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書籍ご紹介:『学習情報研究』「教科学習におけるデジタル教科書」と「タブレット端末」(2018年1月号)

 「学習情報研究」(2018年1月号)がオフィスに届きました。お世話になっている方々がたくさん寄稿しています。楽しみながら読みました。

学習情報研究 2018年 01月号 [雑誌]

学習情報研究 2018年 01月号 [雑誌]

  • 公益財団法人学習ソフトウェア情報研究センター
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 特集は「教科学習におけるデジタル教科書」と「タブレット端末」です。非常に勉強になりました。気になった点、これから深めていきたい点についてメモしておきました。

「教科学習におけるデジタル教科書」

  • 加藤直樹先生(東京学芸大学
    • すべての授業でタブレット端末を利用する必要はない。児童生徒にどのように使わせるかを熟慮して授業設計をする必要もない。
    • 児童生徒が自分の学びのスタイルに合わせて必要なときに使えるようにすべき。
    • タブレット端末を使うときの効果は、そのほとんどがタブレット端末を「使いたいときにいつでも使えること」が前提。一人1台が必要。
  • 二宮皓先生(広島大学
    • 「主として欧州ではどこの国が教室のデジタル化が最も進んでいますか。」→「デンマーク」。デンマークは製作的にデジタル化を強力に推し進めてきた。
    • OECDの報告書『生徒・コンピュータそして学習』(2015年)では、デンマークの学校はデジタル最先端校であり、学校でのコンピュータ使用割合も90%弱と非常に高いと評価。だが、PISA学力とデジタル化については明確な関係が見られないとも報告。
  • 稲垣忠先生(東北学院大学
    • 算数・数学科とデジタル教材の特徴は、「動画 アニメーション」「シミュレーション」「ドリル」「自動化」「系統性」。
    • ガニェの9教授事象と教師のデジタル教材活用を対応させると、「導入」「展開」のところで多く使われることが想定される。一方、児童・生徒のデジタル教材活用と対応させると「展開」「まとめ」のところで多く使われることが想定される。
  • 清遠和弘氏(東京書籍株式会社)
    • デジタル教科書開発者の視点から、教科書がデジタルという表現手段を得たときにどんな可能性が広がるか?
      • 動的な表現がもたらすメリット。動的な表現を加えることで、教科書の意図やねらいをより正確に表現できる。
      • 自由に操作できることのメリット。学習者が自分の意思で自由に操作して試行錯誤(シミュレーション)できるコンテンツが収録されている。
      • 学級の実態に応じた個別化ができるメリット。全国統一のコンテンツだけでなく、学校の周辺高校雨写真や学校で用意する写真やデータなどを使って、個別に編集が可能になる。「教科書」という「一般」を「学級」という「個別」に置き換えることが可能になる。
    • デジタル教科書の最大の特徴は、「教科書である」ということ。かつて1色刷りだった教科書は、多色刷りになって表現の幅を飛躍的に拡げた。デジタルという新しい表現の手段を得た今日、教科書として何をどのように表現すべきか。教材研究の視点でデジタル教科書のあり方を問い直す必要あり。

タブレット端末」

  • 楠本誠先生(松阪市教育委員会
    • タブレットを活用するために考えたいポイント
      • タブレットで学びをつなげる3つの視点。「時間をつなげる」「場所をつなげる」「人をつなげる」
      • 理科とタブレットの親和性。カメラの活用により、色、音、瞬間を記録できる。視覚化アプリ(天体、オシロスコープ等のアプリ)の利用。
      • 生徒が学習効果を感じる6つの活用法。「撮る」「書く」「見る」「見せる」「送受信する」「拡大する」
  • 永野直先生(千葉県立袖ヶ浦高等学校
    • 異なる教室間、学校・家庭間での活用。タブレット端末を生徒各自がもつことで、普通教室でスライド作成やプレゼンテーションなどを、さまざまな教科内でいつでも行うことができる。
    • 体育や部活動等での活用。学校内での利用や機能に特に制限はしていない(有害情報のフィルタリングはしている)。部活動ページへの書き込みも、生徒自身が活動場所からiPadで行っている(公開前に職員の承認が必要)。
    • 校外や学校行事での活用。行事の様子を写真や動画に収め、クラス内で共有している。
    • 目的外の利用については、心配。だが、端末に機能制限をしても問題は解決しない。生徒自身が情報モラル・情報リテラシーを身につけて、主体的に行動しなければ、問題は解決しない。

まとめ

 デジタル教科書についても、タブレット端末についても、多くの先進事例や研究などからの知見がたくさん紹介されています。興味ある方は、ご一読を。
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学習情報研究 2018年 01月号 [雑誌]

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(為田)