中してできるところは協力しよう、ということ。数年後、当然それぞれの地域の学習塾が、それぞれの地域の学校に入り込んでいくと思う。文科省のコメントがそれを後押ししている。 #私塾界プレミアムセミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2014年12月4日
学習塾と教育委員会(公立学校)、私立学校とそれぞれのキープレイヤーの先生方とお話をさせていただくなかで、こうしたコラボレーションを仲立ちできるように、ICTも含めて、お手伝いしていければいい、と感じました。
(研究員・為田)