井庭崇『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』をじっくり読んで、Twitterのハッシュタグ「 #クリエイティブ・ラーニング 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。
今回は、「第3章 認知科学から見た学びと創造性 今井むつみ × 井庭崇」のところからメモをまとめます。今井先生の授業は、SFCで履修して、考えたこともなかったことを知ることができて、衝撃的だったのを覚えています。授業後に質問に行ったら、研究室に呼んでもらって、「こういうのも読んだらいいよ」とたくさん教えていただきました(先生は絶対覚えていないけど、こちらは覚えています。本当にありがたかった)。今でも、著書の何冊かは手にとって何度も読み直したりしています。
今井先生:「これから大事なのは知識じゃない」はまちがい。「知識」と「事実」は違う。「「大事なのは事実を覚えることではないよね」という意味で「知識」という言葉を使っているのですが、認知科学の観点からいうと、それは間違っています」(p.423) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
今井先生:「私たちはすでに持っている知識をフィルターとして、あるものを見て、経験して、記憶して、それを抽象化してまた知識にします。その「知識」は、まったく「事実」ではない。(略)「断片的な事実としての知識」ではない「知識」が、これからは大事」(p.425) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
今井先生:「たとえば「青」という言葉は、紫と青がどう違うのか、青と緑がどう違うのかがわからないと、本来的な青の意味はわかりません。でも、そうすると、最初からすべての色の言葉を知っていないと、「青」の意味がわからないことになる」(p.436)←最高に面白い! #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
このあたりの今井先生の言葉は、本当に重要だと思っています。断片的に意味もわからず覚えている知識は意味がない。ただ、持っている知識は、次の知識を得るのに使われるのです。
学校教育によって与えられる体系的な知識は、こうして知識を増やし続けていく人の土台になるのだと思っています。
井庭先生:「外から何かを取り入れて自分の知識体系ができているのではなく、一つの全体のネットワークとして構成されていく。そのときに、部分がぺたぺたくっつくのではなく、その度ごとに全体が作り変えられている」(p.437) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
井庭先生:「単に外からある情報が頭のなかに入ってきて、知識が一つ増えた、ではなく、「こういうことか」と認識が変わることが日々起きていて、それこそが学びであるということですね」(p.437) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
知識を一つ一つ増やして、たくさんもって(=覚えて)いることが大事なのではなく、知識が増えるごとに全体がつくり変えられるというのは、とてもおもしろいと思います。
言葉を覚える過程は、学習をデザインするのに、とても良いお手本になるのではないかなと思った。この感じは、教科学習にも、プログラミングにも、同じことが言えそうな感じがします。こういう、知識を増やす→全体を再構成する、というふうな流れを組み込んだ授業って、どんな単元とかがやりやすいのだろうか、と考えてみたい。言語や数学など、道具として使う教科には向いているような感じがします。一方で、歴史などの教科学習で、ここまで組み入れるとどういう授業になるのだろう、と考えるのもおもしろそうです。
井庭先生:「この本(『マインドストーム』)のなかで、僕が一番重要だと思うのは、「デバック」の思想についての箇所です。今の学校教育は、いきなり正しいことを答えることがすべてで、それで点数がつくし、評価が決まります」(p.455) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
井庭先生:「でもそうではなくて、自分の間違いを見つけて、上手くいかなかったところを自分で直せるかどうかが重要と、パパートは言いました。日常生活もそうでしょう。やってみてだめだったら直して、最終的に上手くいくように何とかするという能力が重要」(p.455) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
井庭先生:「「つくり直す」という経験をどれだけ学校でできるかが重要だと思います。やっぱり社会に出てからいきなり現場で初めて経験するのでは遅いでしょう。だから、つくり直す力を伸ばし、いかに粘ってつくり直していけるかがこれからの学びの場では大切」(p.456) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
今井先生:「自分で、何でもいいから探索してみて、それでだめなら修正すればいい。修正の過程が大事だというメンタリティも、どのように修正すべきかというスキルも両方が大事です。それからレジリエンス―だめだったときにどうするか―という態度も重要です」(p.457) #クリエイティブ・ラーニング
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) April 10, 2019
この今井先生の言葉は、本当にそのとおりだと思う。これを学ぶためにプログラミングって、本当にいい教材だと思う。もちろん、普通の教科でもできると思うけど、「やってみる」→「できなかった」→「直してみた」→「できた!」というサイクルを、材料とかの心配もなく、あまり時間もかからず、すぐに結果が見える形で返ってくるのは、プログラミングの強みだと思います。プログラミング的思考をアンプラグドでやっても、この「つくり直し」「デバック」によって得られるような効果は見えてこないように思いました。
井庭先生と今井先生の対話、知識の役割やデバッグの思想など、とても学び多いものでした。
No.7に続きます。
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(為田)