11月13日(金)に、STEM STUDY NIGHT #2@さくらWORKSに参加してきました。STEM STUDY NIGHTは、FabLearn Asia 2015の関連イベントです。
学校の先生、クリエイター、プログラマが集まり、「ものづくり」「STEM教育」「これからの教育」「デザイン思考」などをテーマにプレゼンテーションとディスカッションを聴いてきましたので、メモを公開したいと思います。
プレゼンテーション4人めは、Mozilla Japan研究員の赤塚大典さんです。プレゼンテーマは、「Fabble : オープンソースソフトェアの考えを導入したオープンソースハードウェアドキュメント共有サービスのご紹介」でした。
FabNavi
赤塚さんは最初に、これまでに関わってこられた、「ものづくり」についてのサイトを紹介してくれました。「ものづくり」の領域とこれまであまり関連がなかったので、どのサイトも僕にとってとても新鮮でした。
FabNaviは、ものの組み立てを支援するシステムです。ものの組み立て過程を写真やビデオで撮りためていって、それをトレースできるようにしています。モノのデータを共有するだけでなく、ものづくりのノウハウを共有する、というのは、学校で教えるときにも非常に大事ではないかな、と思いました。
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monoist.atmarkit.co.jp
MozOpenHard
続いては、ローレベルなハードウェアをJavaScriptでコントロールできます、という「MozOpenHard」プロジェクトです。Web開発者が、ページだけでなくてデバイスも作れるようにしましょう、というプロジェクトで、JavaScriptでLEDやサーボをはじめとした各種デバイスをコントロールできます。
どんなスクリプトを書いたら、どんなふうにLEDが動くのかが、並んで見られるのは非常にいいと思います。こうしたサイトを見れば見るほど、プログラミングに関係する「ものづくり」については、どんどん「知りたければ自分で学びなさい」というのが言える世界になっているのだなあ、と思います。
コモジラ研究所
学生主体で、学生のためにワークショップを展開していく。教え手、受け手というのではなく、対等な立場でプロジェクトをすすめていく取り組みです。2015年のワークショップコレクションにおいて、紙粘土に手書きのプロジェクションでぬりえをするワークショップで最優秀賞をもらっています。
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www.sensors.jp
Fabble
赤塚さんが研究員として所属位しているMozillaのミッションは2つだそうです。
- We're building a better internet
- Our mission is to promote openness, innovation & opportunity on the web
今回のプレゼンテーションで紹介してもらったFabbleも、このミッションにもとづいているとのことです。インターネットの普及とともに、いろいろなものがオープンになり、我々ユーザーはオープンの恩恵を受けてきています。例えば、UnixやWebブラウザなどがそうです。オープンソースソフトウェアを改変して、多様化していく、というプロセスを辿ってきました。
そして、そうしたオープンソースがうまくいった理由は、「誰もが自由にアクセス・使用」、「複製・改変・派生」、「再配布」、「さまざまな貢献」、「開発過程可視」などのキーワードが関連してくるそうです。
赤塚さんは、「Fabbleがサポートするのは、ものづくりの2つの時間軸」だと言います。2つの時間軸とは、「制作過程」と「開発過程」です。この2つの時間軸をそれぞれ「レシピ」と「メモ」として残しておき、誰でもがそれを見ることができ、オープンなもの作りを促進するプラットフォームがFabbleです。
レシピとメモの内容は、以下のようなものだそうです。
実際にFabbleにアクセスしてみて、スケートボードの作り方のレシピを見てみました。
順を追って作り方が写真とともに書かれています。レシピがわかりにくかったら、コメントを書くことができます。
Fabbleに掲載されている、FabWalkerも紹介してもらいましたが、これもおもしろそうでした。ロボットがあって、そのロボットの足の機構を付け替えられる、というものです。
このFabWalkerにもレシピがあり、コメントなどもつけられています。こうしてどんどん「ものづくり」をしていくときの手がかり足がかりが残されていき、蓄積され、共有されていくのだな、と思いました。
また、レシピが途中で改良されると、元のものと新しいものと2種類が残され、そこで多様性が生まれます(ブラウザやUNIXの多様化と同じように)。そのときに、「フォークする」という言い方をされていました。
フォーク (ソフトウェア開発)
ソフトウェア開発におけるフォークとは、あるソフトウェアパッケージのソースコードから分岐して、別の独立したソフトウェアを開発することである。
フリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアでは、ライセンス上、原作者の許可なしにフォークが可能である。
フォーク (ソフトウェア開発) - Wikipedia
ソフトウェア開発の用語として、「フォークする」というらしいのですが、この考え方がおもしろいと思いました。例えば、Fabbleのレシピでフォークが行われるように、プログラミングの授業でもフォークが行われてもいいと思います。また、学校で「運動会の演技指導」であるとか、「総合学習の時間での、プレゼンテーションの指導方法」であるとか、そうしたものが職員室の中でどんどんフォークされていって、多様性とともに「どこの点で、どちらのほうが優れているだろうか」という比較検討ができるようになればいいな、と思いました。こうしたノウハウは、紙で残されていてもほとんど読み返すことはしないし(だいたいどこかへ行ってしまいますから…)、デジタルで残していく、というのを考え方として教えられれば、問題解決力を育むために、非常にいいツールとなるのではないだろうかと思いました。
Fabbleに蓄積していく、レシピやツールの元になる考え方は、学校でも役に立ちそうなものがたくさんあるのではないかと、非常にワクワクしました。先生方も、ぜひFabbleにアクセスしてみて、「同じようなコンセプトを授業の中に取り入れることはできないだろうか?」と、考えてみるといいのではないかな、と思いました。
(為田)